花差し込む
「ナラ板目とステンレスバイブレーションのオーダーセパレートキッチン」
調布 S様
design:Sさん/内田雄介設計室/daisuke imai
planning:内田雄介設計室/daisuke imai
producer:hiroyuki kai
painting:hiroyuki kai
もう8年ほどになりますね。
内田さんからこうして家具制作の依頼をいただけるようになってから。
最初はご自宅のキッチンでしたね。
それからも、キッチン、キッチン、時々食器棚、キッチン、キッチン、時々玄関収納、キッチン、キッチン。
キッチンが多いのは、みんな内田さんのキッチンが好きだから。
今回のSさんも、こうメールに書き添えてありました。
「内田雄介設計室さんに調布にありますマンションのリフォームをお願いしております。
内田さんのご自宅を拝見し、とても素敵なキッチンでしたので、同じ雰囲気のキッチンを、と考えております。」
ありがとうございます、内田さんのキッチン素敵ですものね。
内田さんのキッチンの特長としてはオーク材を使うこと。よく北欧テイストの雑誌などで内田さんの空間が特集されることが多いのですが、やはり明るめの色のバランスが好まれるのでしょうね。
だけれど、今回のSさんのお話を最初に頂いた時は、あれって思えるような原案でしたね。少しハードな印象というのでしょうか。
節のあるオーク材とステンレスの組み合わせで、室内空間にはアイアンでフレームを組んだ内窓をつける形のパースを見せてくださいました。
なるほど、内田さんもこのようなテイストで空間をまとめることもあるのだなあ、と思いながら頂いた資料を眺めていましたっけ。
その人の色、があるってとても強いことだと思うのです。
内田さんの作品を見ていると、白い壁にオーク材の明るい印象が映えて、とても清涼感の合う空気が通り抜けていく印象をいつも強く感じるのです。
以前に作らせて頂いた「やさしい毎日」八王子のOさんで少し個性的な形にした時でさえもやっぱり清涼感のある印象が強く表れていて、とても気持ちが良い場所でした。
翻って、私たちの作る形に色はあるのだろうか・・、ってよく自問するのですが、やっぱり自分じゃ分からなくて。
皆さんは、「イマイさんらしさはありますよ。」と言ってくださって、ひとつずつそのポイントを挙げてくださるのですが、そのどれもがほかの家具屋さんでもよく見られる形だったりするので、不思議に思うのです。
ただ、自身として心掛けているのは、「あまり飾らない」ということは心掛けています。
木はそれぞれが持つそのままの色でできれば仕上げたいし、必要以上に華美な装飾も苦手です。
というか、必要なことだけを形にしてなるべくシンプルで、ずっと馴染む形でありたいなと思っています。
なぜステンレスカウンターを浮かせるのか、なぜ引き出しがゆっくりしまらないといけないのか、なぜワークスペースをその広さにしないといけないのか、なぜコンロをガスではなく電気にするのか・・。
けっこう大変だと思うのです、家具やキッチンを考えるのって。
だからもしかすると、せっかく相談くださっても、(本当はもっとお任せしたいのに、いろいろ考えないといけないから大変で・・。)と思って、お話を取り止めされる方も少なくないと思います。
でもそこで暮らしていくのはその方ご自身なので、やっぱり大切なのは家具を作ることだけではなく、その手前のその家具を作るためにどのように暮らしを思うかなのではないかと思いますので、いろいろと聞いてしまうのです。
でもそうすることで生まれる良さってたくさんあって、いろんな角度から家作りやキッチン作りを見れるようになると、今まで暮らしの中でしてきた作業時間が、楽しみな創作の時間に変わることもあります。
そういうことに気付いてほしいと思って、相変わらずなぜなぜと聞いてしまうのです。
それが私たちの色のひとつなのかもしれませんね。
で、Sさんのお話。
「イマイさん、今度僕のアトリエでSさんと打ち合わせすることになりましたので、キッチンの詳細についてイマイさんとも打ち合わせをしたいと思っておりまして。」と内田さんからお声掛け頂いて、さっそくアトリエにお伺いしました。
さて、どのような形になるのかな・・・。
「はじめまして、フリーハンドイマイの今井大輔と申します。今日はよろしくお願い致します。」
とご挨拶させて頂いて、さっそくお話を始めます。
いつも内田さんとお話を進める場合は、内田さんが全体のイメージを整えてくださいながら細かい部分を私が整えて考えていくことが多く、今回もそのようにしてお話を進めていったのです。
で、最初に内田さんが考えていた形がどのような空間になっていくのでしょうか・・。
と思っていると、やっぱりSさん、内田さんのキッチンが好きだったのです。
今回内田さんが、こういう見せ方もステキなのではと考えていた少しハードな印象はSさんの気持ちとは少し離れていたようで、やっぱり温かな内田さんの空間を思い描いていたのでした。
最初のミモザの写真を見るとその温かさがよく分かります。
内田さんもニッコリしながら、そうですね、ということで、いつものテイストで方向性をまとめていきます。
細かい使い勝手などは私のほうでアレンジさせて頂いて、ひとつの形がまとまりました。
マンションでこのような空間になるなんてどんな場所なのだろう。
以前、「土間」の綱島のZさんの時もそうでしたが、集合住宅とは思えないような、風が心地よく流れる間取りでした。
今回もたのしみですね。
そのご新居となる集合住宅が建つのは調布です。
調布は、ここから少し距離はあるのですが、以外と家具を作らせて頂いたお客様が多く住んでいらっしゃって、ちょっと身近に感じる町です。
ただ、今回のSさんの住まいは大きな国道沿いに建つマンションで、なかなかこのあたりには足を運んでいませんでした。
そして心配なのは、交通量が多いですので、搬入です。
駐車場もコンパクトなので、車を余分に止めて置くスペースもなさそうでしたから、うまく進めないとね。
また、各住戸へのアクセスの方法が独特なのもこのマンションが築年数が経った今でも人気がある理由なのかもしれませんね。
その分やっぱり運びづらいのですが。
その中でも一番の心配がステンレスカウンターの搬入でした。
古いマンションでしたのでエレベーターが少し小さかったので、おそらく入らないだろう・・という印象だったのです。ですので無理ならば7階でしたから3人でどうにか頑張って階段で運ぼうかなと覚悟していたのでした。
お話は変わりますが、リフォームで私たちが難しいと考えているのはスケジュールです。
新築のように十分な工期がないことが多いので、仕上がり寸法を見込んで作っていくことになることが多いのですが、それがなかなか怖くって。
私たちがまだ今のようにいろいろな皆さんから家具やキッチンのご相談を頂く仕事を多く手掛ける前の頃は、工務店さんや内装屋さんからお仕事を頂いていたことが多かったのです。
そういう場合ってなぜだか結構予定してる寸法通りに仕上がらないことが多かったりするのです。
それで途中から寸法の変更依頼が入ってきたりして、仕事がはかどらないことがよくありました。
今のような仕事の形態へと変わることができたおかげでそういうロスを減らすることができたのですが、リフォームは現場を解体してみないと分からない部分があったりします。
作り始めちゃってからどうしても現場で寸法を変えられない部分も出てくることもあります。
それが怖いので、私はなるべく現場の寸法が確定できるタイミングから作り始めたいと思っていて。
今回も解体時に一度現場を確認したのですが、やはりどうしても調整が必要な部分が出てきたりして、ああ、まだ手を付けなくて良かったなと思える部分もありました。
でも、そうなると制作期間が限られてきます。
遅くスタートしても納品の予定は決まっているので、のんびりとはしていられず、いつもそのあたりのバランスをひやひやしながら見ているのです。
今回は、内田さんと工務店の市丸さんと私とで、躯体の状態にそのまま墨出ししてくれたのでうまくいきそう。
ただ、市丸さんがちょっと心配していたのが、遮音等級の高いフローリングを採用しなければいけないため、クッション性が高いフローリングだったので、そのままキッチンを据えちゃうと安定しないんじゃないかって心配してくれていたのです。
そこでキッチンが置かれる部分は硬い合板を敷いて、ちょうど床面が露出するあたりでクッションフローリングと切り替えたい、ということで、かなりシビアな墨出しとなりました。
そのおかげできれいに切り替えはうまくいったのでした。
そのような感じで、どうにか現場に入れる目途がついて、制作のほうもどうにかスケジュール内に作り上げることができまして、いよいよ設置工事です。
交通量の多い時間帯をどうにかかいくぐって、市丸さんが管理組合さんにお話を通しておいてくれたおかげで、搬入時の駐車スペースも確保できて、運よくエレベーターにもカウンターが入ったのでした。(なぜだろう)
そうして取付も3日間ほど掛けて無事に完了して、あとはお引渡を待つばかりだねっと思っていたら、1つ問題発生。
もともとあったキッチンの位置から、今回はアイランドタイプのシンクにしたので、給排水の位置をけっこう振ったのです。
そうなると水勾配を取らないといけない関係から配管が床下だけだと納められないことに。
特に古いマンションなので、床の捨て貼りが無くて(なのでクッションフローリングを採用していたのでした)、床に下に這わせられるギリギリのところで転がして振ったのですが、シンク下でどうにも20ミリばかり配管が出ちゃう。
私たちのキッチンはシンクに下にフローリングを見せた状態でゴミ箱スペースを採ることが多く、今回のSさんもそのような形にしていたのでその部分で給水給湯管が出っ張ってしまうのでした。
そこで急きょ板を敷いて一段上げる形で対応することに。
ゴミ箱を奥野にフローリング続きではなく少し高さが上がる形になってしまったのですが、ゴミ箱はキャスターの動きが軽いものを使ってくださっているので、ほぼ不便なく使えています、と後からSさんからコメント頂けて、内田さんと市丸さんも私もひと安心。
すてきな空間ができるまでにはいろいろあるのです。
でも、こうして無事に心地良い空間ができあがったのでした。
転居から1ヶ月ほど経ち生活もだいぶ落ち着いてきました。
製作頂いたキッチン、快適に使わせて頂いています。フリーハンドイマイさんにお願いし本当に良かったです!!
最近はコロナで外出を控えることも多いですが、リフォームした部屋のおかげでおウチ時間を楽しめています!!
それでは今後ともよろしくお願い致します。」Sさん、内田さん、ありがとうございました。
天板 | ステンレスバイブレーション |
---|---|
扉・前板 | ナラ板目突板 |
本体外側 | ナラ板目突板 |
本体内側 | ポリエステル化粧板 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
ナラ板目とステンレスバイブレーションのオーダーセパレートキッチン
費用についてはお問い合わせくださいませ。