ぼくもあの子もくらす町

「ナラ節アリ材の食器棚とナラのダイニングテーブルのオーダー」

大倉山 S様

design:Sさん
planning:Sさん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami

ナラ節アリ材のダイニングテーブル

陽だまりって言葉がよく似合う住まいでした。

「お母さん、僕、このまま友達のところに遊びに行ってもいい?」
「いいわよ、どのいくの?」
「・・・のところ!」

ああ、あったね、こういう感じ。
Sさんを待つ間に吹いていた風はむかしに嗅いだ匂いがして、ちびっ子のこういう話声を聞くと、昔懐かしく自分の子供の頃が思い出されます。

ナラ節アリ材のダイニングテーブルとカップボード

懐かしさが残る、と思っているのは私だけかな。Sさんはまだお若いし、かえって新鮮な印象なのかもしれませんね。


ナラ節アリ材のダイニングテーブルとカップボード

最初はキッチンも作りたいというご要望を頂いていたのですが、予算オーバーになってしまって断念。シンプルな白いキッチンはこの場所にはよく似合っていて、かえってナラ材の印象よりも優しさが出てよかったように感じられました。


ナラ節アリ材のダイニングテーブルとカップボード

このダイニングとリングを仕切る大きな梁は、182センチの私にはちょっと厳しいけれど、懐かしい。(笑)テーブルのサイズは、この空間に合わせて2メートルで作っております。ただいまナラ材がかなり高価な材になっていて、このくらいの大きさのテーブルと作ことは少し難しくなってきています。大切に資源を活用していかなければいけません。

「イマイさん、お待たせしました。エレベーターが各階に止まらないから、お待たせしちゃってすみません。」
にぎやかに駆け降りるちびっ子のあとから、Sさんが階段から降りてきました。
ああ、さっき私を自転車で追い越したのはSさんだったのだ。
それにしても、懐かしいくらい古い集合住宅なのに、Sさんのように若い方が多く住んでるのですね。
「こんにちは、Sさん。納品の時にはお伺いできませんでしたので、今日は家具を見せて頂けるのが楽しみですよ。」

ナラ節アリ材のダイニングテーブル

天板と脚の印象は、少し丸みを持たせました。

私が子供のころ住んでいた団地も、駆けって2分で友達の家だったから、みんなで住んでいるって感じがいつもしていて。
好きな子もいれば、楽しい子もいたり、もちろん嫌いな子もいたり、みんな一緒だったね。
自分は鍵っ子だったから家に戻ると、フタバさん(だったかな。)の食材が発泡スチロールの箱の中に届いていて、それを自分が家の中にしまうのが、帰宅後の最初の仕事だったかな。
そんな大事な仕事があるのに、時々鍵を忘れてしまって、3階だからベランダからすんなり入ることもできないわけで、そういう時には隣の階段のオリモさん(階段が違うから、こういう時しか会わない人なのですが)に「すみません・・、鍵を忘れてしまいまして・・。」とお願いして、「あら、いいのよ。どうぞ、どうぞ。」とおばさんにお願いして、ベランダに通してもらうのです。
ベランダには、隣の家につながる非常用のパネルがあって、その下が子供だったら通れるくらいの空間があるのです。そこを先にランドセルを放り投げて、はいずりながら自分のベランダへととおっていくわけです。
「おばさん、ありがとうございます。」
ベランダのカギはそういう時のためにいつも開いていて、そこから帰宅するのです。何食わぬ顔でね。
そういう風が吹いている集合住宅だったのです。

ナラ節アリ材のカップボード

こちらはカップボード。表情豊かな節アリ材を使っています。

「お邪魔します。」
リノベーションした室内はそういった昔の面影はどこかに行ってしまって、名残といえば低い天井を取り払って出ている大きな梁くらいでした。
「この場所が気に入ってしまって。それに私の事務所の代表もここに住んでいるから仕事もしやすくて。」
Sさん、設計士さんなのです。代表も女性設計士さんで、お母さん目線で作る保育園や幼稚園を作るお仕事を主にされているのだそうです。
おもしろいなあ。

ナラ節アリ材のカップボード

カップボードは壁に固定しないで、ここに置いてあるだけ。「いつかこの場所以外でも使いたいなって思いもありますので。」とSさん。


ナラ節アリ材のカップボード

引き戸は、下に車をはかせていて、ナラ材の敷居を作って、そこを戸が滑っていきます。金物を使うとどうしてもキラッとしてしまうし、車をつけないと、戸が重くなるし、でこの納まり。

入ってすぐは、広い土間と前室のようなスペース。そこに少し小さめのテレビがぽつんと置かれています。
「今はこの場所は、子供たちが帰ってきたら友達と一緒にここで賑やかに遊べるようにしているんです。」
へぇ、たまり場だ、良いです。

「どうぞ!」と案内してくださったスペースはコンクリート造ならではの大きな空間。
「この大きな場所で過ごしたかったのです。」
入ってすぐのところがキッチン、というか台所。そこに私たちが作らせて頂いたダイニングテーブルと、小ぶりなカップボードが置かれていました。
「とても良い印象にまとまりましたよ。」とSさん。

ナラ節アリ材のカップボード

取っ手をちょっと印象付けて。ここはただのオイル仕上げではなく、鉄染めして仕上げています。


ナラ節アリ材のカップボード

独特の色合い。

そして、広いリビングからは向かいの棟が見えます。
フフン、この感じも懐かしいね。

「お写真撮り終わったら、良かったらどうぞ、お茶を入れますね。」と言って、さっき買い物をしてきたのは、このお茶菓子だったのですね。
近くにすてきなお店があって、玄関を出ると学校が見えて子供たちの声も届いてくる。下を見ると年配の方々がそこかしこでおしゃべりしていて、若い人たちの往来もそこそこあって。
色褪せそうに思えた記憶が鮮やかによみがえる、そんな町に住んでいるSさんはずっとニコニコしておりました。

ナラ節アリ材のカップボード

こちらの天板もダイニングテーブルと印象をそろえております。


ナラ節アリ材のカップボード

引き出しの様子。


ナラ節アリ材のカップボード

引き出しの様子。

ナラ節アリ材の食器棚

価格:310,000円(制作費・塗装費)

ナラ板目材のダイニングテーブル

価格:340,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は25,000円から)

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