すずやかな風が吹いている
「ナラ板目とコーリアンのオーダーセパレートキッチン」
世田谷 K様
design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe
「はい、フリーハンドイマイです。」
「あの、ちょっとオーダーキッチンのことでご相談させて頂きたいの。」と気さくにお話を始めたKさん。
2020年の3月の終わりごろでしたでしょうか。
キッチン周りのリノベーションを検討されているということで、いろいろと分からない部分があったそうでお話が広がっていきます。
「ふうん、そうなのね。じゃあさぁ、イマイさんさぁ、ここはこうするとどうなのかしら。」とどこか親し気な相談が10分くらい続いたでしょうか。
おっといけない、電話でお話をご相談を進めるのは良いのですが、何を話したかうろ覚えになっちゃっていけないので、「Kさん、すみません。細かいご要望はお手数かもしれませんが、メールに書いてお送り頂けますでしょうか。」とお伝えして届いたのが、こちらのメールでした。
「先日、お電話させていただきました築20年の世田谷区のコーポラティブマンションをリフォームしようと考えています。
50代の夫婦二人の生活ですが、数年前から主人が和歌山の実家の会社を継いで、現在は和歌山と東京を行ったり来たりの生活をしています。なので通常は私、一人と犬一匹との暮らしです。
なるべくシンプルな暮らしを目指しています。
添付、わかりにくいと思いますが、20年前の現場の図面になります。手書きのものがイメージです。
本当は壁に向かってL字型にキッチンをと思いましたが、そうすると収納の確保が難しいのかなと思い、現状と位置を変えずにリフォームした方が良いかなと思っています。
メゾネットでキッチン部分は吹き抜けになっているので吊り戸棚はつけずに棚板を2枚くらい設置して見せる収納にしたいと考えています。
他の部分はなるべく隠してスッキリ見せたいです。
一人なので本来は食洗機は必要ないのですが、食洗機のない生活を正直したことがない、洗い物のカゴを置きたくないという理由から食洗機は入れたいです。(海外製のものがいいです。日本のものは寿命が短くて好きでないからです。)現在、使っているAEGのものも20年経っても全く壊れず、今も元気に洗ってくれています。
添付のイメージ、下手くそですみません、HPで見たBaritonさんのイメージが好きです。(木の感じとか)
天板はシンク側はステンレスでコンロ側は木がいいかなと思っています。
シンク側はフラットなアイランド希望です。
コンロ側の横幅がどのくらいかよくわからなくて棚を3列できるのか、2列になるのか、引き出しの横幅が800くらい欲しいです。
800と450X2とかの組み合わせでも良いです。
スパイス入れと調味料入れは絶対欲しいです。(幅300くらい)
シンク側のリビング側には浅いプッシュラッチ仕様の棚が欲しいです。
床は現状はチェリー材で、今回のリフォームでキッチン部分のみタイルを貼ろうと思っています。
キッチンの木はオークっぽいものか、くるみ、チェリーと迷っています。
更に、キッチンに加えて上階部分に棚も作りたいと考えています。(予算次第ですが)
上階は吹き抜けで勾配天井になっていて高さが100くらいかと思います。
廊下と寝室に繋がり、現状はカウンターになっているのですが、そこに収納棚を作りたいと考えています。
右側にはタオルの収納、真ん中にスーツケースやカバンを収納、寝室側にはテレビとかを置ける感じにしたいです。(PCくらいの大きさのテレビです)
扉は真ん中の部分のみ設置してあとはオープンの棚板でお願いします。本とか気に入ったものなどを適当に置きたいです。棚板の木のイメージはHPのクリスマスカラーというのが気に入っています。
納期は特にいつまでというのはないですが、年内にリフォーム完成したいと漠然と考えています。
こんな時期ですので、無理ない様に、現在、私も東京を離れ、和歌山で避難生活しているので、写真がなくてすみません。
部屋のイメージとして壁は白とコンクリート打ちっ放しのワンルームです。
ざっくりとしたお見積もりをお願いできますでしょうか。
よろしくお願い致します。」
電話では、もう少し漠然と考えていたのかと思っていたのですが、けっこうしっかりとイメージが固まっていらっしゃるのですね。
Kさんの手描きのスケッチと青焼きの建築図面をスキャンしたものを一緒にお送りくださったのでした。
青焼き図面は懐かしいですね。
私自身は焼いたことはないのですが、まだこの仕事を始めたての頃は、青焼き図面をもらうことが結構多かったですね。
それに仕事しながら通っていた夜間学校の課題で自分で図面を焼くって課題がありましたね。
焼き方を覚えるのではなく、図面を描いて焼いて仕上げる一連の流れを知るという課題で、そのような作業は父ももちろん知らなかったものですから(その頃の私たちの図面というと平行定規で書いた図面をコピー機で印刷する程度でしたから)、電話帳で(まだパソコンもろくに持っていなかったっけ)近くのコピー屋さんを調べて、何だか佇まいのものすごく雰囲気のある(まるで昭和の頃の小さな町の診療所のような感じでした。)ところを訪ねておじさんに2枚焼いてもらったことを覚えています。
話がそれでしまいましたが、まずは、この内容を基に私のほうで原案となるスケッチを描いてみまして、その場合の制作金額や施工費などをお伝えしたのでした。
Kさんはその内容を見てとても気に入ってくださったのですが、工務店さんが他のお客様の細かい修繕やコロナウイルス蔓延の影響でスケジュールが多少混乱している部分もあって、すぐに着工というわけにはいかない状況でした。
私たちとしては、今思い返すとこの時期の仕事の状況が本当に厳しくて、やはりコロナウイルスの収束が見えないということで軒並み依頼が中止まではならなかったのですが、延期になってしまって、とたんに予定していたするべき仕事なくなってしまった頃だったのです。
本当は「今すぐにでも取り掛からせて頂けたら・・」なんていう胸の内でありましたが、なかなかうまくいかないもので、Kさんから、
「とりあえず緊急事態宣言の期限であるゴールデンウイーク明けにでもご連絡させていただければと思います。
コロナの状況で全体リフォームの工務店からも着工が難しいかもとの連絡を受けております。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願い致します。」
ということでしばらくはお話が順延することに。
とにかく今はできる仕事をにきちんと向き合って頑張っていこう、夏には収束するだろうと言われているし、なんて思いながらその間はどうにか頑張っておりましたっけ。
そのゴールデンウィークが明けた頃に、あらためてKさんからご連絡を頂きました。
「お世話になります。コロナの収束も全く見えず、お仕事の影響など大丈夫でしょうか。
私も東京を離れ和歌山での避難生活も1ヶ月以上となっております。
感染者が少ないので東京よりは比較的にのんびりと自然に癒されながら過ごしております。
さて、先日お願いしたキッチンと収納棚の制作について打ち合わせさせていただくのが、6月に入ってからになりそうです。また、決まりましたらご連絡させて頂きます。
よろしくお願いいたします。」
という内容でした。
ちょうどその前後の時期から、世間がコロナの中でも経済活動を続けていくという流れになってきまして、私たちの仕事が今までの流れとは打って変わって急に忙しくなってきて、かえって工期が後ろにずれるほうがよさそうな頃だったのです。
それから、メールで少しずつお話を進めながら6月末にリノベーションを担当する工務店さんもいらっしゃるタイミングで打
ち合わせにお伺いすることになりました。
お伺いすると、その集合住宅は今から10年以上前に一度来たことがあるマンションでした。
その時は別の住戸のお客様のところに本棚を3台作らせてもらったのだったなあ、と懐かしく思い出される場所で、少し変わった間取りのマンションで搬入が大変だったことも思い返されたのでした。
Kさんはその棟とは向かいに立つ棟でこちらも変わった作りをしています。
「こんにちは。」
とお邪魔させて頂くと、すでに工務店さんの若社長さんもいらっしゃっていて、話の途中から加わらせて頂きます。
私にはキッチンと2階の収納のお話しか届いていなかったのですが、お話を伺っていると、今回のリノベーションの内容としては結構大きな工事になりそうなのでした。
たしかに築15年近く経つということで、ペンキ仕上げの壁は塗膜がところどころ剥離していたり、衛生機器も一昔前のもので使い勝手が悪くなってきているようでした。
さらにはこのような社会状況になって、ご主人は実家のほうでご自身の仕事にかかりきりの暮らし、となると二人暮らしだったこの場所を自分好みに変えていきたいKさんの気持ちが強くなってくるのも分かる気がします。
これは私たちもうまくスケジュール組んでおかないと、年内で作業を終わらせるようにするのは大変になってくるかも、なんて思いながら話を横から聞いておりました。
おそらく今回の打ち合わせではキッチンの細部に突っ込んだところまでお話は進まなそうな感じでしたので。
そうして、その日か初顔合わせと大まかな流れを教えて頂いて、キッチンのおおよその内容の確認という形で打ち合わせが終了。
あとは工務店さんのお話がもう少しまとまりましたら具体的なお話が進むかな、なんて思っていたところ、Kさんからメールが届きました。
「実は、先日お打ち合わせの際に同席していただきました工務店さんより、年内の工事が難しく、イマイ様のお知り合いの工務店さんにお願い出来ないでしょうかとのメールが来ました。
簡単に経緯をお話しさせて頂くと、まず今年の2月くらいに私のいとこが設計士をしており、そのいとこにリフォームの相談をして3月初めに工務店さんを連れて下見に来ました。
3月末には最初の概算見積をもらったのですが、その後、コロナで私も東京を離れている間に、工務店さんのほうではその間に別現場での工事契約が決まってしまったようです。
先日の打ち合わせの時にもイマイさんがお帰りになった後で、工期が難しくイマイさんのお知り合いにいないですかねとは聞かれてはいたのですが、私もどうしたらいいかわからずにおりました。
先方も私のいとことは長年、一緒に仕事をしている関係で工期を遅らせるのは申し訳ないという気持ちもあるようです。
もし、お心あたりの工務店さんがいらっしゃればご紹介いただくことは可能でしょうか。
ご検討のほどよろしくお願い致します。」
そうでしたか、先日の打ち合わせで分か社長さんのお返事の歯切れがどこか悪いように思えたのは、工期の件があったからだったのでしょうか。
いつもキッチンのリノベーションの依頼を請ける時にはkotiの伊藤さんにお願いしておりまして、ちょうどこの時期も
「母と娘」茅ケ崎のKさんのリノベーションのお話が進んでいた頃でしたので、あわせてこの世田谷のKさんのこともお願いできないかと伊藤さんに打診したのです。
いつものリフォームよりも少しボリュームが大きかったのですが、工期がほかの現場と重ならないこともあって引き受けて頂くことができて、そこからは伊藤さんと一緒に数回掛けてKさんのところを訪ねてリノベーションの内容を決めていったのです。
その中でKさんの感覚がすてきでして、お話をさせて頂くというよりは毎回勉強させて頂きに行っているような感じで打ち合わせは進んでいくのでした。
キッチンの印象は最初のスケッチから少しずつ形を変えていきましたが、仕上がりのイメージは細長い白いタイルが整然と貼られた印象に、白く木目が映えるキッチン、というところはぶれずにその形をすっきり見せていきつつも使いやすい形を目指して考えていったのでした。
ですので、レイアウトは使いなればセパレート型から変えずに、和歌山の数年前にリフォームしたというご実家のキッチン(キッチンハウスさんのキッチンということでした)の使い勝手が良い部分をうまく生かしながら新しい形を考えていったのです。
Kさん、感覚はすてきなのですが、お世辞にもきれいにすっきり暮らしていらっしゃるようには見えない室内でして(笑)、毎回打ち合わせに伺うたびにこの荷物がすべて納まるのだろうか・・、と心配になっていたのですが、「もうね、使っていないものも 多いから、これを機に処分するわ。」っておっしゃっていたのでどうにかなるのだろうとは思っておりましたが。
ですので、なるべく収納は増やしたいというKさんの要望もあって、今回おもしろいことに螺旋階段の下に滑り込むような形のキッチンにすることにもなりました。
それをなるべく不細工に見えないようにあれこれお話を進め、さらにキッチンの床はタイルかと思っていたら「イマイさん、伊藤さん。床にはコルクを使いたいの。」とおっしゃられて、コルクだと使いやすいと思いますが、少しぼんやり見えてしまうのかなあなんて思っていたのですが、「これよ。」と見せてくださったカタログのものがとても洗練されたもので良い雰囲気だったのです。
「コルクでもこれならすてきでしょう。」とKさん。
たしかに実際に施工された後に歩かせて頂いたのですが、コルクの表情というよりは石材のような表情で、冷たさはなく、撥水性も良いので掃除もしやすく、こういうすてきな素材もあるのだなあと教わったのでした。
2階の床に使った材も麻のような足触りのものだったのですが、樹脂でできているもので、色使いや表情もKさんらしさがよく出ていて、「イマイさん、どの色が良いと思う。」なんて打ち合わせの時に聞かれたりするのですが、私が良いかなと思ったものをお知らせすると、「そうよね、私もこれが良いと思ってたの。」って、ハイ、大変勉強になる時間でした。
そのようにして形は決まりいよいよ工事を始める段取りです。
今回は、その冬、私たちのほうが今までに経験したことのないくらいの忙しさになっていて、すぐにKさんのキッチン制作に取り掛かることができないような状況でしたので、私たちのキッチンが制作できる時期に合わせて伊藤さんのほうで工事を開始してくださることになりました。
「それでも、年内にはどうにかおわるのよね。」とあっけらかんとKさんに言われたのですが、間に合うかなあ‥。
いよいよ制作の開始です。
今回の制作はワタナベ君が担当します。ワタナベ君もこの頃ではもう3年以上もここに居ることになるので、キッチンの制作も問題なくできるようになってきまして、安心して任せられるのでした。
そして、2階の収納はここに来てまだ1年経たないヒロセ君ですが、前職で大工さんや木工屋さんに近い仕事を18年続けてきていますので、もう十分家具作りは任せられます。
その二人がメインに制作を進めていきますが、まずは2階の収納までは年内だと間に合わないのでキッチンだけを先行して制作し、どうにか年内に大まかなリノベーションは終わらせて、Kさんがここで暮らし始めることができるように進めていきます。
で、内装工事も始めて見るとなかなか大変だそうで、集合住宅でもユニットバスじゃなかったので、その解体がなかなかひと苦労だったり、吹き抜けの一部を壁にする部分が難航したりと、伊藤さんも苦労しておりましたが、どうにかその年のクリスマスイブの前日にキッチンの設置工事は完了できたのでした。
そのあとに、伊藤さんのほうで配管をつないでもらって、クリーニングを行なってどうにかキッチン周りは完了できたのでした。
で、さっそくご新居での暮らしが始まるかというと、「Kさん、確認してくださってとても喜んでくださいましたよ。数日間はここに居らっしゃるようなのですが、またご実家に戻られるそうで。」とちょっと苦笑いの伊藤さん。
それであればここまで慌ただしくならなくても大丈夫だったのかもしれませんが、それでも喜んで頂けたし、この先の進め方も少しゆとりができましたので良かったよかった。
そうして、2階の収納ができあがった翌年の1月半ばに無事に2階も設置を完了して、すべて引き渡すことができたのでした。
さっぱりした印象のKさんによく似合った涼し気なキッチンと収納がこれですべて完成ですね。
「うん、とてもきれいに作ってくださってありがとう。とても快適に使っているわ。」といつものさっぱりとしたKさんでしたが、うれしそうににこやかにおっしゃって頂けて、それでやっとひと安心できたのでした。
天板 | デュポンコーリアン「グレイシアホワイト」 |
---|---|
扉・前板 | ナラ板目突板 |
本体外側 | ナラ板目突板 |
本体内側 | ポリエステル化粧板 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
ナラ板目とコーリアンのセパレートキッチン
価格:1,850,000円(制作費・塗装費、設備機器費用は別)
ナラ板目のサイドボード
価格:550,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は60,000円から、取付施工費は150,000円から)
ご注文・お問い合わせをご検討中のかた
ちょっと関わりのありそうな家具たち
-
2017.09.05オーダーキッチン
お久しぶりだったのですね。
「ナラ柾目材とステンレスバイブレーション…
-
2021.07.27オーダーキッチン
緑を見ながらお料理を
「ナラとステンレスのオーダーキッチン」 …
-
2014.11.01オーダーキッチン
丘から望めば
「ホワイトアッシュとブラックEP塗装仕上…