RIB
「テレビボードのオーダー」
厚木 N様
design:Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:tsuyoshi kawaguchi
painting:haraki tosou
「はじめまして、厚木市長谷に住んでいるNといいます。
見積りをしていただきたくメールを出させていただきました。
今年の12月に完成予定の新築住宅に造作物を入れたいと思っています。
内容ですが、AVボードとエアコン隠しの造作と玄関内部の壁面造作です。
玄関の壁面造作は、玄関を開けたらシューズクロークがあるのですが、そのドアを壁面と同一化させてわかりづらくさせるために施そうとしている処理です。
後日、FAXにて添付書類と同じものを送らせていただきます。よろしくお願致します。」
という珍しい問い合わせを頂いたのが2008年の6月と半年ほど前のことでした。テレビボードと玄関収納。テレビボードは最近私たちも良く手がけているルーバータイプの家具。ですが、玄関収納は、何と言うか家具じゃありませんでした。メールに続いて、頂いたFAXをよく見させてもらうと、うーん、家具屋さんというよりは大工さんや建具屋さんが行うお仕事ですね。
しかし、私たちでもできない工事ではないのでまずは見積もってみます。むかしは店舗の工事を良く行っていましたので段取りも分かりますし。
そういうわけで、見積をお送りしました。ただ、ここで作って現地で取り付けるといういつもの段取りではなくて、材料を現地に持っていって、ほとんど現場でカットしたりして施工していくので、金額的に見込みきれない部分もあります。だから、玄関収納というか、玄関造作は少し余裕を見て出させて頂きました。Nさんの予算内に収まるかなあ・・。
数日後、私たちのショールームまでいらしてくださるとのメールを頂きました。
収まったのかな・・。
「もし、ご都合がよろしければ今週の金曜日(4日)の朝、工房の方に伺いたいと思うのですがいかがでしょうか?
今回、見積りをして頂いたものを依頼した場合の段取りや事前に準備すべきこと等もお聞きしたいと思っています。
ご都合はいかがでしょうか?」
ということでした。
それから、スケジュールを調整して、来て頂いていろいろと打ち合わせさせて頂きました。
今回のように家具だけじゃなく壁を化粧したり、ドアを作ったりする場合は、現場との絡みが出てくるので、きちんと段取りをしておかないとうまく納まりません。
工事の進め方としては、ある程度できあがった壁の下地に仕上げとなる材を貼って、建具枠は製作が終わり次第現場に運んで大工さんにつけてもらえるのならうまくいきそうだ・・、と一人で考えます。
こちらに来て頂いた時に、現場監督さんに伝えて頂けるようにNさんにも段取りを説明させて頂きました。
その後、Nさんもご新居のプランを担当されている営業の方と設計の方にお話しをしてくださったのですが、どうやらお話が少し違っていたようで、新居のほうはいつもどおりの建て方をして、壁の下地を作ったり、建具枠をつけたり、さらには建具を取り付ける袖壁の製作作業などの細かい作業は全て私たちが行うような段取りであったようなのです。
うーん、困りました・・。
なぜかと言うと、壁面を化粧するにあたって壁が平面じゃないと仕上げ材を貼るのが大変です。その壁を平らにする作業まで私たちが行うと、ましてや袖壁自体製作するとなると、不慣れな分かなり大掛かりになってしまいそう。
・・・以前に、車のショールームの改装工事の時に、緩やかなアールを描く壁を作るのに私たちが下地を作ったことが思い出されました。あの時は大変だったよなあ・・・。
施工会社さんになかなか了解を得られないので、事務所まで伺っていろいろとお話をさせて頂き、最終的には、壁の下地や袖壁の製作は建設会社さんのほうで行って頂けることになり、建具枠の取り付けから壁化粧、建具の吊り込みを私たちが行うというような段取りとなりました。うーん、建具枠はつけてもらえないのかあ・・。
ただ、幸いなのは、新居の建築中にうちが工事するのではなく、Nさんに引き渡された後に行うということになった点が幸いでした。
建築中だと、いろんな職人さんが出入りするから、結構バタバタと慌て気味な仕事になったりしたらイヤだなと思っていたので、引渡し後にゆっくりできるのは幸いでした。
そんなわけで工程は決まり、引渡しまでにできることを進めます。テレビボートはいつも通りに進められるので、大工さんが壁を作り始めたころに採寸に行き、その寸法に合わせて製作に取り掛かりました。玄関収納のほうもそろそろ材料の段取りなどを始める頃でしたが、年末に近づくに連れて、いつものように仕事が慌しくなり、玄関廻りの採寸をする頃には、うちだけではなくいつもお願いしている塗装屋さんも手一杯となってしまいました。そこで、テレビボードだけを先に設置させてもらって、玄関は現場での作業で慌てると良くないので、Nさんに「急いでいませんから、きれいにつけていただけるほうがうれしいです。」と了解を頂いて、年が明けてからじっくりと施工させてもらうことにしました。
でも、年が明けてからじっくり考えながら段取り良く1日で工事しましょうって考えていても、やはり最近しなれない作業だから1日では終わりませんでした。
1日目は建具枠をつけて大部分の化粧材を貼り付け。その時に枠内を採寸して、翌日から建具を製作。その翌週にまた1日頂いて、製作した建具と残りの化粧材を施工。
フウ、どうにか完了。やはり現場で作っていくと言う作業は大変です。
ちなみに今回使ったこのルーバー状の材は、通称「リブ」と呼ばれている建材で、うすいMDF材(繊維を圧縮した板材)に無垢材を練りつけている材です。等間隔に無垢材が貼られている材料なので自分たちで1本1本ルーバーを作るよりは楽なのですが、何しろ今まで扱ったことがなかったので、その扱いに慣れるまでがちょっと大変でした。一度なんて、リブ材がきちんと壁に接着されて乾く前に浮いてしまった場所があったりして、そうなると接着剤が乾燥する時に水分が抜けて材を引っ張るのでリブ材が反ってしまって、パカパカしたまま固まってしまってその部分だけ施工しなおしたり・・・。
いろいろと良い勉強になりました。
苦労した甲斐があって、Nさんにはとても喜んでもらえました。
打ち合わせの時も物静かなご主人が一言。
「とても落ち着いた町屋のような玄関ができてうれしいです。こういう落ち着いた感じの玄関に憧れていたんです。ありがとうございました。」
それだけがうれしかったのです。
また何かあればいつでも言ってくださいね。
ナラの格子のテレビボードとエアコンカバ―付き吊戸棚
価格:420,000円(制作費・塗装費)
ナラの格子の玄関納戸造作
価格:550,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は180,000円から)
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