the 10th
「ナラ柾目の幕板のないダイニングテーブルのオーダー」
大和 K様
design:Kさん
planning:Kさん
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:tsuyoshi kawaguchi
大変苦労をした、いえ、大変自分にとって勉強になった仕事である大和のKさんのオーダーキッチン。あれから1年半が経ちます。そのKさんから、2008年の夏の盛りにメールを頂いたのです。
「大和市のKです。
ご無沙汰しております。
以前制作して頂いたオーダーキッチンは心地よく使っております。また、空間にも良く馴染んでいます。
うちに遊びに来た人みんなこのキッチンに惚れて行きます。
テーブルを考えています。ポイントは相変わらずの幕板無しです。ただ、脚の上に天板がポンとのっかている感じではなく、脚の太さと、天板の厚みは同じとして、1つ統一した寸法でシンプルにと考えています。
納期的には、12月頭ぐらいがいいなと思っています。12月で結婚丸10年なんで、その記念にと考えてます。
宜しくお願いします。」
またまたシビアな依頼です。でもね、どんなに難しくてもKさんの考える形はとても好きなのです。うまく行くようにがんばりましょう。
今回の形は、言ってしまえば簡単です。でも、構造にはかなり気を使います。なぜなら、「幕板がない」ということは、「天板が脚に直接接合されている」という事だからです。テーブルや椅子などの脚物家具は基本的に幕板や貫板など横から来る材料と脚の縦の材料をつなぐことで強度が出る構造です。通常幕板は、1方向だけではなく、2方向から接合され、さらに幕板同士を内側から筋交いのように補強したりすることで、強い構造を作るのです。それが上からの接合だけとなると・・、弱いのです。座卓ならまだしも、床から天板までの距離が長くて重心が離れるダイニングテーブルだとホゾだけの構造では使っているうちに緩みやすくなります。
そこで使うのが、脚と天板をつなぐことができる金物です。脚のなかに金属の骨を入れるのです。これは、通常は天板と脚を分割して運ぶための組み立て式の家具に用いる金物ですが、こういうときにはかなりの強度を出すことができます。これでは、脚の強度は確保できました。
次の問題は、天板の垂れです。
幕板は脚の構造だけではなく、天板の反りや垂れを防ぐ矯正する役目も果たしています。天板は季節によって、湿気の影響で歪んだり、また重力の影響で中心が垂れたりします。それを防ぐために板を縦にした幕板を天板の下につけるのです。それがない形なので、今回は天板を厚くすることで板の動きがあまり大きくならないように考えています。
「幕板は大事なのです。」とKさんに力説しましたが、「分かっているのですが、イマイさんのアイデアでどうにかなりませんか。」とお願いされてしまったので、こうやっていろいろ考えてみました。
さらに今回は、kさんの希望で見た目の印象を整え、天板トップは板目になるように木取りをして、天板の木端面、木口面と脚は全て柾目になるように作っています。仕上げや構造に少し難しい部分があるので、おそらくそのうち木の動きによる目違いが出るのではないかと懸念していますが、その時はメンテナンスしましょう。
Kさん、そうやってずっとお付き合いしますよ。
ナラの厚み60mmの天板のダイニングテーブル
価格:200,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は10,000円から)
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