みどりが入ってくる場所

2019.05.25

古いけれど緑豊かな集合住宅。
エレベーターはなくって、幅が広くて、蹴上の低い、踏み面がちょっと広く感じる昔の階段を上がった先がヒンメリ作家でもあるMさんのお住まい。
ここをリノベーションして風通しの良い場所にするのです。
私たちはここでキッチンのオーダーを頂いております。

Mさんの強い希望で、壁に向いていたキッチンを光が入るバルコニーに向けたキッチンにするのですが、なかなかどうして配管達が邪魔をする。
床下の配管スペースが無くって、床を上げると天井が自分たちにぐっと迫ってきちゃうからどうしようか、こうしようかと思案中なのですが、今回はいろいろありまして設計士さんが遠方にお住まいでしてなかなか意思疎通がはかどらない為、奥様が直接工務店さんと納まりを確認しながら進めるのですが、やはり大変そうです。
幸い工務店さんは柔軟な考えをお持ちでしたのでお話は少しずつまとまりましたが、こういうふうに配管が出てくる時や動線のスケール感のお話になってくるとやはり設計士さんに居てほしいなあと思うのでございます。

設計士さんって、翻訳する人。
そこに住む人はイメージを持っていてもそれをどのように実現するかが伝えづらい、建てる人は実現する方法はたくさん知っていても、住む人のイメージが明確にならないことがある。その両方のお話をうまく変換してスムーズに伝えるのが設計士さんのお仕事だと思うのですが、その翻訳者が不在だとなかなか大変な部分は出てきます。
私たちも同じく、家具を使いたい人と気軽に顔合わせができる距離でなければ、お仕事をお受けするのは難しいかなあ。
以前、遠方からのご相談のお客様で、「施工は現地の工務店さんが行なうので、作るだけをお願いできますか。」って言われたことがありました。
それはできることはできるのですが、今でも皆さんの思いを形にしてスタッフのみんなに伝えるだけで慌ただしくしてしまうのに、また別のクラフトマンさんに依存してしまうともう頭がいっぱいになってしまってやっぱり無責任になってしまいそうでして、それに何かあった時には、手が届かない距離になっていくと自分たちでの対応がしづらくなることを考えると、その方には申し訳ないのですが断らせて頂きました。
それに、自分の中のパッションで形を生み出す想像力があるわけでもないのですので、やはり、現地を見て空気を感じて、使う人と会ってその人となりを見ることができる距離でないと、その人のための家具を作るって難しいなあと思うのです。

この横浜の気持ち良い名前の通り青い葉が茂る場所に建つMさんのプランの方向はまとまりつつあって、いよいよキッチンの製作が始まります。
気持のよい場所にするためのお手伝い、頑張ります。