家具が届くまでに
「食器棚のオーダー」
鎌倉 M様
design:Mさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:shouko tsuchie
painting:shouko tsuchie/daisuke imai
2003.4.16に「製作をお願いします。」とのお返事を頂きました。
最初にお問い合わせいただいてから一度メールをやり取りしただけでした。製作を依頼していただけることを大変嬉しく思いましたが、「こんなに簡単に形が決まってしまって大丈夫かな。」と私はちょっと不安になりました・・・。
訪れた場所は鎌倉の閑静な住宅街でした。
お部屋に案内されると、パインの無垢の家具が並んでいます。テーブルにサイドボード、それにガラスがはめ込まれたカップボード。どれも良い具合に使い込まれて傷ができていたり、オイルもだいぶ焼けていたりと雰囲気のある上品な家具たちが並んでいました。
どっしりとしたパインのテーブルに案内されてお話を伺うとやはりメールのやり取りだけでは分からなかった部分がいろいろと出てきます。特に今回の家具のように飾り面をつける場合は、使う人の好みが大きく出てきますので詳しく話を聞かないと思ったより可愛らしすぎる家具になったり、予想以上にシンプルで冷たい感じになりすぎたりしてしまいます。
そこでいろいろと話を聞いたり、他の家具を見せtもらったりしてイメージを一致させていきます。飾り面なんて特に細かいところだからその人はイメージしにくいものです。Mさんもやはり全体のイメージをつかむのは難しいとおっしゃってましたので、いろいろと話し合っておおよその形が決まったところで、「せっかくですから、一度私たちの工場まで来てみませんか?」ということになりました。そうすれば使う材料も見れますし、私たちがどのように家具を作っているのかも知ってもらえますしね。
当日は、今までお会いできなかったご主人も一緒に来てくださいました。その日は、材料の現物の在庫があったのでそれを見てもらい、ガラスのサンプルを見てもらいました。飾り面も工場に少し展示されている家具を参考に決めていきました。家具の取っ手は雰囲気を合わせるためにその場でカタログを見ながら決めるのではなく、一度家具の納品してからその家具を見ながら選びましょうと言うことに。色はなるべく白くしたいと言うことでしたので後日サンプルを送ることにしました。
じつは、色のサンプルを送ってから実際に塗装して仕上げるまでが一苦労でした。今回、製作を担当した女性スタッフの土江さんは大変そうでした。
オイルフィニッシュでの白い着色と言うのはけっこう難しくオイルだから染み込んでしまって木肌と混じって白と言うよりもかなり茶色い仕上がり(ミルクコーヒーみたいな感じ)になるのです。
私はそれでもなるべく白く塗ってサンプルを作ってMさんに送りました。
「その色でよいです・・。でも、もう少し白くできますか・・。」というお返事を頂きました。打ち合わせのときに見せていただいた家具は、たしかに私が送ったサンプルよりももう少し白いものがありました。「あそこまで白くするのはむずかしいな・・。」と思って、私は「では、できるだけ白く塗ってみます。ただオイルは普通の塗料に比べて塗膜自体はとても薄く柔らかいので、使っているうちにだんだんと落ちて木肌の色になじんできますよ。」と連絡しました。
土江さんは白く色を重ねていくのが得意だったので、ほとんど任せて塗ってもらいました。しかし、やはり難しかったらしく本体の内側の角などに多少刷毛ムラが残ってしまいました。そこで再度塗装を落として塗料が良く伸びる刷毛に替えてもう一度塗り直しすることにしました。そして仕上がったのが写真の色です。
はたしてMさんのイメージする「白」とこの家具の「白」のイメージは合うのか私は少し不安でした。
でも、そんな不安は必要なかったようです。当日Mさんはとても気に入ってくださって、私の不安など「考えすぎたかな。」と思うほど喜んでくださいました。家具を見ながら選んだ取っ手は、以前よりお話していたガラス調のものでした。つまみがメーカーから届くまでに間がありましたので、「次ぎにお伺いする時に写真を撮らせてください。出来れば使っている状態を取りたいからどんどんものをしまってかまいませんので。」と言い残してその日は帰りました。
後日お伺いすると、きれいにものがしまわれて、飾られていました。さっそくツマミをつけると、私が思っていたより派手にならずにそのツマミはしっくりと家具になじんでいました。
そのあと、Mさんにお話を伺うと、
「注文家具って今回初めて頼んだのですけど、今までの買い物のように見えているものをすぐに買えるというのではなくて、ずっと自分の頭の中で思い描いているものが届くのを待っているこの感じがとても楽しかったです。」とおっしゃってくださいました。
「この家具の上には何を飾って、どういう風にしようかと自分の中でいろいろとイメージしている時間が好きでした。それと、こうやって作る人と直接話ができるからいろいろと勉強にもなりました。」とおっしゃってくださいました。
うれしかったです。
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