ハンドメイド
「ナラ節アリ材とステンレスの食器棚のオーダー」
墨田 N様
design:Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:yasukazu kanai
以前に一度だけ、2000店以上のお店が2日間に渡って開かれるとても大きなクラフト市に出店したことがあります。
出店するほうも準備がなかなか大変で、見に来る皆さんもいろんなお店があるから大変だったのだと思います。人通りはたくさんあるのですが多くの人は歩きながら見ていく感じできちんと立ち止まってみてくださる方々は、いつもの市よりはかえって少ないように思えたのでした。
なかなか手に取ってみてくれる人が少ないねぇ、なんて言いながらアキコと二人で心もとなしにしておりましたら、ふと向こうからしっかりした足取りの女性が一人やってきたのでした。
いろいろと私たちの小物を見ていってくださって、「ありがとうございます。」とお声かけしましたら、「イマイさんのウェブサイトを以前から拝見させて頂いておりました。実は今食器棚を考えているのです。」とおもむろに家具の相談を始めてくださったのでした。
思わず、うれしさに大きく笑みがこぼれたのですが、今日は打ち合わせでお見せできる木々たちも道具たちも持ち合わせておらず、往来から時々声をかけてくださる人もいらっしゃったものですから、後日あらためてメールでご連絡くださいね。と伝えさせて頂いて、アキコと二人顔を見合わせて喜んだのでした。
やっぱり見ていてくれる人がいるってうれしいものだなあ、と。
クラフト市を終えてしばらくしました頃に、メールが届きました。
Nさんからです。
食器棚の細かいご要望を携えてこちらにいらしてくださることになりました。ありがとうございます。
「こんにちは、Nさん。先日はブースにお立ち寄りくださいましてありがとうございました。」
今日はご主人と二人でいらしてくださいました。
先日マルシェでお会いした雰囲気は、どこかふんわりと物腰柔らかな印象だったなあと思っていたのですが、実際にお会いしてこうしてお話してみるときちんとしたイメージを持っていて、その形に向かってしっかりと話を進めていくキビキビとした刀のでした。どちらかというとご主人のほうがふんわりとした印象で、そのお二人のやり取りがとても楽しいのでした。
そうして、Nさんの思い描くナラ材を使った少しラフな印象でまとめていくことになり、形もまとまったところで一度現地を確認させていただくことにしました。
平井の駅から川沿いにてくてくと歩いていくとたどり着くマンション。都内でも下町に近いのでしょうか。どこか喧騒から離れた物静かでよいところです。
「お邪魔致します。」そういって上がらせて頂くと、奥様はお仕事で出掛けられているそうで、足にギプスをはめたご主人が少し大変そうに迎えてくださいました。
「実は休暇中に足を折ってしまいまして、そうしたら妻が看護師ですのでかえってなかなかストイックでして自分の面倒は自分で見なさいって感じで・・。」と苦笑い。
「ああ、私もそうです。分かります。」と、本日一緒に採寸に同行してくれたアキコをちらっと見ながら私も苦笑い。
アキコも元々看護師ですので自分にもストイックなのですが、私が風邪を引いたりしても「自分できちんと直してね。」ということでなかなか甘えは許してくれないのであります。(笑)
手早く二人で採寸をして、奥様がイメージされていた仕上がりの色のもととなっているテーブルや床の色を確認させて頂いて、ご主人に負担をかけないうちに戻ってまいりました。
「早く良くなってくださいね。」
これで、寸法も色もまとまりましたのでいよいよ製作開始です。
ナラの節アリ材はこのところよく使われる素材です。表情は良いのですがなかなか癖があって、挽いてみないと、削ってみないと材の悪い部分が分からなかったりするので、無駄が出てしまうことが多い素材でもあります。
削ってみると思っていた以上に割れが深くて、使っていると乾燥の具合でもっと割れが進んでそりも出てきそうな材があったり、あまりに節の状態が悪くて大きく欠落してしまったり。
どちらかというともともとはじかれてしまっていた材でもありますので癖は大きいです。それが良い表情となるわけですので、そういわれてみると扱いづらさはあっても確かに豊かな表情で、ほかにはない柄になるものばかりで、このような材は使えないよ、と言われて育った私たちでもすてきな表情をしているね、と思えてしまうのですから、ものの見方は変容するわけですね。
その癖のある材を使って、食器棚をくみ上げていきます。
天板はステンレスでハンドルもステンレス。こうしてストイックな印象の食器棚ができあがりました。
完成、設置後にあらためてアキコと二人でNさんを訪ねます。
やっぱりマルシェで初めてお会いしたので、アキコもあらためてお礼を言いたいということで。
すると、今度はすっかり足が良くなったご主人と奥様の間には小さな赤ちゃんが。
新しい暮らしが始まりますね。
その中に私たちが作る家具を取り入れてくださってありがとうございました。
アキコと二人ホクホクした気持ちで帰路に就いたのでした。
ナラ節アリ材とステンレスの食器棚
価格:550,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から、取付施工費は40,000円から)