手間を惜しまず
「アルダー無垢材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」
戸田 T様
design:tさん
planning:daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:tさん
横浜から、ご実家のある埼玉県に越されるというTさん。このたび縁あって私たちにキッチンをご依頼頂くことになったのです。
マクロビオティックについて長年勉強されてきて、食べ物同様に、住む家に着いてもなるべく自然にたくさんの手を加えていない素材を使いたい、ということがTさんの希望でした。
もともと、キッチンは水場で湿気が多くなる場所なので、無垢材を使うことは、キッチンを使う方のある程度の理解が必要だと考えております。
風通しを良くして、汚れたらこまめに掃除をして、時々油をすり込んであげて。そういう一つ一つの作業が必要になってきます。
昔は、こういう一手間がとても自然なことでありました。
「人の肌のように木にも油を含ませてあげるんだよ。」
「削れば、ほら、まだ使えるでしょ。」
そういう当たり前の知恵が昔からずっと家庭の中にあったのですが、より扱いやすい形を求めていくことで、便利な新建材ができました。
そういう近代的な素材は、昔の不便さ、便利さを繰り返し学ぶことで生まれてきた素材たちで、もちろんとても優れた、社会の大きく貢献しているものたちなのですが、新しいものばかりに囲まれてしまうと、今までそこら辺に生きていた知恵たちがふっと消えてしまうのです。
無垢材をたくさん使うキッチンに触れていると、ふと昔の知恵が、自分の気持ちにしっくりと入ってくるのです。
なぜ、水が跳ねたらすぐに拭いてあげないといけないのか、木はなぜ放っておくとカサカサになってしまうのか、革はなぜ放っておくと、ひび切れてしまうのか、今まで言われながら行ってきたことがなぜ必要なのかが分かってくるのです。
Tさんは、リフォーム前の段階から、「なるべく自分たちの手でキッチンを作っていきたいのです。」というご要望を頂いていて、キッチンの塗装も、コンロの前のタイル張りも自分たちで行ったくらいです。
自分たちが自分たちのキッチンを育てていく、という強い気持ちが手間を惜しまない、というか、楽しんで行うという気持ちにさせてくれたのです。
タイルもよく見ると曲がっています。塗装も細かく触ると、ざらついているところがそこかしこにあります。でもそれは、Tさんの味。こうして、自分で方法を知っておけば、もし、タイルが割れちゃったりしても自分で貼り直せるし、塗装も躊躇なく塗り続けていくことができます。
私が写真を撮らせて頂くためにお邪魔したときは、キッチンのステンレスカウンターは、程よく擦り傷が入っていて、毎日お鍋がきちんとみんなのお料理を作っていることが分かりましたし、引き出しの中を見させて頂くことで、Tさんらしい使いやすさを知ることができました。
その時にオイル塗装のメンテナンスについて、改めてご説明させて頂いたのですが、軽くヤスリをかけてオイルを塗るだけでその手触りが大きく変わったことに、にっこり微笑みながら、「よし、さっそくやってみよう。」とご主人と二人でうなずいていらっしゃった姿を見ると、暮らすことを楽しんでいるのだな、とあらためて思ったのでした。
天板 | ステンレスヘアライン |
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扉・前板 | アルダー無垢材 |
本体外側 | カバ板目突板練り付け/アルダー無垢材 |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」(Tさんが施工) |
本体 | ナラ板目突板練り付け |
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塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」(Tさんが施工) |
アルダー無垢材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン
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