ああ、やさしい色あいよ
「タモ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」
三島 I様
design:平成建設さん/Iさん/daisuke imai
planning:平成建設さん/Iさん/daisuke imai
producer:hiroyuki kai
painting:hiroyuki kai/haraki tosou
三島のIさんのご新居にセパレートタイプのキッチンを作らせて頂きました。
平成建設さんからのご依頼で作らせて頂いたキッチンです。
平成建設さんからということで、Iさんと直接お話しさせて頂いたのは1、2度ほどでしたが、奥様が私たちのウェブサイトをよくご覧になっていたそうで、また担当のKさんのお話が的確だったこともあって形の方向性は程よい時間で決まっていきました。
平成建設さんとは、最初に「ホワイト、ナチュラル」の三島のKさんのお仕事がきっかけでお付き合いさせて頂けることになったのでした。
今から8年前のお話ですね。
当時は、箱根よりも以東方面で家具を作らせて頂ける機会はほとんどなくって、とても新鮮な街並みでしたね。
その後、Kさんのキッチンを気に入ってくださった設計士さんが再び声を掛けてくださり、また平成さんの社風のおかげで私たちの工房に近い藤沢支店の方々からもお声掛け頂いて、スタッフさんの自宅のキッチンを作らせて頂いたり、ショールームのキッチンを作らせて頂いたりと、いろいろとうれしいお付き合いをさせて頂けるようになったのでした。
大きなハウスビルダーさんになると、私たちのような小さな工房が現場に参加することをよく思わないところも多くあったりします。
当然、その会社さんの規定から外れた形になるので、何かイレギュラーが起きてはいけないという気持ちの表れですので、そういう対応は当然のことと思うのですが、平成さんはスタッフの皆さんの年齢が若いこともあってか考え方がとても柔軟で、いろいろな形を取り入れようという気持ちが、私たちにもよく分かるくらい何事に対しても前向きな気持ちを持ってくれていて、そういう気持ちが毎回すてきな形に現れるのです。
そういう流れで、今回もキッチンご相談を頂いたのでした。
それぞれの設計士さんの色はかなり違っていまして、家具の印象や大まかなプロセスをまとめておいて、あとは専門である私たちに細かな部分を組み立ててもらいたいってお任せくださる方もいらっしゃれば、自分自身を磨くために、私たちに相談しながら、家具を設計してく設計士さんもいらっしゃいます。
私はこう思っています。
家具を設計できる設計士さんは素晴らしいって。
住宅を設計することはもちろん素晴らしいことで、私にはとてもできない偉大なことだなあっていつも思っております。
家がしっかりした作りになっているか、風はきちんと通り抜けるのか、日が差し込んで温かな時間がいつなのか、そういう時間というか空気を見つめながら建物を形作ってゆけるってとても偉大なことです。
「時には席を離れてすこし遠くからカンバスを見つめることができるような感じ」それが建築だと思えていて、家具というのはもっとそこの住む人の仕草や気持ちが入り込んでいくものだと思っていて、まるで「カンバスに書かれたリンゴの熟した具合や、ガラス越しに移る山羊が草を食む姿を描き込んでいくこと」のように思えるのです。
だから、その両方ができる設計士さんは、きっと素晴らしい絵が描けるはず。
私たち家具工房が考える形とはまた違ったアプローチ見られる、そんな楽しさがあるはず。
今回設計担当のKさんは後者でした。
たびたび私に連絡が入って納まりについての質問が投げかけられて、それを踏まえた形で家具図が送られてくる。
自分で形や納まりを考えて、自分の家具を考えていく、そんな印象でした。
最初にKさんにお会いしたのは、現場でした。
平成さんのおもしろい取り組みに、設計の仕事をする前段階で、現場を経験するのだそうです。
大きな戸建て住宅の家具の納品に行った時に、何人かいらっしゃったかわいらしい女性の一人がKさんです。
だから、「イマイさん、お久しぶりです。」と、アトリエから出てこられた時には、あの作業着とヘルメットの姿のイメージしかなかったので、ピシッとしたスーツで凛とした力強い姿を見て、ホホゥと思ってしまったのでした。
(Kさん、目力が強いのです。)
現場や、家具屋や、そのほかいろいろな職方さんから頂く知識でKさんとても年下とは思えないくらい凛々しく見えたわけです。
そうしてKさんと再会し、何度かやり取りさせて頂いて、Iさんのキッチンは一つの形にまとまっていったのでした。
今回採用した素材はタモ材。明るい印象に仕上がりました。
そして、木目の動きを大きく見せたいな、ということもあって、いつもの四枚接ぎではなく四尺(1200mm)用の突板を使って三枚接ぎで作ったことで、この大きな空間に川が流れるような緩やかで優しい動きが出ました。
そして、今回は突板を使って、且つアイランド側は再度とバック部分の木目をつなげたいということで、コーナーの部分にひと工夫。
突板は、表面の無垢材が薄く仕上がっている分、角の強度がそれほど強くない、という面があります。
もともと、無垢材の表情の美しいと言われる部分や希少な木材を使いやすい価格と薄い板を積層することで、板の動きを安定させて反りや伸縮の少ない材を作ろうということで、無垢材のデメリットを補う形でできた板ですが、合板という言葉が先行して、その良さが分かりづらい部分もあったりします。その代わりに、無垢材のその表情の良さ夜気が動くのだという認識が改めて認められることで、材としていろんな一様があるという点が理解されている今の世の中はいろんな家具作りの選択肢が生まれて、良い物つくりがしやすくなったのではないかとも思えます。
今回はその突板のデメリットを補う方法として、そのコーナー部分に通称ヒモと呼ぶ細い無垢材を練り付けています。
これは、昔から木工所で教わる仕上げ方で、私も二十歳くらいの頃に父から教わりました。
Kさんにこの話をすると、意匠的にも良いですね、ということでIさんとも相談されてこの形で納めさせて頂くことに。こうすることでコーナーがかなり強くなります。
そのほか、今まで学んだことをポイントポイントで使わせて頂いたことで、どこか欧風なたたずまいのスッキリとした形に整えることができました。
1点失敗してしまったのが、引き戸の下のオープン棚。壁に棚板を固定できると思ったのですが、背面のタイルをオープン棚の背の部分まで張り込むということで、棚板をしっかり固定できなくて、板がたわんでしまったのでした。
そこで、急きょ真ん中あたりに仕切り板を立てさせてもらって、ぐらつきを取る加工を施して、ようやく完成。
Iさんにも気に入って頂けて、本当によかったです。
なかなかお話しできないまま形ができあがることって少し不安な部分があったのですが、Kさんが私の気持ちを伝えてくれてIさんの気持ちをこちらの伝えてくれたおかげで、とても良いかたちにまとまったのでした。
天板 | ステンレスバイブレーション |
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扉・前板 | タモ板目三枚接ぎ突板練り付け |
本体外側 | タモ板目三枚接ぎ突板練り付け |
本体内側 | カラーフィットポリ化粧板「グレー」 |
塗装 | ウレタンクリア塗装全つや消し仕上げ |
タモ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン
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