よく食べてよくたべる

「ナラ柾目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」

茅ヶ崎 F様

design:MA設計室 福原正芳さん
planning:MA設計室 福原正芳さん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:福原さん

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

リビングはタモを白く塗装した床が広がる中にごつごつしたプリミティブなものや素材が並ぶ動きのある場所で、このキッチンは青く、白くどこか物静かな空間。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

でも、戸を一枚開けると、そしてお二人がここに立つとたちまち色が入って空気が流れだす。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

福原さんはうるさいくらいに(笑)料理が大好きで、私が訪ねるとこうして恭子さんと二人でキッチンに立つのです。でも食べたあとはすぐ寝ちゃうんですけれどね。

私が4歳年上の福原さんと出会ったのは、インテリアと建築を学ぶために入った夜間専門学校という場所でした。
夜間という性質なのだからでしょう、歳、性別、職業さまざまな人がいて、いろんな刺激をもらったのを覚えております。
デザインって何だろう、家具って、建築って・・。
以前にもどこかでお話したかもしれませんが、入学した時に校長先生がおっしゃっていたことを今でも覚えております。
「私たちは季節を五感で感じて生きている。その移ろいの機微に触れることが大切です。たとえば、ご飯を頂くお茶碗にも夏には夏の柄があって、冬には冬の柄がある・・。」というようなお話をされておりました。
しっかり覚えていなくてすみません。
その当時は、恥ずかしながらそんなことを考えたこともなかったのでした。ご飯なんて食べられる器があればいいんじゃないかって。
そんな学生でしたので、授業は新鮮で、そこに集う人もまた新鮮だったのです。
福原さんは、偶然にも私の自宅の近くの大学に通いながら、夜間はこの学校に通う学生さんで、いつか建築の道に進むんだっていう思いを抱きながらここに通っていたのです。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

キッチンの収納の形はとてもシンプル。以前に暮らしていた中村さんの設計したキッチンが使いやすかったことから、扉がたくさんあって、引き出しが少しあるだけ。吊戸棚を引き戸にしたいっていうのは福原さんのオリジナル。福原さんの家具を作らせてもらって思うのが扉が大きいこと。今回の引き戸も大きなもので、下に車を履かせているけれど、レールはアルミのものを使わないでナラの硬さそのままで受けているシンプルな作り。敷居がすり減っちゃったらまた考えますね。

当の私は、どちらかというと頼りない動機でした。
父の手伝いから始めたこの仕事にだんだんと慣れてきてしまって、このままで良いものかどうかを知りたくて、家具を作るだけではなく、家具を考えて形にする道があるのかもしれないと思ってこの学校に入ったのでした。
端的に言うと、当時のお店の什器作りの仕事に退屈さを感じて、学校という新鮮な場所に逃げたかったのだと思います。
でも、通い学ぶうちにただ形を考えるだけでは成り立たない仕事だとあらためて気づけたのはとても大きなものを得ることができたと思うのです。
そういう力を与えてくれた方々の一人が福原さんでした。
学校に通っている時から、「いつか一緒に仕事ができたらよいよね。」という話はしていて、実際に卒業してから、いくつか福原さんの建築に携わらせてもらったことがありました。
住宅やカフェなど福原さんらしい手の込んだ形で、いつも頭を悩ませながら作らせて頂きました。(笑)
そして、今回はその福原さんのご自宅のキッチンを作らせて頂くことに。
いつか夢見ていたことが、とうとうやってきたのだなあ。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

リビングに入ってすぐ右を向くとキッチンの入り口。そしてリビングの突当りからもアクセスできる回遊性のあるキッチン。それでも、ちょっと籠れるような作りになっていることで温かな印象。写真だと写っていないのですが、冷蔵庫の向かいは洗濯機が隠れています。これも今までの暮らしで馴染んできたレイアウト。

その福原さんは、ご結婚されてしばらくは中野に住んでいたのですが、その住まいが中村好文さんが設計した家だったのですね。
幾度となく訪れては気持ちの良い家だなと思っておりました。
今回福原さんの自邸もやはりその印象に強く惹かれてか、あの中野の住まいの趣を残しながら、福原さんらしさが加わった静かで優しい場所になっていたのでした。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

レンジフード上の幕板も吊戸棚と揃えて、縁まで揃えているのですから、さあ大変。そして、コンロ前でしゃがみ込むのはおませなお嬢さん。もう三人でしっかりキッチンに立つのですから頼もしい。

私たちは今回、キッチンとその背面収納、そして洗面室のカウンターの製作に関わったのですが、やはり食べることが好きな福原さん。
キッチンについては奥様の恭子さんが考えるかと思っていましたら、ほぼ福原さんのイメージで形がまとまりました。
中野の家でも伺うたびに不思議で美味しい料理が、二人の手から飛び出てくる。
私はまるで魔法を見ているように食卓に座って、彼らのマジックにじっと見入って、そして舌鼓を打っていたのです。
中村さんのキッチンはとてもシンプルでオーソドックスなかたちなのに、使う人の手によってどんなにも変化する魅力的なキッチンだって、そう思っていたのです。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

間仕切り代わりになっている食器棚。「パーテーションになる棚っていいんだよね。」と福原さん。「それとね、イマイ君。この引き出しはスライドレールナシね。」と。ふーん、福原さんらしさですね。手掛けは、以前に奥さんの恭子さんの妹さんのところに納品したチェスト(チェスト>のこしてくださったもの)の取っ手を気に入ってくれていて、そのデザインを取り入れてくれることに。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

この背面収納もナラ柾の突板を使っていて、カウンタートップだけはメラミンを使っていて、正面小口はナラで抑えるというスッキリとしたデザインも福原さんらしさ。面も丸すぎるのが嫌いで、と形はシンプルだけれど細かいところが良いところ。(笑)でも、できあがった形はやっぱり美しいのです。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

カウンターはステンレスヘアライン。キッチン自体あまり広く採れなかったので、シンクもコンパクト。「コンロはグリルは無くてよいから。お魚は編みで焼けるし、パンも同じ。」ということで、グリル無し4口のリンナイのガスコンロ。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

間仕切りの食器棚のメラミンカウンターのさらに上にあるナラのカウンター。配膳台ですね。

ナラ柾目ホワイトオイル仕上げのキッチン

木工家の井藤さんのテーブルは、浮造りになってナラ材の表情がよく表れたイキイキとしたテーブル。そこに3人で作った料理が並びます。いただきます。

そして、この新居のキッチンもまた、質素というくらいにシンプルなかたちなのですが、二人がふわりと動くたびに、魔法のように鮮やかな料理がテーブルに舞い降りる。
うーん、見ていて楽しいねえ。
そして、作るだけではなく、しっかり食べる。
最初に福原さんにあった時に思ったのが、すごいよく食べる人だってことでした。
私も大食なのに、同じくらいにもぐもぐ食べる。
あの時から18年経ってもいまだ変わらない安心があるのでした。

キッチン仕上
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 ナラ柾目突板練り付け
本体外側 ナラ柾目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル「ホワイト」

ナラ柾目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

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