干しブドウカレー
2017.12.13
「ちょっと変わったカレーですが、召し上がっていってください。我が家の昔からのレシピなんです。」
と、Fさんが作ってくださったのは干しブドウカレー。スパイスの後から甘みが出てきてとても美味しく、「良かったら」ということでたっぷりおかわりさせていただいたのでした。
「家全体の間取りをかんがえたりするときには、これからの家族の形や暮らし方といった先の事に目がいっていましたが、なぜかキッチンのことを考え始めると、子どものときの思い出が広がって、後ろにおいてきた時間が戻ってくる感じになっています。
そんなことで、あれこれ揺れてしまって少し不安になっていましたが、「いろいろな思いでいろいろ形を迷いながら最後に一つの形に辿り着きます」というお言葉に、その揺れている時間自体を大事に思えました。有難うございます。」
そうですね、その時間は本当に大切です。
人が前に進むには、大きな目標に向かい続ける力も必要ですが、今までいろんな人や場所や時間に頂いた大切にしておいた気持ちに後押ししてもらって前に進める力にすることも大事です。
でも、私が今でもよく覚えている台所の思い出は、いつまでも甘ったれて「シャツのボタンを閉めて。」と母に呟いたら、「もう一人でできるでしょ。」と、夕飯の支度をしている母が大きな声で怒りながら、野菜を洗っていた手の水をピシャっと顔にかけられたことかな。あぁ、いつまでも甘ったれじゃいけないんだって、その時思ったのでした。
それから、両親が不在の時に友達と二人で、千歳飴食べようとして包丁で切ろうとしたら、手が滑って指をざっくり切っちゃって、血が止まらないよう、と焦ったことかな。
それから、昔は台所に湯沸かし器があって、お湯のレバーをひねるとボゥっと大きな音がして、湯沸かし器の中に青い灯がともるのを、じぃっと見ていたこととか。
子供の時の記憶は、やっぱり今でも鮮明でそれが今も時間を形作っているっていうのが良く分かります。
上の思い出が今の私に生かされているのかどうか、良く分かりませんが・・。(笑)
「せっかくオーダーするのに隠れたところにキッチンを作るのは、と設計段階では迷いもあったのですが、母の台所も祖母の台所も独立型でしたので、ちょっと離れているところにこもっている母や祖母の気配、包丁の音、ゆっくりとどくお料理の匂い、そういう気配がよかったな、と、そういう感じを娘たちにも伝えらえるといいな、と。仕上がってみて、基地みたいな感じがして、とても気に入っています。
堂々とリビングの真ん中にあるキッチンも素敵ですが、ちょっとひっそりしているキッチンも、お台所、という感じ、特に、イマイさんの作品だからこそ、この雰囲気がでるんだと嬉しいです。
イマイさんのパンフレットを手にした日から、ずっと憧れていたキッチンが目の前にあることが、なんとなく最初、現実味がなくて、夢心地だったので、たぶん、イマイさんにも、作ってくださったコバヤシさんにもちゃんと言葉で表現できていなかったですが、いまはこんなふうにうれしさがこみあげています。」
Fさんとのキッチンのやり取りはこんなふうに楽しかったのでした。なんとなく空気が似ているというか。
今日あらためてお招き頂きまして、写真を撮らせていただき、お昼ご飯までごちそうしていただきました。
目を少し悪くされているFさん、棚下照明がちょうどまぶしい位置になってしまったということで、面白いものを作らせていただくご相談も。
これがまた楽しそうなのです。
来年になってしまいますが、楽しみにしてお待ちくださいね。
今日はありがとうございました。