家具と思い出

「キッチンオープンシェルフのオーダー」

鎌倉 I様

design:Iさん
planning:daisuke imai
producer:tatsuya suzuki
painting:tatsuya suzuki

Iさんより
「再来週の週末ではきっと完成してしまっている頃でしょうか?
もちろん作業を見せてもらいたいといっても、確認したいというよりはわざわざ注文で作って頂くという初めての経験なので、機会があえばその過程を一度見てみるのもいい思い出になるかなー、ということですので、作業をそれに合わせて頂くことは全く必要ありませんので、お気になさらないで下さい。」

カバのキッチンオープンシェルフ

壁の出っ張りに幅を合わせただけのシンプルな棚ですが、そこには見えない思いがあるのです。

先日、メールをくださったIさんがいらしてくださいって、こうおっしゃってくださいました。
「思っていた以上にきれいにできていてとても嬉しいです。」
これはよく皆さんに言われる言葉です。私たち作り手側からすれば「思っていたよりも」という言葉を聞いてもっと良くない仕上がりだと思われていたのかななどと、少し淋しく思ってしまうこともあるのですが、使う人から見たらやはり当然のことなのでしょう。手元にあるのは完成した形の図面や小さなカットサンプルや、カタログで決めた取っ手の写真などくらいで、あとは私たち作る人と使う人の頭の中にボヤッとしたイメージがあるだけですから。
私はそれをできるだけ分かってもらえるようにぼんやりとしたゼロの状態から「ここがこうなるとこうで、あっちはこんな感じになって・・・。」と、完成する形の様子をいろいろとお話しをします。
先ほどの言葉のあとに、Iさんはこうおっしゃいました。
「その出会った時から家具を取り付けるまでのすべての過程とそのできあがった家具の中にある価値を大切にしたいのです。」

カバのキッチンオープンシェルフ

幅がとても狭いため、作りは簡単に見えても、大人の大きな手で内部の細工をしていくのが意外と大変だったりするのです。

できあがった家具はとてもシンプルなものでした。物をしまうことではじめてその存在がきわだってくるような形です。Iさん曰く「ほんとに最初から作りつけてあったような感じ。」という家具です。
住み始めた当時から気になっていた妙な凹凸を持ったこのキッチンスペースには、「棚を作ろう。」とずっと考えていたそうです。それからIさんは都内の家具屋さんをいろいろ見て回ってイメージは固まったのですが、寸法が合わないと言うことが引っ掛かっていたのだそうです。そこでふと、オーダー家具という言葉に行き当たり、私たちと出会うこととなったのです。

カバのキッチンオープンシェルフ

また、こういうシンプルな棚は使う人の好みや気持ちがそのまま表れます。だから、Iさんがとても丁寧にこの家具を使ってくださっていることが良く分かりました。

Iさんのお住まいは鎌倉で、また、家具の作りも本当にシンプルでしたので、さらに、Iさんと私たちが同じ年齢だと言うこともあっていろいろと気が合いまして、家具の打合せの時から家具の取付の時まで妻も一緒に行くことになりました。
取付に伺ったまでは良かったのですが、その日の私の気がゆるんでいたのかうっかりとしたことが起きてしまいました。
Iさんのお宅に伺う前に電話で連絡を取って、「さぁ、これから取り付けだ。」という時に車をバックさせたらよく後ろを確認していないでさがったものですから左の後ろのタイヤが縁石に当たってしまいました。ゴチンと大きな音が車の中に響いたのですが(たぶんちょっと当たっただけだから大丈夫かな。)などと軽く考えていたら、同席していた妻に車が動くたびに「ゴトゴト言うよ。」と言われて、えっ!と思ってタイヤを見たら縁石にぶつかった部分のタイヤのゴムがベロッとめくれてしまっていて・・・。
何事かと思って出てきたIさんも車がパンクをしているのを見て「パンクしちゃったのですか!私はあのぶつかった音を聞いたあと、向こうで車が下がってくる音を聞いて、最近の家具屋さんは家具の搬入がしやすいように家具を下ろす時に車高が下がるようにサスペンションが特別になっているのかと思いましたよ。」と言っていました。聞くと、車がバックしてくるときにシューシューとエアの漏れる音がずっとしていたそうです。我ながら情けないことです・・・。
取付自体は順調に終わったのですが、タイヤの交換が大変で(工具のある位置がなかなか分からなかったり、ナットが堅すぎて外れなかったり・・・。)しまいには工具が見当たらないからIさんの車載工具まで借りることになりそうだったり(工具はよく探したら車の下の方にあったのですが・・・。)こっちの方が大変でした。そのあと、Iさんの奥さん手作りのケーキを二人でご馳走になって(打ち合わせのときもご馳走になりました。)、お終いには、Iさんの田舎で作っているお米まで頂いてしまって(とてもおいしかったです。)とても素敵で不思議な一日でした。

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

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