Oさんのクルミのキッチンに会いに
2022.10.15
コロナの印象が薄らいできているからなのか、このところ人通りが多く感じていて先週の連休の車の流れを見ていても、これは何とも・・という印象でしたので、つくばに向かうためには少し早く出発したほうが良案でしょうと私は工房にアイにご飯をあげに、アキコは脱衣所に洗濯ものを干し終わったら早々に二人で出かけたのでした。
が、思ったよりも車が空いていたのか、つくばが私の頭の中だけでどんどん遠くなっていただけなのか、想定よりもかなり早く着いてしまいましたので、ちょっと早いけれどおそばを食べまして、(楽しみにしていたかつ丼は鶏肉でしたのでちょっと心淋しかったのですが)その足で、お煎餅がとても美味しそうなお店を見つけて(最近アキコと二人でお煎餅をツマミに日本酒飲みながら、「いやぁ、お米飲みながら、焼いたお米を食べてるからお腹も出ちゃうよね」なんて言いながら夢中になっております。)なにやらたくさん買い込んでしまって、そのあと先ほど見かけた路傍に立ててあった野菜の無人販売の案内に惹かれてたどり着いてみると、こたつに入ったおばあさんが、「おいも焼いたからおあがり。さあさあ上がって上がって。」なんて、急に祖父母の家に帰って来たかのような味わいを感じつつ、(それだと遅刻してしまいそうなので美味しそうな野菜と栗を頂いてまいりました)予定通りにOさんのところへ。
ここからがきちんとお仕事です。
まずはクルミの無垢とステンレスバイブレーションのそれぞれのお手入れの方法を伝えさせて頂きました。表面に使ったクルミについては、先日Oさんお二人で塗装をされたということもあって今さらお伝えしなくても上手に使ってくれていまして、ステンレスの天板のほうが、鉄製のものを洗ったまま置かれてしまったからかもらい錆が出ていましたので、アキコがさっそくステンレスクリーナーを取り出して、きれいに磨き上がてくれて、ひと通りの説明は終了。
Oさんもとてもきれいに工夫されて暮らしていらしてくださって、「旅館みたいにしたかったのです。」とお二人であらためてひとつずつ部屋の様子を教えてくれて、大工さんの造作のきれいさをあらためて堪能させて頂きました。
引き出しの底にコルクを敷くアイデアや、L型コーナーのデッドスペースになりやすい部分に今回採用したハーフェレのレマンⅡという特殊な金物の使い心地を教えてもらったりと、大変勉強になりました。
「じゃあ、イマイさんお茶を用意しますね。」と冷蔵庫から出てきたのは「今日のために作りました。」というモンブランが素晴らしく美しくて、「このあたりはたくさん栗が取れますし、茨城は栗のおおきな産地でもありますから。」ということでとても美味しいケーキを頂いてまいりました。
あれほど悩んで悩んだというキッチン。Oさんからもそういえばたくさんスケッチが来ましたよね。
どの絵も暮らしが楽しくイメージできるものばかりで、楽しんで考えさせて頂きましたね。
最終的にこの形になりましたが、先ほどご主人と奥様が二人で支度する様子を見ても、とても使いやすそうな様子が伝わってきました。
「このキッチンが我が家の顔ですから。」とお二人がうれしそうに照れ笑いされていたのがうれしかったのでした。
帰り際に、
「イマイさん、よかったらここから少し出掛けたところに好文さん設計のお店があるので、もしお時間ありますようでしたら立ち寄られてはいかがですか。」
ということで、すこし車を走らせると住宅街の中にひっそりと「だだ商店 だだ食堂」さんがあったのでした。
先ほどのおそばとモンブランでお腹がいっぱいになっておりましたので、食堂には立ち寄れなかったのですが、ワインと地元の日本酒がひんやりした地下室で販売されておりまして、建築を拝見させて頂くというよりはお酒を眺めること数十分、気に入ったものを手にしてホクホクと御会計に向かうと、スタッフの兄さんが「思いがけず(にっこり)」とひと言。
私もニコニコしながら「あっはい。」なんて答えていたら、それを遠目で見ていたアキコはそのやり取りが滑稽だったようで、「ダイちゃんのほうが思いがけず良いものに出会えましたよってお兄さんに言うならわかるけれど」と可笑しそうに。
そういえばそうね。でも今日の一日のすべてが思いがけないことばかりで、こうして小さなドラマ(で合ってるかな)の連続で日々の居心地良さがうまれるのだろうなと思うと、Oさんの暮らしかたも車の後部座席がいっぱいになってしまった私たちのお土産もすべて「思いがけず」なのですよ。
うれしい一日だったのです。