シャープなデザインよりも愚直で美しい・・
「ナラのダイニングテーブルとキッチンアイランドカウンターのオーダー」
葉山 Y様
design:Yさん
planning:daisuke imai
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:tsuyoshi kawaguchi
「度々webを拝見させて頂いてます。良い仕事をなさっていて素敵だなと思います。
現在建築中の自宅用にダイニングテーブルを探しており 、無印さんのオーク無垢やアクタスさんのセミオーダー等検討しましたが、 形状や天板の厚みなど今ひとつでした。金額に限りが有るので躊躇していましたが、とりあえずご相談ということで書き込みをさせて頂きました。
それほど広くないLDですが、できれば長手方向に3人づつ座れる 大きさ(2200ぐらい)を希望しています。
椅子はYチェアになる可能性が高いです。
フローリングがメイプルの無垢材です。最終的にオイル仕上げとしたいと思います。先日貼り終わったばかりですが,無塗装のそれはかなり 白い印象です。
キッチンなども造作でシナ合板の面材です。(多少色を入れるかも知れません) テーブルはあまり床の色に合わせることなく オーク材オイル仕上げとかの色味ではどうだろうかと思っています。椅子は例えばウォールナットなどを選んで メイプルからウォールナットに至る木のグラデーションがキレイに できれば素敵だなと思っています。
適材のご提案、お見積りをお願い致します。
傷がついても味になる。そんな無垢材のテーブルが好きです。同じ無垢でも材の間隔の狭い集成材は安価なものがありますが それでは満足出来ないんです。無印さんの無垢テーブルは雰囲気や金額面などは 希望に近かったのですが 脚が比較的内側のデザインでした。天板の端にある必要はないのですが 普通に良いバランスで収まっていればと思います。」
そういうメールを頂きました。雨が降り始めようとする6月の半ばのことでした。
「ふぅーん。」何だか素敵なメールです。なにが素敵って文章がです。文面に優しさというか柔らかさというか、そういうものが感じられます。そういう文章って読んでいると「ふぅーん。」って気持ちになるのです。
極端なことを言えば、テーブルなんてよほど独自のデザインがない限りは、サイズが合えば同じような形はたくさんあるわけで、うちじゃなくてもどこで購入しても良いわけです。今なら、どこのインテリアショップでもオーダーでテーブルを作ることを始めてたりもするし・・。
でも、この文章を読んでいると、何となくうちを選んでくれた感じが分かるのです。
なんとなく歌を聴いているかのような・・。
Yさんのお便りはまだ続きます。
「材料、仕様によっては今回の予算でも可能性有りという回答をいただき嬉しく思っております。
他のお客様のテーブル、良い感じですね。
今井様のご自宅のテーブルも薄い天板に、先細りのテーパーが掛かった太い脚がイームズの椅子に合ってますね。
デザインは色々な答えが有るので明快にこれだ!とはまだ決められませんが天板は厚めが望みです(予算ありきですが)
シャープなデザインよりも愚直で美しいというか…。
食事だけでなく、様々に活用出来る大テーブルが理想です。
もしも長さ2400、奥行き1000位の大テーブルが単独で置けたら幕板よりも天板が大きいデザインも良いと思うのですがLDKで4.25間X2間(リビング側2.5間)という狭めの空間なので(天井も低い)キッチンカウンターに付けて置かないと空間が厳しそうです。
そんな空間なので2200だと大きすぎる気がしていますが2000だと物足りない(本来充分な大きさなのですが)とも。
予定では壁、天井は水性ペイント仕上げ。
色は白ですが、ややアイボリー掛かった白を考えています。
天井が低いので,床と壁,天井は余りコントラストをつけない方向です。キッチンは造作でキッチントップはステンレス。面材はシナベニヤ(オイル仕上げ?)
カウンターキッチンも材はシナですがオイルなどでやや茶色に着色と考えています。天板はグレーっぽい御影石などを考えています。ダイニングテーブルはこのカウンターに付けて置くつもりです。(前述したように空間が狭めなので)・・・」
「ふぅーん。」
何度かメールでやり取りをさせていただいて、天板の厚みを42mmにするか、27mmにするか、脚をテーブルの端につけるか、一般的な入り込み寸法にするか、それとももっと思い切って内側に入れてしまうか、いろいろ悩みながらひとつの方向が決まりつつありました。その打ち合わせの中で、もうひとつご依頼いただいたのが、キッチンカウンターです。当初は建築工事で進める方向でしたが、キッチンと同じシナを使った仕上がりでは、ダイニングテーブルとのバランスが取りづらいのではという思いがYさんの中にあって、(カウンターにテーブルをくっつけて使う予定なのでその違和感が顕著に現れるのではないかと・・、)それで思い切ってダイニングと合わせて作ろうと思い至ったのだそうです。
そうして、オーダー頂けることが決まったダイニングテーブルとキッチンカウンター。その細かい打ち合わせをするために、Yさんがショールームに来てくださいました。
いろいろとお話を聞きます。家具のこと、インテリアのこと、建築のこと。穏やかな話し方の中にYさんのひとつの方向があって、それが聞いていて楽しいです。それから、具体的に素材や塗料のお話、天然石についてどんな石種のものにするかなどお話しさせて頂きました。
さあ、形はほとんど決まりました。
Yさんのお宅は、葉山の丘陵地帯にありその丘のてっぺんあたりに建つ家で、詳しくは、設計をされたi+i 設計事務所さんのブログで。
さっそく採寸をしてきて、搬入ができるかどうかをチェックしてから、製作に入ります。
今回も、製作は河口君が担当。どうも時期的になのか、大きくて複雑な収納は寺井君が担当して、無垢のテーブルは河口君が担当することが多くなってきます。その分、手馴れてきてはいるのですが、この前寺井君に「自分も無垢のテーブルを作りたいですねえ。」と相談されたのに・・。
今回のテーブルは、幅900mm、長さ2200mm、厚み42mmの天板。それに4本の脚をつけて、左右の端から190mmずつ内側に入れたデザインです。
キッチンカウンターは、ニューインパラという御影石。カウンターの背板や側板は5mmの厚みのナラの無垢材を張ったパネルにしています。全て無垢材で作るよりもコストを抑えることができ、軽くて反りの起きにくい作りにすることができます。
増設したコンセントのカバーもナラ材で作っています。
天然石の使った以前の失敗(この時は、Mさんの天板に大理石を使ったのですが、麦茶や水が石の中に染み込んでしまったのです。ツルツルの石ならシミにはならないと勘違いしていた私たちは、慌ててしまいました。この時、Mさんと一緒に私たちはようやく石はシミになる素材だと理解したのでした。)を教訓として、今回は、コンパウンドで表面をきれいにしてから、その時に石屋さんから教えてもらったコート材を塗布して(木材の塗料で言うワックスのようなものです。)完成。
納品当日は、早くも秋の長雨に突入したようなお天気でしたら、運良く搬入の時だけ雨が上がり雲が少し晴れて、それを見た私たちのモチベーションも上がり、私と河口君と鈴木君とでエィッ、ヤァッと一気に運び込みました。予定していたワインクーラーの設置がギリギリで冷や汗をかきましたが、どうにか無事設置完了。
Yさんにもほんとうにとても喜んでもらえて、帰りの車内は雨の道程でしたが、私たちの心は晴れやかでした。
ナラのダイニングテーブル
価格:380,000円(制作費・塗装費)
ナラのダイニングカウンター
価格:280,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から)
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