喜び

「洗面台のオーダー」

茅ヶ崎 Y様

design:Yさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke imai/shouko tsuchie
painting:daisuke imai/daisuke imai

「全ては、あのたんすの作り替えから始まったのよね。」そう言いながら、ふと作り変えた箪笥を見たYさん。
そう言われた時、私は素直に嬉しいと思いました。箪笥を作り変えて2年近くが経ちます。あのあとに「次は洗面所ね。」を言っていたのを思い出しました。
あの言葉を聞いてからもうそんなに時間が経っていたんだ・・。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

洗面台の全体の様子。

築20年近くなるこのマンションは不思議なところで、各住戸がそれぞれいろいろな工夫を凝らしてプランニングされていて、このYさんの洗面所も少し変わったところでした。20年近く経つのに未だしっかりとした、そして機能的な収納がついているのです。洗面台の他に流しがついていたりと規格品には無い独特の洗面収納がついていてもう傷んではいるのですがちょっと魅力的な家具でした。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

こちらは元の洗面台とトイレの様子。

こちらが改装前の洗面所の様子。
その住戸の部屋に合わせてオリジナルの使い勝手の良い収納が最初からついているマンションと言うのはなかなか少ないですね。
さすがに長年使っていたので傷や剥がれがそこかしこに出てきていて、また奥行が深い洗面収納の為、大型の洗濯機を置いているここでは生活のに狭い場所となっていました。
そこで今回のY邸でのお仕事は、ユニットバスの組み換えをメインにその周辺の洗面室とトイレを改装するということになったのです。
最初にも書きましたがYさんと知り合ったきっかけは箪笥の修理でした。
オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

こちらは元の洗面室の様子。

結婚のお祝いにもらったものを大事に使い続けて約30年、傷んだ箪笥は引き出しが開きにくく扉も開きにくく、また傷ついていました。(詳しくは、「生まれ変わった箪笥」 茅ヶ崎 Y邸で。)
その後、箪笥のできあがりをたいへん気に入ってもらえて、特にご主人にたいへん好評で、Yさんのお宅に行くたびにいつもご主人が「箪笥がいいよね・・。」と言って頂けたのでした
その後、出窓の部分の地袋を解体してただの収納ではなく、ベンチ収納を出窓の部分に組み込むという家具を作らせてもらいまして、(詳しくは、「午睡」 茅ヶ崎 Y邸で。)約1年に1度Yさんの家具と関っているのです。
そして今回の洗面所。一体どのように仕上がったかをご紹介しますね。

まずユニットバスの交換が大前提であった今回の工事ですがユニットバスのサイズ大きくすることに伴って、またYさんの以前よりの希望でトイレまで改装することになりました。今まで使っていたトイレの狭さをなるべく解消させたいと言う条件をクリアする為にいろいろな方法を採りました。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

こちらはトイレの様子。枠付きミラーとその下のトイレットペーパーを収納する戸棚を作らせて頂きました。

まずトイレのタンクを取ることにしました。と言いますか、タンクがない便器が最近販売されていてそれを使うことにしたのです。さらにトイレ突き当りの壁を取り払った際に躯体壁(コンクリート壁)ギリギリまで壁を下げることができたので結果としてリフォーム前よりも150mmほどトイレのスペースに余裕ができました。
しかし、トイレに余裕が出たのは今までのようにタンクからの水で手を洗うという「洗い場」がなくなってしまったので小ぶりな洗面台を便器の向かいにつけています。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

その戸棚の手掛けの様子。

洗面台・タオル掛け・ペーパーホルダーなどは全てYさん自身のコーディネートでイメージに合う小物を工事期間中に都内のインテリアショップまで買いに行くほど素晴らしい行動力と素敵な感性を持った方です。
でも、Yさんが言うには、「私、時間があるからいろいろと雑誌みたりして考えちゃったりしてね。」と軽くおっしゃっていましたが、いろいろと突き詰めてお話をするといつもいつも勉強になることばかり教えてくださいます。
このトイレで私たちが製作したものは、トイレットペーパーをストックしておく半埋め込みの収納とその上につけたの鏡と便器台です。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

急きょ便器の高さを上げないと水勾配が取れなくなりまして、このようなベースも制作しました。

便器台とは、今回のタンクレスの便器を設置するにあたって配水管などの関係からどうしても床の高さを30mm持ち上げないといけないことになったのですが、Yさんはトイレの床自体が30mmも上がるとどうしても狭く感じるから便器が載る床の部分だけ持ち上げるような細工をしてほしいという提案をされました。工務店さんと私とYさんとで進めていた打ち合わせのときでした。すると、現場監督の佐藤さんが「それならイマイさんでしょ。」と言われてしまって、どんなふうになるのか完成のイメージもつかめないまま引き受けてしまってそれで実際にできあがった台がこちらです。便器が載ってしまうとあまり分からないのですが、形状としましては便器が載っている部分とよくトイレでゴミ箱や清掃用具を置く便器奥の部分がこの台になっています。Yさんは「フジサン」と呼んでいます。
ペーパーストック棚は最初トイレの狭さを考えて引き戸にした収納が良いかと思っていたのですが、寸法的に便器よりも高い位置にあって開き扉にしても問題がないことと、Yさんが引き戸にすると出てくる見た目の印象の少しうるさい感じをなくしたいからということで開き扉にしました。ハンドルなどもつけるとトイレの印象が変わってしまうので無垢材を埋め込んだ扉の上端を掘り込んで手掛けとしています。
このペーパーストック棚の上につけたのがYさんがどうしてもほしいと言っていた鏡です。この鏡のサイズをYさんをいろいろと悩みました。ペーパーストック棚の上に置かれたような状態の鏡が良いかそれとも鏡は宙に浮いているようにする方が良いか、また、鏡は縦長か、横長かなど・・。私は縦長の鏡が宙に浮いているようなイメージをずっと頭の中で考えていたのですが、Yさんのイメージは「映る顔がちょっとでも良いからこのトイレに奥行が出るような形にしてほしい。」と言うことだったので縦長では普通の鏡になってしまうから思い切って横長にしてみましょうと言うことになりました。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

あわせて、オフホワイトの化粧板で建具も作らせて頂きました。

私たちが家具の作りを考えていく作業は、その使う人の漠然としたイメージを一つ一つ繋いでいく作業なのです。ジグソーパズルみたいですね。
使う人・ほしいと思っている人がには何となく分かっているジグソーパズルの完成した絵をその人からいろいろな話をして断片を聞きだしてある場所に当てはめてみる、もう一つ違うものを当てはめてみるそのしていろいろと試してみながらその人の完成図と完成図を知らない私たちのイメージの完成図がぴったりと合ったときにその人のイメージどおりの家具が生まれます。
何もないゼロの状態からはじめることだからそれはとても難しい作業でもありますが、とても楽しい作業でもあります。私たちにできるのは家具という一つの対象があるからできるわけで、部屋をデザインしたり都市をデザインしたりする人たちはほんとにすごいなぁと思います。
Yさんのようにイメージ作りやすい人との打ち合わせはとても楽しいですが、大変勉強になることもいろいろと教わります。
このドアもリフォーム前までに使っていたポリエステル化粧板の扉を同じように作り替えるだけという簡単なものでした。扉を替える一番の要因は、以前トイレについていたドアには通気用に大きめのルーバーがついていたのですが、そこから水を流す音などが廊下に大きく聞こえてしまうのでもっと密閉したものに作り変えてほしいというのが主な希望でした。
そしてトイレのドアを変えるのなら隣り合う洗面室のドアも一緒に変えたいと言うことで2枚とも作り替えることになりました。形はドアに大きなスリットを入れて内部の明かりが分かるようにして洗面室のドアには通気用のルーバーをつけるというシンプルな形です。
工場で作っている時は何の変哲もない化粧板の扉と思っていたのですが、実際に部屋につけてみるとレバーハンドルやすりガラスから漏れてくる明かりで廊下の印象がとても引き締まったのです。作っていながら私はここまで印象が変わるとは思っていませんでした。Yさんの紡ぎ出したイメージは見事に部屋に溶け込んでいました。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

あらためて全体の様子。奥様がいろいろと悩んで考えた様子がよく表れていますね。収納方法が多彩です。

一番のメインの洗面室です。使い慣れたいままでの収納のイメージを基本にちょっと狭かったこの洗面室が広くなるようにいろいろな工夫がされています。
Yさんの希望は、このような感じでした。

  • 白い木目の家具で、洗面台のトップはタイルで
  • 洗濯物入れのカゴをしまえるようにしたい、またできれば体重計もドライヤーもしまえるようにしたい
  • 洗面台の上で化粧などができるように簡単に座れるような椅子もつけてほしい
  • リフォーム前についていた鏡の上の照明は化粧などをする時に必要だけれど、鏡の上も収納としてこの壁面に一体感を見せたい
オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

扉を開けるとこのような感じ。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

洗面台の引き出しも開けるとこのような感じ。

洗面台下の収納は化粧ビンなどが入る寸法に合わせて引き出しを6はい設けています。洗面器下の部分は配管が通るので開き扉として内部は点検する時に邪魔にならないように特に内部には何も作りこんでいません。
鏡の隣に作ったハブラシ棚ですが、ハブラシのコップなどはすぐ濡れた状態で置きがちだから、この棚の下面にタイルを貼ってほしいと言われて貼ったら、とてもかわいらしい印象になりました。
また、洗面室奥に設けたコンセントは工事に参加していた電気屋さんが「海外のホテルとかに行くとコンセントが横向きになっているんだよね。」と素敵なことを教えてくださって、Yさんもその意見をとても気に入ってこのようにセットしました。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

吊戸棚の下には蛍光灯を隠すように取り入れて、乳白色のアクリルで光が拡散するようにしています。

洗面台の鏡の上は、吊戸棚を取り付けて下部にスリム管という普通の蛍光灯よりも細く寿命が長いものを組み込んですりガラスに反射させて照明としています。この部分で一番悩んだのが蛍光灯をどのように交換するようにしたら良いかという事で、キッチンに付いている棚下等やレンジフードに付いている照明などを参考にしたのですが、やはり規格品はよく設計されていてうまく金物を使っていたので、私たちは木だけでどのようにしようかと思って考えたのですが最終的には、家具の下にガラスが入るスリットを入れてこのガラスを手前に滑らせて取り替えるようにしました。
鏡は幅30mmの枠を廻して壁面に固定しています。今までは鏡がむき出しの状態で壁面に取り付けてあったので少し冷たい印象がありましたが今回は枠を廻したので全体的に温かな印象が出ました。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

洗面室奥の下部の戸棚は開き扉だと開け閉めが不便なので引き戸です。

体重計と洗濯カゴが入るスペースは洗面室の奥となる辺りにしまえるようにしました。奥の部分は洗濯機を置いてしまうと開き扉では、使う時に支障が出るのでリフォーム前の家具と同じように引き戸にしています。

オーク材をふんだんに使って洗面所をリフォーム

お化粧をする時のベンチを備えています。

収納に椅子を組み込むことにしました。簡単なスツールですが座面を外せば中に物がしまえるようになっています。張り地もナラの印象に合わせて、また、耐水性のある生地を使うことにしました。椅子の高さは400mm。私にとっては少し低いですが洗面所で使うにはちょうど良い高さです。

洗面室のリノベーションとナラの洗面収納

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