とれたバランス

「リビングボードのオーダー」

石神井 K様

design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

リビングボードのどんな素材にするかは迷った部分でした。最初から決めていたのは、お部屋のドアと同じ化粧板を使って作ると言うこと。でも、全てをその色にすると印象が重くなるのか・・、それだけは実際に置いてみないと分からないのです。特に新築のマンションの場合は、内覧会までは一度も現地に入ることができない、だからなおさらイメージしにくいのです。 特に、家具をご相談される皆さんにとっては、そう何度も新居の工事現場を見る機会はないので、部屋へのイメージはさらに沸きにくいのです。だから、いかにその様子が分かりやすいように説明できるかが大切になるのです。スケッチを描いたりしながら、全ての面を同じ化粧板にするよりも、上部は色を変えて印象を軽くして部屋を明るく広く見えるようにしましょう、とお伝えしてこのバランスになったのです。

家具の納品が無事終わったその約4ヶ月前、2011年の暮れにKさんは私たちにメールとFAXを送ってくださったのでした。私はそれを見て、シンプルにまとめられたその3台の家具をさっそく図面にして製作可能な形へと構築していきました。

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

こちらは、ご主人が使うためのデスクです。ただ、ご主人は海外への出張が多いため、それほど頻繁にここを使うこともできない、さらに打合せもご主人とお会いできたのはたった1度だけ。そのなかでどういう形を取り入れるかをまとめたのでした。

私にとって家具を考えることとは、見栄えを良くするよりも、いかにその人にとって使いやすい形を作ることができるかだと思っております。見た目がいかにきれいでも、使っていて故障が出るような形や、使い勝手が良くない形で、その人にとってストレスになってしまうようでは、作ってまで家具を購入して頂く意味がなくなってしまいます。今までも、皆さんの家具を作るにあたって、いろいろな人が作るいろいろな家具の良さ、悪さを見てきました。その中から、こうしたものが使いやすく、日常生活に溶け込みやすい形になり、その人にとって自然に使えるものだと言うかたちを考え、その形を実現させることが私たちの仕事だと思っています。

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

例えば、ダウンライト。デスクの棚下照明としては、かなり上のほうから照らされています。だから、実際の実用には照度が足りないと思います。 「それでも良いのです。この照明は実用と言うよりは、デザイン的にほしいなと思っていまして。」そういうご主人の意見の元にこの位置に照明があるのです。

ですので、どんな家具を考えるときも、見た目のバランスだけではなく、その人が実際に使うとどういうふうに思いながら使うのか、引き出しを開ける時は、しゃがまないといけないからどこに手を掛けると開けやすいか、取っ手をつけるよりも扉を押して明けたほうが、このスペースでは見た目だけではなく、スペースとしてすっきりするのではないか、ガラスの扉と格子の扉はどちらがこのお客様にとって有用か、そして時にはあまり料理もしないできないけれど、ここで料理をするにはどんなキッチンが使いやすく、どんな機器を組み込むことがこのお客様にとって正解か、どんな食器棚が料理をしながら使いやすいか、実際に自分がそこに立った時に感じること、今まで皆さんから見聞きしたことを踏まえて、ひとつの形を作っていきます。

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

また、右端についているステンレスの四角い棒。このデスクを設置した奥の壁は戸境壁です。戸境壁と言うと、一般的にコンクリートそのままだったり、断熱壁だったりするので、下地となる柱がないことが多いのです。今回も図面を見る限りでは分かりにくく、実際に壁を調べてみないと何とも言えません。ですので、事前にそう言う下地の無い壁の場合を想定して、当初は何も無かったこの右端に補強となる柱を立てたのです。この柱1本でもかなり安定しますので。けっきょく調べてみると下地があることが分かったのですが、この柱はご主人の提案で、「デスクライトをこの柱にクリップできるような使い方をしても面白いかな。」と言うことで、ここでも良いバランスが生まれたのです。

今回、Kさんは最初のプランをとても気に入ってくださって、その後にお会いした時も細かい部分についての変更やご要望もそれほどたくさんあったわけではないので、はたしてこの私が考えた形が一人善がりになっていないか、Kさんにとってもっともフィットしているのかどうか、じっさいに設置してみないと読めない部分もありました。

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

右下の収納部の扉を開けると、一番下に、ルーターなどを置いておくスペース。その上にプリンタ。使うときは手前にスライドします。その上の狭い棚は用紙を置いておくスペースとなっています。また、この収納部の扉はツマミなどをつけないで、扉を押すと扉が開くプッシュオープンタイプのものにしています。また、左の引き出しも同様にプッシュオープンタイプのスライドレールを使っているので、とてもすっきりとしています。

でも、要らない心配だったようでした。
いつもにこやかに微笑んでくださっていたのですが、設置後はさらにうれしそうに微笑んでくださったあの笑顔を見て、ああ、良かったのだと思えたのです。

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

食器棚は、システムキッチンの面材に合わせたホワイトの化粧板と、アルミのラインハンドルです。この化粧板は、最近良く見かけるもので、樹脂を熱で柔らかくして真空状態に下扉の基材に圧着するのだそうで、特殊な面取り形状にすることができるというものです。どんどん新しい素材が出てくるのだなあと、感心してしまいました。

その後、うれしいお便りを頂きました。
「お世話になっております。
御連絡が遅くなりましたが、4月2日無事に引越しを終えました。
夫も一時帰国をしまして、イマイさんに作って頂いた家具に感心していました。
新居に2泊して、すぐに中国に仕事で戻ってしまいましたので、「お会いすることはできませんが、ありがとうございます。」と言っていました。
収納したり開閉したりするたびに、使い勝手とデザインが両立した 家具であることを実感します。
まだ片付いてはいませんが、そして新学期が始まったので、しばらく片付く予定もありませんが快適に過ごしております。
ほんとうにありがとうございました。
他のスタッフの方にも御礼をお伝えください。」

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

吊戸棚はシンプルに扉を開けると中に可動棚が入っている形です。

バランスが取れたとてもよい形ですと言って下さったKさんの笑顔が浮かびました。
ちなみに、Kさんは高校の先生。先生からそのように褒められるなんて何だか照れくさかったのを覚えております。
ありがとうございました。

白と木目の化粧板を使ったリビングボードや食器棚

下はうすい引き出しと扉の中に可動棚と言うオーソドックスな形です。

リビングボード

価格:710,000円(制作費)

書斎デスク

価格:441,000円(制作費)

食器棚

価格:330,000円(制作費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は60,000円から)

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