そばに居ます。

「ブラックウォールナットのお仏壇のオーダー」

糀谷　T様

design:Tさん
planning:daisuke imai
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:tsuyoshi kawaguchi

いつかもう一度会えると思っていた人ともう会えなくなると言う感覚に、かつてはたくさんの猫に囲まれていたのに病気や事故でみんな遠くへ行ってしまい、なかにはわざわざ私たちの前まで戻ってきて、顔を見てから息を引き取って逝く仔たちを見ていたためか、その感覚に慣れていたはずなのに、やはりぽっかり穴が空いたような気持ちになるのでした。
以前から治りにくいご病気とはお聞きしていたのですが、一度は元気になられたので、いつかきっと元気になってまたお会いできると思っておりました。だから、こういうことは、とても悲しいです。
でも、ご主人はそのような気持ちを表さず、ただ静かに穏やか微笑みながら、いろんなお話をしてくださいました。それが私にはとてもうれしくて、人と人がお付き合いしていくことのうれしさをあらためて知った気分でした。
過去に一度家具を作らせて頂いただけのお付き合い、と言ってしまえばそれだけなのかも知れませんが、私やカワグチ君にとっては、それはそれはとても思い出深い仕事であり、すてきな経験だったのです。
あのあと、すぐに奥様から次はこうしたい、ああしたいです、ととてもうれしそうなメールを頂いたあの時の気持ちを私はずっと思ったまま元気になることを願っていました。
だから、このようなお話を頂けるのは、とてもあり難く、とてもうれしかったのです。

お仏壇の全体の様子。

そう、お仏壇を作らせて頂いたのでした。
奥様がいつもそばで見ていてくれるような気がしてなりませんね。(笑）
それは、とてもとてもうれしいことです。

「妻は病気になる直前に食器棚を作ってほしいと言って計画していました。
結局、大きな家具は作れる状況ではなくなってしまいましたが、仏壇は私か妻の両親が最期まで持ち続けます。できればお気に入りの家具に入れてあげたいと思います。本人が気に入ってくれるか、もう聞くことができないのが残念ですが。
本当に、知る必要のなかったことかも知れないのに、余計なご依頼をしてしまい申し訳ありません。
もし、こんな事情でも快く引き受けていただけるならご返信いただければと思います。
ご検討、よろしくお願いいたします。」

正面から見た印象。中の灯りをつけると、とても美しい印象。

「取り付けていただいた仏壇は、昼間も良い感じでしたが、夜になって静かな中で少し明かりがこぼれているのも趣があって素敵です。
妻もきっと気に入ってくれることでしょう。
私と妻はかなり嗜好が似ていると思います。
妻と付き合い始めた頃は、それぞれのこだわりが強すぎて喧嘩になることもありましたが、一緒にいるうちにお互いの好みがちょっとずつ歩み寄っていって、最終的には80%くらいは同じ好みになってきていたのではないかと思います。ですから、最低でも80点はもらえるでしょう。
今後は、今日お話しした本棚か、3階のテレビの置いてあった棚も何とかしたいし、またお願いできるようにがんばりますね。
製作してくれた河口さんにもよろしくお伝えください。
ありがとうございました。」