懐かしく思い出される

「ナラ板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」

鎌倉 F様

design:Fさん
planning:daisuke imai
producer:all staff
painting:all staff

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

ダイニングテーブル越しにキッチンを眺める。

私がこの仕事をはじめて、2年ほど経った頃でした。
この頃になると、だんだん仕事の感触も分かってきたりして、自分の気持ちに余裕が出たりするのです。
みなさんもそう言った経験がありませんでしたか?
「自分はこのままただ言われるままに、家具を作っていくだけなのだろうか。」
なんて、いっちょう前なことを、二十歳そこそこで思うわけです。
その思いを両親に告げると、きっと仕事も忙しかっただろうけれど、
「良いよ、その専門学校に行ってみなさい。」
と、そう言ってくれたのでした。
相変わらず仕事は忙しいのに、週3回夕方から男手が一人無くなるなんて大変だったのでしょうが、そんな親の気持ちも知らず、当の本人は、今までの仕事の環境が変わって、魅力的なことができるということに、ウキウキしたりして。
結果として、その夜間専門学校で学んだ2年間は、自分の中でとても大事な力になっているし、同じ志を持って、一緒に仕事をしあえる大切な友人もできたわけです。
あの時は、卒業したら自分はデザインを専門とする仕事に就くんだ、なんて鼻息荒く考えていたのですが、いろいろあって考えているうちに、また、家具作りに戻ったのでした。
でも、今までのように、渡された図を形にするだけではなく、その形自体も自分で考えられるような、今の家具作りの礎ができたのでした。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

キッチンの様子。(夜)

卒業してしばらく仕事を再開している時にも、電話が鳴りました。
出てみると、専門学校でお世話になった先生の声。
「イマイ君さあ、今教えている生徒への課題で、デザインから、発注までの流れを知るっていう課題があってね。」
「あっ、私もみんなでやったあの課題ですね。」
「そう、あの時君たちは、5人くらいが君の工場で世話になったんだよな。それを、思い出してね、今のうちの生徒で木で椅子を作ることを考えている子がいてね。イマイ君に手伝ってもらえないかな。」
なるほどおもしろそうなお話しだと思い、引き受けさせて頂いたのでした。
そして、その後日に現れたのは、可愛らしい女性でした。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

キッチンの様子。(夜)その2。 吊り戸棚の下面に照明を組み込んでいます。

結局、発注して製作者に任せるのではなく、彼女も手伝いながら、ひとつの作品を作りあげていったのでした。
あの時作ったのは、何だったかな、、。確か合板を曲げて作ったベースにまるで座面に水が張っているように見せるために、水色の樹脂で座面を作っていたような。
そして、完成後は記念に近所でお好み焼きを食べに行ったりして。懐かしい思い出です。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

シンクはシンプルでさらに少し小ぶりなサイズで。

キッチンの相談をしに来てくれたFさんが、いろいろとお話しをして、ひと段落した頃に、「覚えていますか?以前、ここでお世話になったのです。」と言われて、あっ、と思い出したのでした。あの時の生徒さんだって。
結婚されて、名字が変わっちゃったけれど、あれから14、5年経っちゃったけれど、面影があの時の印象です。
「お互い、年を取りましたね。」なんてお話したのですが、何より、「いつかイマイさんに何かをお願いしようと思っていました。」という気持ちが本当にうれしかったのです。
そうしてFさんは、このたび七里ヶ浜に新居を建てることになったのだそうです。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

デリシアグリレの印象。

Fさんのイメージを聞かせて頂くと、どちらかというと、シンプルよりも少し無骨な印象。
なるほど、良い感じになりそうですね、なんて思って聞いていると、
「イマイさん、どう思います?」
と、聞かれたりして。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

ダイニングテーブルはシンプルに。 妻手側にカトラリーを入れる引き出しを設けています。

Fさんは、学校を卒業したあとは、グラフィックデザインの仕事をずっとされていて、さらには間もなく独立するということでした。
そういうプロフェッショナルな方から、「このデザインで大丈夫でしょうか?」なんて聞かれると慌ててしまうわけです。
自分は、いろいろな意見をまとめてひとつの形にすることはできても、オリジナルの形をデザインするということは、苦手なので、、。
そういうやりとりをくりかえしながら、時には気に入った家具の素材を見るために、ショップまで連れて行ってもらったりしながら、ひとつずつ形が決まっていきました。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

テレビボードの印象。 厚い天板と脚と細い格子。

Fさんには、キッチンだけではなく、主な家具をいろいろとご依頼頂いていたのです。大きなもので、4台の家具がありました。その中で一番大掛かりだったのが、キッチンと洗面化粧台でした。まずは、壁が仕上がる前に大工さんがある程度進んだところで、設置場所を確認して納める寸法を決めます。

細い格子扉のあるオークのテレビボード

横から見た時の印象。普通のテレビボードの奥行より深めに作っているのは、配線をうまくしまえるような工夫を裏面に施しているからです。

洗面台のほうは、サイズに余裕があったので、製作は問題なく進んだのですが、洗面器の下の配水管をうまくレイアウトして、それ以外を収納にしていくところがなかなか大変で、その吊戸棚は照明をつけるための配線を苦労しながら製作したのでした。
キッチンはその幅が3950mm近くありまして、そこに1枚のステンレスカウンターも持ってくる形にしていたので、搬入がなかなか大変。
特に当日は、雨に降られてしまいまして、みんなで、荷物を覆いながら何だか大変な思いで、運び入れたのでした。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

細い格子の印象。 イメージとしては、金属の羽のような印象にしました。 内部がよく見えるので、内部の化粧板は濃いグレーを使っていることも大きな特長。

キッチンと洗面台が完了すれば、あとは水道屋さんや電気屋さんなどの関わりが無くなるので、ひとまずひと段落。
その後、他のお客様の仕事がとても忙しくなってしまって、続いての家具は、ご新居の工事がほぼ終わるころから取り掛からせて頂きました。
その残り2台の大きな家具は、テレビボードと、ダイニングテーブルでした。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

洗面室の印象。

テレビボードも天板や側板が厚み42mmほどの板なので、それなりに重かったのですが、ダイニングテーブルは、もうダメです。長さ3000mmあるテーブルの天板は、見附部分は80mmほどの厚みに見えていますが、実際は40mmほどの厚みなのですが、これが平地で持っても大人二人だと結構重いのです。これを2階に上げるのは大変。社内総出で6人が掛かりでようやくあげることができました。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

天板を収納よりも少し出しておいて、その下面にタオル掛けをつけています。

でも、苦労した甲斐があって、とても良い空間になりましたね。
このようにとても懐かしい人からこんなに素敵な居場所作りを手伝わせて頂けたことがとてもうれしかったのです。

ナラのシックなキッチンとラバトリーとテレビボード、ワイルドなダイニングテーブル

配管が通るところは扉になっていて、その他のところは引き出しに。

キッチン仕上
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 ナラ板目突板練り付け
本体外側 ナラ板目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル塗装「ナチュラル」
洗面カウンター仕上
天板 ナラ板目無垢材
扉・前板 ナラ板目突板練り付け
本体外側 ナラ板目突板練り付け
本体内側 ポリエステル化粧板「ホワイト」
塗装 ワトコオイル塗装「ナチュラル」/ウレタンクリア塗装ツヤ消し仕上げ
テレビボード仕上
天板 ナラ板目無垢材
扉・前板 ナラ板目突板練り付け/ナラ板目無垢材
本体外側 ナラ板目突板練り付け
本体内側 ナラ板目突板練り付け/ポリエステル化粧板「グレー」
塗装 ワトコオイル塗装「ナチュラル」

ナラ板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン

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