色つくまでの楽しみ
「チェリーのセパレートタイプの食器棚のオーダー」
東戸塚 O様
design:Oさん
planning:Oさん/daisuke imai
producer:hiroyuki kai
painting:hiroyuki kai
最初のご相談は2017年の秋、今から2年前ですね。
ご入居が約半年先ということで、ゆっくり形を考えていくことができそうです。
頂いた添付ファイルを基にまずはその形を製作するとどのくらいの金額が掛かるのかを概算で計算してお知らせ致しました。
お知らせした金額を前提にお話を進めさせて頂けることになりまして、さっそくOさんこちらにいらして頂けることになりました。
冬が始まる頃にこちらにいらして頂いたOさんご家族。
お子さんはまだ小さくて、これから新しい暮らしが始まるのだなあ、と打ち合わせをしながら、少し懐かしく思ったのでした。
(我が家の娘たちはもうだいぶ大きくなってしまいましたので。)
そうして、奥様がお子さんの様子を見ながらご要望をお知らせくださいまして、その隣でご主人はおもむろにパソコンを取り出して、打ち合わせの内容をメモしていきます。
打ち合わせの方法はいろいろな形がありますが、こうしてお話している内容をすぐに書き留める方がいらっしゃるのだなあと珍しく思っておりましたら、実はメモを取っているのではなくて、私と奥様のやり取りで変更になっていく食器棚のかたちを図形でその場でレイアウトしているのでした。おもしろい打ち合わせでした。
こうしてご主人と奥様とで照らし合わせてまとまった形を後日図面にすることに。そうして、そのできあがった図面を見ながらいろいろと打ち合わせを重ねて一つの形にまとまっていったのでした。
で、打ち合わせにいらしてくださった時に、一つお話したことがありました。
それは、家具は必ずしも暮らしに必要なものではないということ。
家具が暮らしを楽しく心地良いものにさせてくれることは間違いないのですが、必ずしもその形がその場所になければ暮らしていけない、というものではない、というお話をさせて頂いたのでした。
結果として、急いで家具をそろえる必要はないのではないか、ということにOさんも思えることに。
それまではどちらかというと、家具とは、新しい暮らしが始まる前に揃えなくてはいけないもの、というイメージがあったのだと思いますが、よく考えると新しい家に移れば、内もカモが一新されるわけではありません。毎日の繰り返しから生まれた小さな変化がそこに現れるだけだと思うのです。
ですので、私としては、新しい場所での暮らしが始まる時こそ、おそこでの暮らし方、家族の動線、毎日に空気の流れとかそういったものを感じてから、どういう家具を自分たちが必要としているかを決めてゆく方が自分の身にまとえるような自然な形になるのではないかと思うのです。
そのようなお話をさせて頂きましたら、Oさんもしばらく奥様と相談して思い至ったのは、やはり住み始めてから、そして、私がお伺いするのも諸んきょの内覧会ではなく、祖み始めたその様子を見て採寸とアドバイスをしてもらいたい、ということになったのでした。
良いことだと思います。
そのようなわけで、半年先の春に納品する予定だった食器棚はもう少し季節が後ろにずれることになりまして、秋の始まる頃に(最初のご相談から1年が経とうとしておりました。)納品となったのでした。
設置は無事に終わり、さっそく使い始めてくださったところで、Oさんから一つ質問を受けました。
それは、チェリーの印象についてです。
光が当たる角度によってまだらに見えることがあるということだったのです。
たしかにチェリーやウォールナットなどの散孔材は、ナラ(オーク)やタモなどの環孔材に比べて、光沢があって、さらに塗料の吸い込み具合に多少ばらつきが出やすいので、まだらのように見えたりすることもがあるのです。
でも、それも使い込んで経年で日焼けをしてくると、もう少し全体がなじんでくるはずです。
そうなった時に表情がまた美しいので、そのあたりのご説明をさせて頂きまして、オイルを擦り込んできれいに焼けていくのを楽しんで頂くというお話をさせてもらったのでした。
そして、その約1年後の夏のクレミルの時、Oさんとお子さんで木工教室にご参加くださったのでした。
【夏のクレミル Oさん親子が作られたもの】
「どうですか。食器棚の様子は。」
「だいぶ良い色になってきてとても使いやすいですよ。」
ととても、安心できるお返事を戴いて、あらためてホッと致しました。
チェリー板目の食器棚
価格:480,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は35,000円から)