暮らしのパズル
「食器棚のオーダー」
横浜 I様
design:Iさん/daisuke imai
panning:daisuke imai
producer:daisuke imai/shouko tsuchie
Iさんからお問合せを頂いたのがいつなのか・・・と見かえしてみると2003年の10月31日となっています。じゃあ今は2005年の4月だから1年半以上も前になるのですね。予定よりもだいぶ納品が遅れてしまったのかと言うと特にそうでもありません、いろいろスケジュールが立て込んでいて予定よりも1週間ほど遅くなりましたが。では、何でこんなに長い時間を頂いたと言うか、掛かってしまったのかと言いますとマンションの建設期間が長かったからです。そのマンションは横浜駅のすぐそばの高層マンション。内覧会に同席した時に、「なるほど。これなら時間が掛かってしまうだろう。」と言うくらい大きな規模のマンションで、内覧会の時も上階の人だけが内覧できて下の階の方はまだ内装もできあがっていない状態でした。
この打合せから納品までの間が長かったため(おおよその形状が決まったのが2003年の暮れで、実際に製作に掛かったのが2005年の年初めだったのです。2004年は数回打合せなどを行なったのみでほぼブランクでした。)、また、家具の数も小さいものも含めて4台あり、それぞれがかなりきちっと細かい部分まで打ち合わせたので無事打合せどおりの形になっただろうか、見落としてしまった部分はないだろうかと言う不安が心のどこかにずっとありました。でも納品したあとは、どの家具もとても喜んでもらえてうれしかったのです。
よくお話を聞くとIさんはスチュワーデスさんで、スチュワーデスさんと言ったら、
「お肉とお魚どちらにしますか。」
「じゃあお肉でお願いします。」くらいしかお話したことがないので何だかいまさらちょっと緊張してきたりして。
ところで、私の妻は看護師なのですが、看護師さんもスチュワーデスさんも男から見た女性らしい職業の人たちってもっと柔らかいイメージの人が多いのかと思っていたら、職人さんみたいな感じで、妻も意見を聞いているときびきびと良いものは良い、悪いものは悪いと言う性格で、Iさんともお話をしているとなんだか妻と話をしているような感じさえしたのです。
家具や生活に対しても「ここはこう使う場所だからこれは絶対に必要で、これは無駄になるから入らない。」って言うようなはっきりとした意見を持っていて、全てがきちんと割り切れる計算のようにスパッとした感覚を持っていて、何だか可愛らしいというよりはたくましいんだなって思ったのです。
「家事は生活の一部」と捉えて、いがいに甘く見てしまいがちな部分があるかもしれないけれど、いざ自分で行なってみると体力の要る日々の仕事だなって実感します。そこに自分なりのこだわりやスタイルが出てきて、自分の動きやすいような環境を整えていくのは生活していくうえでとても当たり前のことなのですね。
Iさんの洗面所を見て「そうだな。」って深く思ったのです。
私は個人的にメインに家具を作ったリビングよりも洗面所のストイックな感じが気に入っているのです。そのこともちょっと紹介したいと思います。
ちなみにその後、何だか私は小さな間違いを何度かしてしまって、ちょこちょことIさんのお宅に足を運ばせてもらったのですが、そのたびに小さな家具を注文してもらって、かえって木を使わせてしまったような気がして何だか恐縮しているのです。これからも末永くお付き合いいただけるとうれしいです。
もうひとつ・・・、
Iさんの家具との向き合い方の素敵だと思ったところは、収納をうまく使いこなしているところがとても素敵だと思ったのです。こういうと何だか当たり前で変な言い方なのですが、私たちが作った家具があるべきところに納まって、その中にあるべきものが自然と入っているという感じがしたのです。「うまくパズルが組み合わさっている」というような感じが。
だから家具を見ていて気持ちが良いのです。
写真を撮る時に、Iさんが「散らかっているから、少し片付けましょうか。」と言われたのですが、私は「いえ、使っているままを撮るほうが家具として分かりやすいから良いのです。」と言ったのですが、それだけではなく、この家具とそのまわりの雰囲気がとてもよく馴染んでいるその感じを写真に撮りたかったのです。