Scene
「食器棚のオーダー」
よみうりランド Y様
design:Yさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:tatsuya suzuki
painting:tatsuya suzuki
Yさんは突然やってきました。
私と父は秦野まで家具取付に行っていたのです。取り付けももうすぐ終わるかなっていうところで、母より電話が入りました。「今お客さんが見えているのだけれど、こっちには何時ごろ戻れる?」って。そんなこと言われてもまだ詳しい時間は読めないから(その人帰っちゃっても仕方ないかな)なんて思って、また仕事が終わった時に会社に電話を入れたら、「私たちが戻るまでお昼ご飯を食べに行って待っていてくれてる」と言うことでした。ならば急いで帰らなくては、と言うことで会社へ戻るとおなかの大きな奥さんと小さなお子さんを抱えたご主人が待っていました。
聞けば突然だけれど川崎から来たので戻るのももったいないから待っていたのです、と言うことでした。
Yさんは注文家具が詳しくどういうものかあまり分からないまま話を聞きに来たということなので、まずは希望している家具のだいたいのイメージを聞いておおまかな形が分かったところで、ここから細かい部分の打合せです。
「ここはどんな扉が良いですか。」
「引き戸がいいです。」
「引き戸だと扉2枚分の厚みが奥行取られるので、奥行の内寸が・・。」なんて具合に進みます。Yさん曰く、「面白い。」
そうです。確かに打合せはキャッチボールのような感じで面白いのです。
そんなふうにしてラフプランができあがりました。考えている家具は3台。食器棚の洗面室の収納とパソコンをするためのデスクです。各イラストはその時に描いた最初の案(原案)です。ここまで形にするのに2~3時間くらいの打合せが必要です。
Yさんのイメージしているプランは面白いものでした。引き戸を主に考えたデザインで引き戸以外の部分もインセット(家具の内側に扉が入る形)にすると言うものでした。インセットの家具は家具本体の板の厚みの線が手前に見えてくるのでシンプルな形にしないとうるさく見えてしまうのでなるべく簡素な形になるようにしています。そのおかげでどれもとても落ち着いた印象の家具になりました。
家具に使う材は1種類ではなく2種類使っています。ナラとチェリーです。それをYさんはうまく配置して茶色と赤茶色が交わってとても遊び心のある色使いにしています。
キッチン、洗面室、階段下。使う材料は一緒でもそれぞれこんなに形が違うと、その場所ごとに独特の表情、景色が生まれるのですね。とても味わいのある空間ができました。