素っ気ないバレンタイン
2022.02.18
お菓子作りの動画から流れる作業する音を勉強時のBGMにしているというハルカはなんとも素晴らしいセンスが溢れているのである。
「今年のバレンタインはこれね、少し余分に作って向こうに置いてあるから。」となんとも素っ気ない素振りで彼女のわきを通りしなに言われたのがこちらのお菓子。
前々日、前日と仕事から戻ってみると堂々とキッチンを独り占めして、アキコは肩をすぼめながら料理為い為いその様子を後ろから眺めていて、「今日はずっとこの様子で手際の良さに感心するわ。」と彼女。
テーブルの上で生地を丸め終わると、そのまま余熱済みのオーブンに向かい、ニコニコしながら「この生地がツルンって柔らかくなる感じがきれいだよー。」とハル。
そうか、そんなものなのかと覗きこむとたしかにきれいね。ふむふむ。
焼き上がったら冷めないうちに真ん中をくぼませて、ふんふん言いながらそのまま寝かせて、焦げ茶色の次は桜色と小麦色、そして最後に抹茶色と。
と、自分はそこまでしか見ていなくて、いつの間にかこの焼き菓子はできあがっていて、翌日はカヌレに同じく4色のチョコレートを熱心にコーティングしておりました。
ここは何のアトリエか・・。
「ハルはセンスあるのよね。ここはこのくらいでいいんじゃないっていう加減がちょうど良く分かるのね。なんでかしらね。」とアキコ。
さすがもの作りの家庭に生まれただけのことがあるなあ、なんてうれしいはずなのに、さっきから歯ブラシくわえながらスマートフォンをあれこれいじっているだけで全然歯磨きが進んでいない彼女にイライラ・・。
「ハルちゃんさあ、先に歯磨き終わらせちゃえば。」というと、「今この時間にならないと部員のみんなコンタクトが取れないから仕方ないじゃん。」と少しムッとした表情。(だったらもっと早くに支度を終わらせていけばよいじゃないか。)とムキムキしてしまう私はすっかりおじさんなのでしょうね。