ビスポーク
2018.03.14
今日は沼津のMさんの細かい細工を施しに現場へ。監督の内藤さんも解錠しに来てくれて、Mさんもいらっしゃって最後の顔合わせ。
作業が終わった後、Mさんがおもむろに、「お二人に少しお話があるのです。」と。
そして、カバンから取り出したのは2足の革靴。
「ビスポーク(bespoke)って言葉をご存知ですか。」と私よりも歳がうんと若いMさんが切り出します。
もちろん聞いたことはないのでした。
「オーダーメイドに近い言葉なのですが、より深く依頼主の好みを反映させた注文、という感じになるのでしょうか。対話を繰り返すことで、作り手と使う人がより近い関係になる物作りというか。」
「この2足の靴は友人にオーダーされたものなのですが、自分で納得がいかなくて自分で履いているものなのですが、何というかこう言葉にしづらいのですが、思いが未達なところもあってそのまま渡すことができなかったのです。」
「そして、こうして新居ができあがってとてもうれしい反面、もっとこうしたら良かったかなって思いもまだたくさんあって、不満ではなくて、反省だったりして。だから、自分の今がこの靴と同じなような気がして。
それでもこうしてできあがった姿はとてもとても好きです。でも、何というかもっと対話をしたかったなあって。もっと作っていたかったなあという気持ちで、終わってしまうことが少し寂しく感じてしまったり。」
でも、これからが始まりですものね。使い続けていくうちに暮らしは変化し、家や家具もそれに応じて、姿は変わらなくても中身は変容していきます。そうなる節目節目で私たちとまた対話してもらえたらうれしいな、と思って現場を後にしました。
まずはお引っ越し後にまだお伺いします。