KUMA鍛鉄工房さんへ
2020.07.15
横浜のKさんに、「ペニンシュラキッチンのガスコンロの奥にはオイルガードをつけたいのです。」とご相談を頂いておりました。
私たちのキッチンにはこのオイルガードというものをつけないことが多いのです。
ここにガラスの板が立ったり、アルミのレールが付いたりする印象が異質に感じてしまいまして。
でも、今回のKさんのオイルガードは鉄とガラスで瀟洒な印象に。
この形なら良い雰囲気にまとまりそうです。
そこで今回は、いつも独特の表情のハンドルを作って頂いているKUMAさんに制作をお願いすることにしたのです。
で、さっそくKUMAさんのアトリエに。
11年ぶりの来訪。うれしい。
あの時一緒に来たカワグチ君とスズキ君はとっくに独立しちゃって福岡と山梨で頑張っているので、今日はアキコとです。
KUMAさんあの時と変わらないいつもの穏やかな物腰で、いろいろと相談に乗ってくださいました。
「鉄が錆びていく様子はすてきなものなのです。」
「錆びると危なくなるのは肉厚の細いパイプだったりするのですが、こうして鉄の塊が錆びていくのに危ないことはあまりなくて、美しいですよ。」
私は経年劣化という言葉があまり好きではなくて、経年変化と呼んでいるのですが、錆って劣化だと思ってどこか遠くに感じていたのです。錆びてもろくなる、怪我をする、汚れるなどなど・・。
でも、今日、アトリエの前に立ってチャイムを鳴らす時にそのチャイムの上にあるKUMAさんの表札が見事に静かにきれいに錆びていたのです。
先ほどの言葉を聞いた時に、その表札が思い出されて妙にしっくりきて、今まで遠くに感じていたものが今すぐ触れたい距離になったのでした。もちろん、汚れるでしょうし、ざらつきは出てきます。
でも、静かに均一に茶色くなっていく様が美しく見えてしまったのです。
へぇ。
感覚って不思議です。