ただしい声をした鳥
2019.01.16
ある夜、淋しい夢を見たような気がして流れた涙を伝う感触と、その淋しさで大きく肩をふるわせながら目を覚ましたタルベルの佇む窓辺に、深い夜でもはっきりとした青い羽根をもった低くただしい声をした鳥がやってきてこういうのでした。
「タルベル、私も淋しい夢を見ました。一人になってしまって、風と一緒に飛んでいくみんなの後を追いかけて、夜のなかを飛んでいたのです。
やがて空が白んでくるころ、ふと気が付くと私のほうがずっと先を飛んでいました。
強い思いは自分の目をくらましてしまうこともありますが、自分を大きく前に向かわせてくれます。私はあの夜、危うく大きな空の向こうに落ちてしまうところでしたが、お日様が私の目を覚ましてくれて、皆のもとに戻ることができました。あなたが見た淋しさは、きっとあなたを強くしてくれますよ。」
青い羽根が朝日を浴びてまるで銅色に輝き始めた正しい声の鳥のさえずりを心地よく聞いていたタルベルは見つめていた西の空からただしい声をした鳥のほうに顔を向けるとこう言いました。
「ありがとうございます。気持ちが正しくなりました。ごきげんよう、さようなら。」
ただしい声をした鳥は、この冬が終わりを告げて春がやってくることを教えてくれたのでした。
タルベルはもう居ません。