筆が色をつけていく
「タモ柾目のセパレートタイプの食器棚のオーダー」
町田 K様
design:Kさん
planning:daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:hiroyuki kai
キッチンのカタログをお申し込みくださる皆さんの中にはキッチンだけではないご応募も多く頂くのです。
でもカタログは何しろ手作りで、不器用なものですからWordの中で写真を切ったり貼ったりしながら作っておりまして、なかなかキッチン以外のカタログを作るのに腰が重かったりするわけです。
特に多いのが、今回のKさんのように食器棚を考えていらっしゃるみなさんです。
ウェブサイトにはそれこそいろいろな形を作らせて頂いた足跡をたくさん残しているのですが、やっぱり本としてみたいですよね。
そういう声を少なからず頂くので、やっぱり頑張って作りましょうか。
Kさんは毎回とてもご丁寧にメールをお送りくださる方で、お会いするまではどのような人だろうと思っておりましたが、思った通りのとてもかたでした。
「こんにちは、お邪魔致します。」
今回はおおよそ形も決まって、細かいイメージもメールで共有できておりましたので、工房にいらして頂くのではなく、直接Kさんのお宅にお伺いして、設置場所や普段しまわれているものなどを拝見させて頂きながら打ち合わせを進めることにいたしました。
私よりもいくつか年上の先生のような落ち着いた風貌で、奥様も同じくとても物静かな感じでいらしてくださったのです。
メールのやり取りはご主人と主に行なってきたので、ご主人主体でお話を進めていくのですが、食器棚を実際に使うのは奥様。
奥様の意見をご主人を通して打ち合わせているような感じでお話を進めていくうちに、奥様が細かいニュアンスの伝えにくさがあったりすることにちょっと歯がゆさを感じられたのでしょうか。
だんだんと奥様の意見が鮮明に直接私に響くようになってきたのです。
その様子を見てご主人も、半歩後ろから見守ってくださって奥様の明確なイメージをお聞きすることができました。
そのご意見を頂くことで、これまで考えていた形からで大きく変更されることはなかったのですが、実際に使う人の思いを聞くことができるのと、できないのでは大きく違います。
何を思ってここに置く食器棚を私たちにご依頼くださったのか。
オーダー家具を作る方はほかにもいろいろいらっしゃいますし、みんな同じような素材を扱えて、同じように形作ることができる人たちはたくさん居らっしゃいます。
その中から私たちを選んでくださったのにはきっと何かおおきな理由があるはずで、それが分からないと形を作るためのきっかけが見つからなかったりするのです。
幸い、今までの皆様はきちんと私にその気持ちをぶつけてくれたので、どの形も魅力的になりました。
今こうして、Kさんの奥様からお話を聞けたことで、私のイメージしていた形とKさんのイメージしていた形がうまくあてはまりました。
良かったです。
家具作りって、「こういう素材を使えます。」とか「ここにはこれがしまえます。」とか「こうすると掃除が楽ですよ。」とか、そういうアプローチの仕方もありますが、それよりももっと手前に「こういうふうに暮らせるかな。」とか「こういう時間を過ごしたいな。」とか、できることをお伝えするお話のなかでその人がその家具を迎えることでどう暮らしかたが魅力的にあるのかを一緒に考えてゆくこと、それが家具として一番大切なことだと思います。
こうして、できあがった食器棚は、キッチンと同じようにこの空間を明るく映す鏡のようになりました。
家具を使い始めてしばらくして、ご挨拶にお伺いした時、あらためてハッとさせられたのです。
ご主人はお仕事で奥様としっかりお話することができて、食器棚の感想や暮らしかたが今までとどう変わったのかなどをお聞かせ頂きました。(頂いたのに、メモ取らなかったので細かいニュアンスは忘れてしまいました・・。)
そうして、どういうふうに暮らしているのかをキッチンの周りをぐるりと拝見させてもらっていたのですが、すてきにトールペイントで仕上がった木製小物たちがある。そして、すてきな中小柄のレースもそこかしこに置かれている。
聞くと、奥様の趣味なのだそうです。そして趣味が高じて、レース編みもトールペイントもご友人に教える先生もされているのだそうです。
でも、家の中だとご主人もあまり興味を持ってくれなくなってしまったようで、作品が埋もれてしまっていて。
それは残念!
どこかで作品をもっと見せられる機会を持てたらよいなと思いつつ、もっと早く打ち合わせの時にこのこと気づいていたら、より食器棚にも良い影響を与えることができたのかもしれない、なんて思ったりして。
さり気なく使われているレースはとても美しくて、思わずほしくなってしまうくらい見とれながら、そんなことを思っていたのでした。
でもこういった作品たちがこの食器棚の白さにだんだんと色をつけて行ってくれるのでしょうね。
また作品を見せて頂ける良い機会がありましたら、お声掛け頂けたらうれしいです。
ありがとうございました。
タモ柾目ホワイトオイル仕上げの食器棚
価格:580,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は30,000円から)
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