バタンッ、「ただいま。」

「食器棚のオーダー」

逗子 O様

design:Oさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:koubou tan
painting:daisuke imai

タモ柾目のシンプルな食器棚

玄関から廊下を通り抜ける時に移るこの食器棚の印象。古いガラス越しにゆらいで見えるその姿はやわらか。

タモ柾目のシンプルな食器棚

ダイニングまで案内された方が見る姿はこのような印象。こちらからも、壁のタイルや照明の整ったやさしさがあります。

お天気は良い。
雨はどうにか上がってくれたから、数枚のパネルを運ぶのにも何の不安も無くなりました。
ただひとつは、ここは小高い丘。
そして、向こうは海。
どうにも海風が強くてね。
パネルを抱えると、エッチラオッチラとふらついてしまいます。さらにその日は、外溝工事も真っ最中で、足元も土だったり、不安定な敷板だったりするのでした。
まあ、いつものペースで行きましょう、と玄関を通りぬけました。
「おやっ。」何かが懐かしい。ふと、目が留まったのは玄関のドア。
前回採寸に訪れた時は、確か土気色したドアだったけれど、今は鮮やかなスカイブルー。
鉄扉だね。
ドアの内側には、あの新聞受け。私が子供時代を過ごしたあの団地の新聞受けと同じだ。
風が強い。テッピが閉まる。
「バタンッ。」
あの時の音と同じだ。「ただいま。」バタンッ。
うるさいからもっと静かに閉めなさい。どこのうちでも、みんながそう言われていた。でも、あの音を聞くと、ああ、○階の○○が出掛けたな、なんて良く分かったものでした。同じ団地にも4人の友達が居て、向かいのうちの彼とは、学校に上がる前から、そして中学卒業まで何だか一緒だったなあ。でも、中学に入ると何だかあまりに近すぎて、急によそよそしくなって遊び仲間が変わってしまったっけ・・。
このドアは、そんな自分の心象だ。
テッピを通り抜ける時に、私はそんな空気を感じたのでした。
でも、そんな懐かしさは自分の心の中だけではなくて、Oさんの暮らしがそのままどこか懐かしいのでした。
「主人が、少しずつ集めているんです。」という古い薬品棚やカタカタするスツールや色褪せたカルタが出迎えてくれて、その奥の居間で波打つ板ガラスが待っているやさしい空間がありました。
あとで、Oさんに言われたようにこの場所に食器棚がうまく溶け込むかなって思いはありましたが、タモ柾の表情は優しかったし、食器棚の形はシンプルだったので、設置が終わる頃には、Oさんと一緒に安心していたのでした。
「製作例の[わらういえ]を参考にさせていただきました。
形は同じような感じで、上の棚はもう少し下まで(床から145センチ)で、天井のほうを少し開ける感じにしたいです。あとは炊飯器やポットを引き出せる部分がほしいです。
新居のキッチンのカウンターは、タモ材の予定でいます。木の種類など、ほかの家具とのバランスも相談させていただきたいです。」と言うご相談を頂いてから、約半年、ようやく納品することができました。
「今日は、食器棚を設置して頂きありがとうございます。
イマイさんたちの仕事に感心しました。
自分のイメージしたものが、ちゃんと形になって今ここにあるということが、すごいです。
オーダー家具どころか食器棚を買うことも初めてだった私に、一から丁寧に説明して頂き、とても感謝しています。最後まで迷った木の種類も、とても気に入っています。
古いものが好きな主人趣味でできている玄関?とキッチンがつながっているので新しい食器棚は合うのかなぁ、、と少し心配していたのですが、私も気に入っているお米の入ったガラス瓶をのせたら、いい感じになじんでいました。
私の好みは、使っていく毎に味が出て、長く使える台所用品(竹かご、行平なべ、おひつ、、)で、そんなものたちを、今井さんに作って頂いた食器棚に収納して、おばあちゃんになるまで大事にしたいと思っています。
今日から、もっと料理が楽しくなりそうです。
それから、イマイさんのホームページにのせて頂いてなんだか恥ずかしい感じですが、うれしいです。
今の若々しさもとても気に入っていますが、今井さんのおっしゃるように、2年3年後・・と、もっともっと味わいが出て、我が家に馴染んでいくんでしょうね。とても楽しみです。
また何かありましたら、連絡させて頂きます。
これからもどうぞよろしくおねがいします。
忙しいと思いますが、お体に気をつけて、素敵な家具を作ってください。
本当に、ありがとうございました。」

タモ柾目のシンプルな食器棚

食器棚の右にあるこの小さなパントリー。実はここは私たちが作ったのではなく、コスト削減のために大工さんが造作した棚なのですが、シナ合板でできていたので、食器棚の雰囲気と整えるために、タモ材で扉と側面のパネルを作ったのです。

タモ柾目のシンプルな食器棚

吊戸棚は、天井いっぱいではなく、上に余裕ができるプランに。収納量は減りますが、キッチンの見せ方は広がります。上にはいろんな籠がおけますし。

タモ柾目のシンプルな食器棚

カウンターより下の収納部分はこのような感じ。ちなみにカウンターはタモ板目の無垢材で製作しています。

タモ柾目のシンプルな食器棚

炊飯器を入れて、使うときは扉を持ち上げてさらに家具内に収納して、炊飯器のスライドテーブルを引き出して使う形にしています。

タモ柾目のシンプルな食器棚

突き当たりの通気口も当初は、樹脂製の白いものの予定だったのですが、扉があたってしまうことと、デザインを考えて、省スペースでステンレスの質感の良い昔からある形に変えて頂きました。

タモ柾目の食器棚

価格:540,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は45,000円から)

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