ダイナー
「チェリーのとコーリアンのダイニングカウンターのオーダー」
所沢 Y様
design:Yさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hidenori terai
painting:haraki tosou
Yさんのお宅は住宅地の一角のちょうど角だったので、入口が何処だかと、まごついていました。すると、それに気がついたYさんが、「あっ、イマイさんですか。今開けますね。」と庭から顔をのぞかせました。玄関が開いて、「はじめまして、フリーハンドイマイです。今日はよろしくお願いします。」と言うと、「ハイ、どうぞあがってください。」と何だか初めて会う気がしない感覚を覚えます。さっそくお邪魔させて頂き、Yさんは私をリビングに案内してくださるとまもなく、お湯を沸かしてパン生地に手を加え始めました。
コトッとコーヒーを入れてくださって、「では、打合せを始めましょうか。」とそろそろと今までメールでやりとりしてきた内容などについて打合せを始めます。しかし、5分くらい経つとまたYさんは台所に。
何だか不思議な感じです。
そんな感じのスピードで、打ち合わせは何だかのんびりです。
この不思議な感じはなんだろうって、打合せが終わったあとにしばらく考えていました。
そうして思ったのが、久しぶりに同級生に会ったような感じだと思い当たりました。
「イマイ君、久しぶり、どうぞ上がって。」と言われたような気がするくらい自然な感じの打合せだったのです。
打ち合わせがだいぶまとまった頃、先ほど沸かしていたお湯にこねたパン生地が入ってパン作りが始まりました。そして、しばらくすると、ホカホカのベーグルがテーブルに運ばれてきました。
「こうやってパンを作るのが好きで、いつかここの家具ができあがったら、教室みたいなものを開けたらいいなあって漠然と思っているんです。
今は趣味で作っているだけで時々近所の友達に教えているだけなので。」
ちょうどお昼を過ぎておなかが空いていた私は、ムシャムシャと頂いていると、
「それにうちの主人も息子もパンを食べないんですよ。イマイさんくらいたくさん食べてもらえると作り甲斐があるんですけれどね。だから、そのうち、自分のためのパン作りだけではなくて、みんなで作れるようにできればなあって何となくですけれど、思っているんです。」
いいなあ、そういうの。
そういう夢が叶うような家具作りをがんばりましょう。
そもそも、Yさんに最初のお問い合わせを頂いたのは、2007年の4月下旬。ちょうど1年ほど前のことでした。その時は、料理をする時の作業台とテレビボードのお見積依頼を頂いていたのですが、予算的なところから、2台の家具を作るのは難しくなり、優先したい作業台だけのプランを進めていたのです。去年の6月くらいからYさんの予定が慌しくなり、家具を製作を急いでいないと言ういことから、しばらく落ち着くまでに時間を頂くこととなりました。
「秋ごろには、落ち着くと思いますので・・。」と連絡を頂いていたのですが、いつの間にか年が明けて・・・。(もう、このお話は無くなっちゃったかなあ。)なんて思っていまして、とりあえず挨拶を兼ねて家具の件について連絡を取ってみたのです。
YさんはYさんで本当に忙しくされていたようで、年が明けてようやく家具について考えられる時間ができたので、一度お話を聞きに来てください、と言うことになりました。
そういう長いやりとりがあったためか、何だか初めてお会いする気がしなかったのですね。
そういうわけで、冒頭のようにお邪魔させて頂いたのですが、お話を進めていくにつれて、当初の作業台だけの製作では納まりが良くないだろうと思えてきたのです。
Yさんのお宅のLDKはほぼ正方形のような間取りです。正方形の1辺にシステムキッチンが配置されている感じです。
そして、リビングとなっているのは対面の1辺。
正方形は、バランスが良いように思えるのですが、家具の配置などを考えると、「ここはこう使おう。」と場所を特定しづらいのです。曖昧に多目的なワンルームとして考えられると良いのでしょうが、ここはダイニング、ここはリビングと区切ると、こっちは広くてもこっちは狭くなると感じやすいのです。
Yさんとしてはリビングでお子さんたちを見ながら料理をしたいと考えていて、またお子さんが不用意にキッチンに入ってこないようにしたいと考えていたのです。
そんなわけで、現状ではキッチンのすぐ反対側にアイランドタイプの作業台となる家具を据え付けて、間仕切のように使いたいと考えていたのです。
現状は、間口3500mmほどの1辺のキッチンに、市販の本棚と自作のキャビネットを並べ、さらに冷蔵庫も間仕切りのような使い方をして、キッチンとダイニングスペースを仕切っていました。そして、冷蔵庫置きスペースと予定されている所には、市販の大きな食器棚が入っています。
LDKのフローリングの色は、こげ茶色のオーク材。市販の本棚と自作のキャビネット、そして大きな食器棚はナチュラルな明るい色。システムキッチンの扉は鏡面仕上げの黄色いもの。
ここに新たに幅1550mmの作業台を製作して、市販の本棚と自作のキャビネットと入れ替えても、まだしっくりこない気がしたのです。
そんなわけで、細かい打合せと提案です。
まず、冷蔵庫がこの位置にある理由をお聞きすると、Yさんとしては、冷蔵庫を開けた時に、リビングダイニングから冷蔵庫の中身が丸見えになってしまうのがイヤだということで今の位置でつかっているのだとのこと。
なるほど。
それから、市販の本棚とキャビネットの現在置かれている位置について聞くと、前述の不用意にお子さんが入ってこないように間仕切的に使うプランニングが一番いいとのこと。
なるほど。
今冷蔵庫に入っている食器棚は、私たちが作る作業台のほうに中身を移し変えることができるので、処分するとのこと。
なるほど。
頭の中であっちをこうやってこっちをああやってと考えます。
そうしてできたのが、この現在のプランに近いものでした。
1)冷蔵庫は元に位置に戻します
2)間仕切的なカウンターは幅いっぱいに作ります
3)出入り口には扉をつけます
4)(冷蔵庫を隠す扉をつけます)
4番はコストが掛かってしまうのでボツになりました。
素材については、最後まで迷っていました。Yさんの理想は、濃い色。木で言うと、ブラックウォールナット。もしくはアメリカンチェリーのような赤茶色。私は無難にフローリングに合わせて、こげ茶色のオーク材か、着色しないナチュラルな色みのオーク材。最終的にサンプルを作って、それを比べながら検討してアメリカンチェリーに決定。そして、天板はアイボリーの人工大理石。全体的にダークブラウンの建材の中でチェリーとアイボリーが部屋を引き締める感じになりました。
とてもよい感じです。
打ち合わせ後日、Yさんからメールが届きました。
「今日、仲良しのお友達にいただいた図面を見せて、すごく素敵なプランで、毎日うきうきわくわくしてることを熱く語っておりました。
図面を見せると「食器棚買うとは聞いてたけど、これリフォームみたいだね。でもすごくいいよ!」とのこと。
今井さんのとこのHPで今までの施工例を一緒に見てたのですが、友達も「すごーい!素敵だねぇ。これは絶対気の済むまでやったほうがいいよ!!やっちゃいなよ!」といってくれました。・・・
と。
そんなわけで、取付当日は、玄関やらリビングやらは私たちがお店を広げた状態で、道具や家具のパーツが所狭しと並んだ状態でしたが、Yさんのお友達もたくさん駆けつけてお茶をしながら、私たちの作業を見ていてくれました。家具の取り付けなんてあまり目にする機会がないですものね。
「リフォームだね。」と言われたくらい結構広範囲の取付だったので、1日の工事では終わらず、1週間後に残りの作業をすることでようやく完成。
1年間の時間を掛けただけのことはあります。
とてもとてもよい場所ができましたね、Yさん。
夢のパン教室はもうすぐでしょうか。
楽しみにしております。
アメリカンチェリーとホワイトコーリアンのアイランドカウンター
価格:880,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は60,000円から)