渡ってきた風

「ブラックウォールナットのテレビボードと本棚のあるデスクのオーダー」

練馬 J様

design:Jさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:iku nogami

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Jさんから頂いたテレビボードのスケッチ。


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Jさんから頂いた本棚のスケッチ。

「フリーハンドイマイ御中
はじめまして。「オーダー家具」で検索して御社ウェブサイトを拝見しました。
お見積の依頼です。
最初は市販の家具で、思っていたのですが、扉の仕様など思うようにならないところがあり、オーダーをメインにやっていらっしゃる数社にも問い合わせて決めることにしました。
他社様へもお声かけしています旨、ご了承下さい。色々相談できる、経験豊富なところがよいなあと思っています。

○住所:東京都練馬区の新築マンション
○引き渡し:2017年1月17日
○希望納期:2017年1月20日ごろ(応相談)
○内覧会:12月予定

(1)TVボード[予算:40万くらい]
壁の幅が狭く、結構制限があります。
図を作成しましたのでご確認下さい。こちらについては、打ち合わせで色々お話させていただき、よく考えて決めたいなあと思っています。

[収納物(上置き含む)]
・サウンドバー:SONY[HT-ST9]
・テレビ:SONY[KJ-X8500D]
・PC:サイズW207XH464XD504mm(※ケーブル除く)
・HDDレコーダー
・PS4
・Jcomモデム
・ルーター
・空きがあればゲーム機とリモコンなど

サウンドバーはTV前でも構いませんが、TV鑑賞に干渉しないことと全体の高さを抑えたいと思っていますので、良い形がありましたらご提案いただければ幸いです。
添付の図は案でして、素人考えですのでこちらを基に一旦お見積をいただき、打ち合わせでつめていきたいと思います。

・扉:ルーバー
・素材:ウォールナット(無垢材)
・背板は必要でしょうか? なければ穴の位置も考えなくてよいし、色々やりやすいように思います。(図は背板のあるものです。一部optionとしてない形の記載があります。)
・サウンドバーの段には荷重に耐えるための支えを記載しています。不要でしたら削除可、他の形がよいようでしたら変更可です。
・ボードの下部は50mm取っていますが、巾木の実寸に合わせていただければと思います。
・パソコンはTVの後ろに置きますが、スタンドの上部に置く形になるので、何かしら台が必要になると思います。こちらも併せてご提案いただければ幸いです。(今回のお見積には含めなくても構いません)

(2)本棚&デスク[予算:20万くらい]
図を添付します。ケーブルを通す穴が必要になると思っています。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

テレビボードの全体の様子。家電はすべて黒でまとめられているので、とても引き締まった印象に仕上がりました。ウーファ部分はお隣がしないように床に直に置けるような作りにして、サウンドバーはテレビの下から正面に向かって音が回り込むような配置で。テレビの後ろも工夫されてできているのですよ。


ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

本棚の全体の様子。本棚もとてもシンプルな形。天板の身板目無垢材の幅接ぎで仕上げていまして、他は板目突板で仕上げております。間取りが少し変わった形をしていて、この本棚デスクを設置するためにあるような場所に見えてしまいます。

素材は無垢材を考えていますが、見栄え以外の違いが判りません。突板との違い、突板の利点がありましたらご教示いただけますでしょうか。
不明な点などありましたらご連絡下さい。
どうぞよろしくお願い致します。」
私たちの家具作りではいろいろな素材を使うことが多いのですが、主に突板を使ってキッチンや家具を作ることが多いです。それは制作にかかるコストが大きく違ってくることが大きな要因ですが、無垢材は製材したあとでも調湿を繰り返すため、どうしても木の動きを抑えにくい部分もあったりします。
もちろん突板を使って制作してもそのように動くことももちろんあります。
それが木の良いところであり自然な表情でもあるのですが、生活していくうえで使い勝手に支障が出てしまうこともあったりします。
床暖房が設置された空間や暖炉のある空間だったり、エアコンの風が大きく当たる場所に設置されていたりすると、木の表と裏とで大きく湿度が変わってきます。
以前によく乾燥された材と思ってショーケースを作ったことがありまして、それをパン屋さんに納品したのですが、パンの釜の熱気だったのでしょうか。
納品して数か月で、「急にガラスが割れました。」と言われてしまって見に行くと材が縮んでガラスを圧迫していたということもありました。
私の見る目が良くなかったもので、作り直させて頂いた苦い経験があったりするのですが、木はそれほど動きますので、なるべく使いやすさと作りやすさとその場所に合わせて、適材適所と心掛けて作るようにしております。
そう考えると、うすい無垢材を積層して反りや歪みを抑える工夫が施された突板をメインに考えていくと不便が起きにくいのではないかと考えているのです。
その代わりに、耐久性が必要な天板や、交換可能な扉や引き出しの前板などは突板よりももっとダイナミックな木の動きというのでしょうか(決して迫力があるわけではないのですが、その木が過ごしてきた時間が木目に現れているようなその表情や動き)が分かるように表部分に無垢材を使うという形で作らせて頂くことも多いです。

かえって、突板はそのように反り歪みが少ないように整えられた材ですので表情も整ったもので作られていることが多いのです。
ですので、同じ表情が連続してできているものが一般的な突板となります。
幅20センチ~30センチくらいの1枚の単板(うすくスライスした無垢材で辺材から心材のグラデーションが良く出てとても良い表情のものです。)をうまく色柄合わせるように心材を主に使って幅90センチや幅120センチの板を作っていくのですが、きれいな表情であるがゆえに整然としすぎてしまうと感じることもあります。
最近は、「クラフト」という意識が高まっていて、整然とした表情よりも木の個性が出ているような表情を好む方も増えてきました。そのためか、節がある素材が好まれたり、反りや歪みが一つの表情と捉えてくださる方もいらっしゃいます。
と、いろいろな見せ方があるのですが、今回のJさんの家具はブラックウォールナットの板目(木目が山なりになっている材)の整然と並んでいる一般的な張り方の突板を使って作ることになりました。
そのような感じでここまで長々とは描かなかったのですが、私なりのスケッチを添えて、作り方と金額をお知らせしたメールをお送りしたのでした。

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あらためて送らせて頂いたテレビボードのスケッチ。


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あらためて送らせて頂いた本棚のスケッチ。

そうしましたら、「今回は別の家具屋さんにお願いすることにしました。」というお返事でした・・、あら、残念です。
やはり価格差が大きかったようで、私たちの努力不足ですね。
金額では他社さんよりも高くなってしまうことが多かったりして、残念な気持ちでお断りのご連絡を頂く皆さんも今までいらっしゃいましたので。
でも、相見積というのは良いことだと思います。特にオーダー家具やオーダーキッチンというものはなかなかコストが分かりづらい部分もありますので、いろいろなメーカーさんを比較してそれぞれの得手不得手をよく理解して頂いた上で判断して頂くというのは良い選択方法だと思うのです。
そのようなわけで今回は残念ですが、そのメーカーさんとはインスタグラムでフォローしあっていたこともあったので、安心してお任せできるところだと思ったのでした。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

細かいデザインの考え方として、本体の手前に扉や引き出しをつける形(アウトセット)と、本体の内側に扉や引き出しをつける形(インセット)と大別されます。個人的には少し古風に見えるようなインセットが好きですが、今回は本体の手前に扉が付く形。この場合、正面に見える側板の前面と扉面に揃えるかどうかでも印象が変わってくるのですが、今回はそのまま奥に引っ込んだ形。天板だけは扉よりも少し出す形にすることで、奥行の印象がまとまって見えるようにできたと思います。

ところが数日後、あらためてJさんからご連絡が。
どうも素材について意見の相違があったようで、イメージと異なる形になってしまうということからそのメーカーさんへの依頼はお断りして、あらためて私たちに連絡が届いたのでした。
紆余曲折というのはあるものですね。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

納品直後の様子。テレビが置かれて隠れてしまっているのですが、天板の上にはコの字の台が置かれています。 これはテレビのベースに干渉しないようにしつつ、パソコン本体をテレビの奥に隠してしまうための台なのです。不思議なアイデアです。

それで再びお話を進めさせて頂けることになったのですが、マンションの内覧会の予定日をお知らせ頂くともう既にほかの予定を入れてしまっていたものですから、内覧会以外に入室するのは難しいだろうからやはり対応可能な他社さんとでお話を進めて頂いたほうが良いのではないだろうかと少し心配しておりましたら、どうやら再内覧の日でも私たちも入室可能ということになりまして、無事に家具を作らせて頂けることになったのでした。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

こうなるとパソコンが置かれていることは分かりませんね。今回の格子扉は格子の幅が13ミリ、隙間が7ミリという見せ方にしています。裏面にはホコリが入りにくいようにアクリルを入れた形にしています。もちろんリモコンは効きますよ。

で、最初にJさんから頂いたスケッチをご覧頂くと分かるのですが、ご主人は外国人さんで(国名をお聞きし忘れてしまった・・)今回のメインのデザインはご主人が行なっています。ですので、何となくお部屋の印象が海外から吹いてきた風のように洗練された印象に映ります。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

扉を開けた時の印象。キーボードやAV機器がきちんとしまえるサイズで設計しています。

形はとてもシンプルです。
機器類をしまう部分はガラスや格子のデザインを希望されていて、今回は格子扉に。
先ほどのお話に戻りますが、「格子扉も突板で作るのですか。」と聞かれることがあります。
突板合板は積層してできているものなので、細かな部材作りには強度不足だったりします。そこで、格子扉やガラスを囲う框扉は無垢材で作っているのです。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

先ほどのお話に合ったように天板だけは扉よりも少し手前に出した形の納まりの様子。また手掛けの印象はこのような感じです。

オープンスペースにはウーファとサウンドバーが入るので、印象が引き締まって見えます。
本棚もスケッチや図面を見ると味気ないくらいにシンプルなのですが、こうしてそこで暮らす人の物々が入ると洗練されて目に映ります。
こうして、シンプルで美しい形になりました。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

テレビの背面の様子。

「イマイ様お世話になっております。
ご連絡が遅くなりましてすみません。
日曜日の午後は家にいることが多いので、お近くにいらっしゃることがありましたら是非ご連絡下さい。
木目の美しさをとても気に入っています。大切に使っていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。」
Jさんご家族にもこうして気に入って頂けてとてもうれしく思うのです。

ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

こちらは本棚。本棚を作る時にこういうふうに縦の仕切り板を入れるかどうかを皆さんにお聞きします。 広く使いたい、ということで仕切り板をなくす形ももちろんありますが、そうなると多少板がたわんだりします。また、今回のようにサイズが決まったものばかりを入れる場合は仕切り板が無くても良いかもしれませんが、右はB5、左はA4などのサイズを変えた形でフレキシブルにしまいたい、という場合は、仕切り板を入れることで左右の棚の高さを変えることができるので、使い勝手は良くなります。見た目は多少賑やかになりますが。


ブラックウォールナットの本棚とテレビボード

デスクの様子。天板の下には小さな引き出しを設けています。このくらいのサイズの天板でしたら良いのですが、もっと大きなデスクに引き出しをつけたい、というお話を頂くこともあります。つけることはできるのですが、長い目で見ると天板を倉しっかりした無垢材で作っても多少中央に向かって板はたわむのです。だから引き出しの代わりにしっかりとした幕板を入れたいなあと、そういうご相談が来ると私は思ってしまうのです。そして、幕板をつけつつ、小さな引き出しをつけてしっかり強度が確保できる形をきちんと考えておかないといけないな、といつも思うのです。

ブラックウォールナットのテレビボード

価格:480,000円(制作費・塗装費)

ブラックウォールナットの本棚のあるデスク

価格:350,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は35,000円から、取付施工費は30,000円から)

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