山の上の劇場
「ナラ板目材と人工大理石コーリアンのオーダーキッチン」
逗子 M様
design:Mさん
planning:Mさん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai/kouhei kobayashi
painting:haraki tosou
「はじめまして、Mと申します。逗子の実家の2世帯住宅の建て替えにあたり、平屋部分の親世代にL型キッチン、2階建の子世帯の2階にアイランドキッチンを考えています。現在建築士の方と基本的な間取りと仕様を決めて、粗粗の見積もりを工務店に依頼している段階です。木材や塗り壁など、なるべく自然系の素材を中心に計画を進めていることもあり、その中でキッチンの調査をしていたところイマイさんHPに行き当たりました。もしよろしければカタログを送って頂き、可能であればお手隙の際にお話を伺うことができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。」というメールを頂いて、まずはキッチンのカタログをお送りして見て頂くことに。
「早速のご返事ならびに【木のキッチンがある暮らし】の送付までご丁寧にありがとうございました。カタログはこれまでに見た外見重視の物と根本的に違い、我々素人でも分かりやすく、しかもとても美しくまとまっていて素晴らしかったです。嫁さんもパラパラと少しめくってすぐに食いついておりました。(笑)」
ありがとうございます。
そののち、何度かメールのやり取りをさせて頂く中で、その年の暮れのクレミル(毎年12月に開いているこの工房とショールームを使ったイベントです。)に来て下さることになりました。
私たちの工房では、毎年12月に小さなイベントを開いているのです。この町が寒川町倉見だから「クレミル」(名前の理由は毎年12月にまたお知らせしておりますよ。)という名前のイベントで、大きく言うと、この町がもっと楽しい町になったらいいな、ということ。小さく言うと、みんなでその期間中は好きなものを作って楽しみましょう、ということ。
決してもの作りが多い町ではなく、どちらかというと農家さんが多い待ちですが、地場の農産物はいつも賑わっているし、お年寄りは元気だし、最近は若い方も増えてきています。
そして、そういうイベントをきっかけにしてここに1台ずつ家具を作っている工房があるよっていうことももっと知ってもらいたいなあ、とそういう気持ちで毎年開いているイベントなのです。
ここ最近では、イベント中に行なっている木工教室に、今まで知り合ったクラフト作家さんも参加してくださるようになって、すてきな方向に広がりつつあり、これからさらにどんなふうに広がっていくのかが楽しみなのです。
そのイベント期間中に、Mさんご家族がいらして下さいました。
「初めまして。」といらして下さったのは、アウトドアブランドの暖かそうなジャケットを着こんだ温かそうな表情のご主人と、キリっと目力の強いまるでお芝居を見ているような優雅な物腰の奥様。
そしてそのお二人の軽妙なお話しぶり。
うん、うんとそのお話に引き込まれて素敵なキッチンのお話が広がっていくのでした。
今回のご相談は、逗子の山の上にあるご実家を建て直して2世帯住宅にするということで、ご両親が使うキッチンとMさんご家族が使うキッチンを考えていくことになったのです。
イベントの時にお聞きしたご要望をまとめて、ある程度形もまとまってあとは工事が始まる前にもう一度詳しい打ち合わせをしておきたいと思ったところで、「イマイさん、実は・・。」と話が振出しに戻って、施工会社さんを新しくされることになったのだそうです。
建築士さんの設計と試算が甘かったようで、予算をお幅に越えてしまうことになり、建築士さん探しからの再スタートということでした。これは大変です。
ということで、Mさんはきっとその間いろいろなご苦労をされたのだと思われますが、私はのんびりと1年間待たせて頂きまして、「イマイさん、ようやく・・!」とお声が掛かるのを待っていたのでした。
そしてちょうど1年が経過した頃、新しい施工会社さんも決まり、現在の建物の解体も始まろうという頃に打ち合わせを再開したのでした。
新しい間取りは前回のものからそれほど大きな変更はなかったので、前回のプランをもとにあれこれ細かい部分を詰めていったのです。
今回の設計施工される会社さんは鎌倉の楽居さん。
初めて聞くお名前でどんな会社さんなのかな。
Mさんとの打ち合わせがある程度まとまりましたら、今度は楽居さんと細かい納まりや段取りについて打ち合わせしていきます。かなり細かく内容をくみ取ってくださる女性スタッフさんで、これは頼もしいと同時に気が引き締まるのでした。
そして、解体、地鎮祭、上棟が終わり、初夏を迎えました。
現場で打ち合わせができるということで、現場に伺うことに。
私はね、体が大きくてもなかなか気が小さな人間ですので、特に初めて会う人にはドキドキしてしまうのです。
キッチンという仕事をしておりますと、お客様とお話する次回に施工会社さんの大工さんや監督さんとお話させて頂くことになるのですが、なぜか施工会社さんが同じになることが少なくて、毎回初めてお付き合いさせて頂く施工会社さんばかり。今回は楽居さんのことはどのような会社さんなのか事前にウェブサイトを見させて頂いたりして、見知っていたのですが、初めて現場を見た時は、大きな感動を覚えたのでした。
圧倒的な木の存在感。でもその何というか木がうるさくないのですね。みんな普通に成っている。柱は梁を支え、梁は柱に寄り添って、きちんとしている。その姿が美しくて、ここにキッチンを入れさせてもらえるのかあ、と感動したのでした。
「お世話になります。よろしくお願いします。」
と、現場の中にいる人たちにご挨拶。髪型はとてものびやかでしたが物静かで朴訥とした印象だったのが代表の三浦さん。結局最後までいろいろなお話を聞く機会は持てませんでしたが、現場監督で大工さんでもある井上さんがいろいろと私たちの面倒を見てくださいました。
それも今までにないくらい、何というか紳士の対応なのですね。
それがうれしくて、Mさんいいところで家を建てるんだなあ、うらやましいなあ、と思ったのを覚えております。
私たちが施工しやすいように段取りをしてくれて、いよいよ製作開始。
今回作らせて頂くのは、先ほどお伝えしましたようにご両親のキッチンとMさんご家族のキッチン、背面食器棚、それから洗面台でした。
かなりのボリュームなので、壁ができあがってから採寸して製作、となると左官屋さんを待たせてしまう。ですので、あらかじめ井上さんと壁の仕上がり寸法について細かく打ち合わせしておいて、壁ができあがる前から製作を始めることに。
今回は建物が大きかったので、私たちと関わる壁面の仕上げはあとにして頂いていて、部分的に左官屋さんが壁を仕上げています。それに擦らないようにしながらこの大きな人工大理石のカウンターを2階に揚げることが大変なのでした。今回は建物の形状上、外からの荷揚げが困難でしたので、階段がちょうど良い広さだったのに助けられてどうにか搬入できました。
あとは工房で組み上げたとおりに再度組んでいくのみです。
台数が多いので、複数日に分けて設置工事をおこない、機器も組み込んでようやく完了。
なかなかのボリュームでしたので、無事終わった時には本当に胸を撫で下ろしたのでした。
そして、お引越しされて2週間ほど経ち少し落ち着いてきたところで、ご挨拶にお伺いしてきました。
底抜けに明るいご主人と奥様のお話は、まるで舞台を見ているよう。
楽居さんの作ったこの空間がより舞台のような印象に見せてくれます。
「新居に入りまして一週間、素晴らしいキッチンでお料理をいたしまして、楽しくて仕方がありません。
夢の様なキッチンです。人の手でできているっていうことがとても良く分かる家作りでした。だから、とてもうれしくて、楽しい暮らしです。」
そうそう、みんな人の手でできあがったんだよね。
それが分かるそれはもうすてきな空間でした。
天板 | デュポンコーリアン「モンタナポーラーホワイト」/プレスシンク |
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扉・前板 | メラミンポストフォーム加工扉「鏡面ホワイト」 |
本体外側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
天板 | デュポンコーリアン「モンタナポーラーホワイト」/板金シンク |
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扉・前板 | ナラ板目突板練り付け |
本体外側 | ナラ板目突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ウレタンクリア塗装つや消し仕上げ |
ナラ板目材と人工大理石コーリアンのオーダーキッチン
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