クルミの格子引戸のある食器棚
2022.04.17
この家具はもう15年以上も前からお付き合いさせて頂いているインテリアデザイン事務所さんからのご依頼で実現したのでした。
お客様であるHさんとは直接打ち合わせをしていないので、いつもとは違う流れでお話は進んでいったのですが、それでもHさんのイメージされているものと私のイメージしているものはうまく合わさって形になっていったのでした。
ただ途中で、突然Hさんからお電話を頂きました。
「イマイさん、今食器棚をお願いしているHです。実はイメージを確認させて頂きたくて直接連絡してしまいました。」
Hさんとしては、格子のバランスがどのような感じが良いのかイメージしづらい部分もあって、私の意見を直接聞きたくて・・、ということでした。最初は、参考として頂いてとおりにもっと隙間のほうが大きなデザインだったのです。でも、はたしてそれがきれいなのだろうか・・、と思案されていて。
「イマイさんのウェブサイトの作品も拝見させて頂いています。他のお客様の家具はもっと隙間が狭いように見えるのですが、どのような形が美しいのでしょうか。」とお話を進めていく中で今回のサイズで決まっていったのでした。やはりそういう細かい部分は直接お話し頂くと、よりイメージを共有しやすくて助かります。
工房のほうではちょうど格子用の材を養生しているところでしたので、新たに格子が増える分を追加加工してどうにか昨日の設置に間に合ったのでした。制作を担当したノガミ君は、その材の多さにてんてこ舞いでしたがとてもきれいに仕上げてくれてありがたいです。
格子扉ってなかなか作るのが大変なのです。格子一本一本がピッタリつくように格子材の幅を木工カッターの幅に合わせて割り付けし、カッターで突いた溝にボンドを擦り込んでボンドがはみ出ないようにしながら圧締していくのですが、本数が多いと溝をつく作業は単調になって間違えやすかったり、接着時もボンドの乾き具合を見ながら作業しなればならず、またその塗装は格子と格子の隙間のふき取りや研磨がしづらかったりするので、気苦労が多い扉でもあります。
それから、今回は格子扉の中に引き出しがあるデザインで、その引き出しもクルミの突板で作っています。いつもは白いポリエステル化粧板で作ることが多いのですが、クルミ材となると、引き出し板自体をプレスして作るところから始めないといけない。(白ポリだと厚み15ミリの物があるので、そのままカットすれば使えるのです。)
いつも以上に気を使う形でしたがこうしてきれいに仕上げてくれました。
また、天板は最初は石のイメージで作ろうと考えていたので、セラミックを使おうと予定していたのですが、ちょっと予算が厳しくて、今回はメラミン化粧板で。でも石目調の凹凸感が良く表れている柄のものを使いましたので、全体的にとても落ち着いた印象で仕上がったのでした。
納期と合わせて心配だったのが搬入。今回は世帯数の多い集合住宅の5階が現場でしたので、右の背の高いキャビネットが一般的なエレベーターの高さを越えていたので、エレベーターに入るかどうか心配だったのですが、やはりどうにも入らなかったようで・・。
もっと細かく分割して運びやすいように考えればよかったのですが、すみません・・。
「大工さんにも手伝ってもらえて、スライドレールを外して、どうにか階段で上げました。」とノガミ君とヒロセ君とタケイシさん。
「でも、途中でHさんも見に来て下さって、仕上がりにとても喜んで頂けました。大工さんも以前家具屋さんに勤めていたそうで、お褒めの言葉をもらえまして。」と照れ笑いのノガミ君。
「そのおかげで、ダイニングテーブルとローテーブルのご相談も頂いてきました。」
なんともありがたいお話でございます。