いっしょに学ぶ

「クルミのセパレートタイプの食器棚とテーブルのオーダー」

横浜 Y様

design:Yさん
planning:daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:iku nogami

クルミとコーリアンの食器棚とダイニングテーブル

キッチンとダイニングの様子。食器棚だけを作らせて頂くお話だったのですが、お話を進めるうちにダイニングテーブルも合わせて作ることで、部屋の印象を整えましょう、ということに。

食器棚のご相談にいらしてくださったYさん。
Yさんはこれから新しいマンションに入居する予定なのですが、内覧会まで部屋には入れないし、自分のイメージするインテリアの明確な印象が自分の中でもまとまらずモヤっとしてしていたのだそうです。

クルミとコーリアンの食器棚

食器棚全体の印象。

私はこの仕事をしていて、家具を作ることって、家具だけを作ることだとばかり思いながら昔はやってきたのです。
でもね、家具を作ることってその人の住み方を考えることでもあるんだなって、そういう気持ちが最近はより強く感じるようになってきました。
私たちが作る家具は、奇抜な形でもオリジナリティあふれるような突出した形でもなくて、だれでもどこかで見たことのあるような形です。
その形の中にある小さなことがとても大事で、それは目に見えたり、見えなかったりするけれど、その使う人には良く見えていることで、それをきちんと表現できることが大切なんだって思えるようになったのです。
もちろん、住む人はその人だから、私たちの意見が押し通ってしまってはいけません。
こういう形もありますし、こういう表現もありますが、どういう表現にたどり着きたいですか。というワインディングロードを一緒に歩いていくのが私たちの仕事なのかもしれないって、最近強く思うのです。

クルミのランダム接ぎ

「豊かな色」のGさんに言われたことは、木目をランダムに並べてほしいということ。つながりのない自然な色のばらつきを見たかったというGさんの思いにYさんにも気に入ってもらって、この食器棚もあえてランダムにしたのです。

「初めまして。」とYさんにお会いしてお話を始めたのです。
ご主人がどちらかというとお子さんの子守できたんです、という印象で、ちびっ子のおもちゃがある部屋でお子さん二人と一緒に遊んでくれていて、奥様が打ち合わせに専念できるように、という感じでした。
当の奥様は、何となく自分が好きなインテリアがあるけれど、それを新居で実現するにはどうしたらよいかがなかなかつかめなくて‥、という感じです。

クルミとコーリアンの食器棚

吊戸棚内部の印象。

というのも、ご新居のマンションの内装が、このところよく目にするちょっとゴージャスな印象。
なんというのかな、濃い色の建具と床でキッチンのカウンターは御影石。
でも、奥様が思い描くのは北欧のイメージ。もっと明るい木の色に囲まれた空間だったのだと思います。(思いますというのは、これからまたいろいろと変わっていったからですね。)

クルミとコーリアンの食器棚

家電の熱の影響を受けない半分にはオープンラックをつけています。

私は家具を作ることや考えることはできても部屋全体の整えるのは、私にはきっと難しいことだって思っておりました。
そういう仕事はコーディネーターさんがやってくださることで、私たちはその一部を作り上げていくのが本分だと思っていたのです。

クルミとコーリアンの食器棚

カウンターにはコーリアンのクラムシェルというシートを採用しています。この部分はYさんがずっと悩んでいたところ。最初はもう少し茶色が濃いシートを選んでいたのですが、実際に使おうとしたら廃番になっていて、あれこれ悩んでこの明るいシートにしたのです。

でもYさんとお話しするうちに、どんなことに悩んでいて、どんなふうにイメージを実現していったらよいか、一緒に考えることで部屋ができあがっていくということがとても自然なことで、家具を考えていると、いつのまにかその部屋ができあがっていくことがいまさらながらとても当たり前のことに思えたのです。

クルミとコーリアンの食器棚

ハンドルはゴーリキアイランドさんの真鍮磨き仕上げのハンドルです。

まず、Yさんが北欧風ということで見せてくださったのが、とある家具屋さんのダイニングのイメージ。ブナやカバを連想させる明るい木に角に丸みを帯びたディテール。床は黒い石で少し色があせたような印象に見えて。

クルミとコーリアンの食器棚

食器棚のプランはシンプルで、炊飯器を置くスライドテーブルとごみ箱を置くスペースとトレイなどが置けるちょっとしたスペースのほかは引き出し式の収納です。

よくよく考えると、北欧というと樹種も淡かったり黄褐色だったりして優しい木の色に鮮やかな色のファブリックやパステル調の色彩が並ぶようなイメージが一般的だったのかもしれませんが、そのダイニングのイメージから、すこし色あせた空間に木の生き生きとした表情が映える感じをイメージしたのでした。
ところどころにアンティークな要素を入れたりして。そうなると北欧、というイメージとは違うのでしょうけれど、Yさんも「あぁ、その感じ好きです。」なんて言いながら、イメージはいろんな方向へ飛んでいくのでした。

クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。食器洗浄機で洗いあがった食器をそのまま引き出しに移せるようにという要望で、この食器棚の設置スペースが限られてしまっていることもあったのですが、ある程度使いやすいレイアウトにできたのは幸いでした。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。


クルミとコーリアンの食器棚

引き出しの様子。

そうしていろいろな話を重ねるうちに、木の表情もはっきりと生き生きとした表情のナラやタモといった材よりも、少し陰りがあるけれど粗野だったり、優しかったりする表情のクルミに目が留まりました。
豊かな色」の印象です。こちらはドイツ人のご主人なので、北欧ではないのですが・・。
新居の床の濃さも使い込んで褪せてくると、このクルミの色とより合ってくるのではないか、でもすべて重い色ではなく、明るい色を取り入れながら・・。

クルミとコーリアンのダイニングテーブル

食器棚と一緒に作らせて頂いたダイニングテーブル。

そんなお話を奥様と繰り返すうちにイメージしていくことの楽しさがご主人にも伝わって、いつの間にかご主人のほうが前のめりにお話を聞いてくださっていたりして。
話は家具だけでは収まらず、どういった布が窓に掛かってくるか、床にはラグが敷かれるのか、新居の濃い床が使い込まれていくとどのような感じになっていくのか、Yさんの気持ちや色の印象をいろいろ思い巡らせながら、だんだんと形がひとつの方向にまとまっていくのでした。

クルミとコーリアンのダイニングテーブル

天板小口の様子。

その後、内覧会にも参加させて頂いて、実際の部屋の印象とイメージしている家具を照らし合わせて、ようやく形がまとまりました。
長かったですね。
でも私自身とても勉強になる時間でした。
ありがとうございました、Yさん。

クルミとコーリアンのダイニングテーブル

脚部も丸みを持たせて、全体的に優しい表情で仕上げることができました。

クルミの食器棚

価格:610,000円(制作費・塗装費)

クルミのダイニングテーブル

価格:280,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は30,000円から)

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