心地よさがひとめで分かりました。
「ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」
逗子 K様
design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:yasukazu kanai
逗子には時々来る機会があります。
そのたびに思うのですが、道が入り組んでいるものですから車ですとなかなか便が悪いところもありますが、暮らすにはとても心地良さそうだな、とそう思えるのです。
以前には駅前のカフェのカウンターやチェアとテーブルをひと揃え作らせて頂いたこともありましたし、海沿いの静かな集合住宅や戸建てに住む方々に、海を一望できる山の上住む方々に食器棚やキッチンを作らせて頂いたこともあり、何となく親しみがあるのです。
その逗子の海のそばに建つ古い集合住宅。
そこがKさんが暮らすことを決めた場所でした。
何度か前を通っていたことがあるのですが、ずいぶんと趣のある佇まい。
あとでKさんに聞いたら、建ってから45年ほど経つそうで。なるほど雰囲気があります。
オートロックもなくて周りに馴染んだ様子や低層で広い階段が取られた動線やお年寄りも若い家族もみんな混ざって賑やかに暮らしている様子など。
良い感じです。
これからの暮らしは、もちろん新しい一戸建てや集合住宅も素敵ですが、古い建物と環境をうまく活用して静かだけれど温かく賑やかな空気のある場所に住む、という考えがもっと広く当たり前のことになっていくのではないかと思っているのです。
住む場所に手を加えならが暮らしていくことが大きな価値があることだと感じられる日がもっと身近になると思うのです。
今あるものをより良いものにしていくことって大変なんです。
それは家具の修理の相談を頂くたびにそう思います。
新しいものを作るほうが早くて簡単に取り組めるって思えることが何度もあります。
古いものをきちんと活用できるようにするには、取り組む前にその様子を見て、対策を考えて、そして初めて取り掛かることができる。大変なのです。
でもそうしてよみがえらせたものが新しくできあがるものよりもその人にとってだけではなく、だれから見ても目に見えて大きな価値があったり、より実用性が増すものと判断できるものになれば、物事の考え方は変わっていきます。
それは特別大きなことでなくても良いのです。
さいわいなことに最近はキャンプだったり、DIYだったりと自分自身で何かを作ることが以前に比べて身近になっている時代だと思われます。
自分でできることを自分で行なうことで、ものを作ること、ものを使うことの大切さがより身近になっていると思うのです。
人って自分に関わっているモノやコトに大きく気持ちが傾いていくので、自分たちで手を加えたものが増えていけば、新しく作ったものを手に入れる喜びよりも、大きな思いが重なっていくのではないかと思うのです。
私たちもそういう考え方を持ちながらこの先のものづくりを考えていきたいと思うのですが、まだまだ勉強不足な点ばかり。
もっと頑張ってゆかないといけないなあと思う日々でございます。
さて、Kさんからご依頼頂いたのは、壁付けのキッチンと食器棚として使うアイランドカウンター。
ちょうど部屋の中心の、玄関入ってすぐの広い前室のようなフリースペースから歩いていくとぎゅっと狭めた場所がキッチンになっているという空間の緩急が感じられる間取りなのですが、まずはその玄関が心地よいのです。古い鉄扉を開けると細長く土間が打たれた玄関があり、その前日というのか広いフリースペースに小さなお子さん用のティピーが置かれている。
この自由だけれど家族がつながる空間がとても心地よく映ったのでした。
そこからリビングに抜けていく途中にキッチンがあるのですが、ここで急に空間が狭くなる。
そして、リビングに抜けるとまた広くなる。
何というか玄関で温めた空気がキッチンあたりで圧縮されて、リビングでボワンとこんもりした暖かな空気に変わるような印象。
不思議な空間です。
そして、そのキッチンは壁付けのキッチンと収納になっているアイランドカウンターで二列になっているのですが、このぎゅっと圧縮されたスペースに二列の家具たちが置かれていても「狭い」という感覚はなくて、ちょうど良い広さになっているのが不思議なところで、このこじんまりした印象がとても心地よいのでした。
こういうところは設計の妙ですね。
素直に気持ちが良いなあ、と思えるのでした。
でも、私が最初にお伺いしたのは、まだ工事着工まもなく解体後の室内がスケルトンになった状態の頃。
ここがこういう気持ち良い場所になるなんて思えていないで、ただバルコニーから見える緑が心地良い場所なのだなということが分かるだけの頃でした。
設計は鎌倉のエンジョイワークスさん。
お二人の設計士さんが現地での打ち合わせ時にいらしてくださって、たしかお二人とも同じお名前だったことがとても印象に残っているばかりで、その時は空間の魅力までは計り知ることができなくてすみません・・。
新たに息が吹き込まれた場所が気持ちの良い場所になったというのは本当に大きな魅力です。
かえって真新しいのではなく、サッシが古かったり、天井の納まりが昔の構造だったりすることがかえって魅力にもつながっていて、リノベーションのほうが価値がある、ということが分かる空間だったのです。
おかげさまでこうしてとても素敵な場所にキッチン納めさせて頂くことができました。
ありがとうございました。
「イマイ様
この度は大変お世話になりました。
逗子のKです。
先日リフォーム完了のお立会いを終え、キッチンが設置されているのを見てきました。
率直にとても感動しました!!
存在感のあるキッチンとカウンターにしてもらい、ありがとうございました。
キッチンが中心にある部屋なので、イマイさんにお願いして本当に良かったです。
これからの生活で使っていきながら、味を出していければと思っています。
また、イマイさんとまたお会いできるのを楽しみにしております。
ありがとうございました。」
そうして、無事にお引き渡しが終わってうれしいお便りを頂きました。
私はなかなか都合が合わなくて、納品の時はスタッフのみんなに任せて、お引渡しの時も立ち会えなくてKさんとお会いすることができなかったのですが、ようやくこの度その場所をその形を見ることができました。
この先は何かあればいつでも声を掛けてくださいね。特に無垢材を多く使った形ですので動きが出てくることもあると思います。
静かに長く続くお付き合いをしてゆけたらと思っております。
ありがとうございました。
天板 | ステンレスバイブレーション |
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扉・前板 | ナラ節アリ無垢材 |
本体外側 | ナラ節アリ突板 |
本体内側 | ポリエステル化粧板 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
ナラ節アリ材とステンレスバイブレーションの壁付けキッチン
価格:950,000円(制作費・塗装費、設備機器費用は別)
ナラ節アリ材のアイランドカウンター
価格:620,000円(制作費・塗装費は別)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は100,000円から)