おなかいっぱい
2022.11.25
朝、工房にやってくるとニォーと言いながら階段から降りてきる。
「おはよう、アイさん。」
裏庭で草をひと食みして、陽気が良い時は線路のそばに寝転がっている朽ちた木に乗っかって爪とぎして、草むらで用を足したりするのですが、この頃は草食べたらもういそいそと工房に戻っていくのです。お腹が減っているのです。
そのあとをよいしょとついていくと、ニャアアーと言いながらこちらを見てくるので、「ちょっとお待ちなさい。」と一声かけるのですが、荷物を下ろしている間もカーテンを開けている間もジーっと見つめてくるわけです。
ハイハイと古いお皿を流しに浸けて、新しいお皿にご飯を載せて皿を下に置くか置かないかのうちにもうさらに首を突っ込んでほおばり始める。
まさにほおばり始める。ヒゲやら頬にご飯のかけらが付こうがお構いなしさ。
ひととおり満足すると、ちょうど朝の陽ざしが温かに差し込む事務所の戸の外に出て、やっと毛づくろいをし始めたなぁと、思っていると、気がつくといつの間にかまたジーっと見ている。
この頃は人嫌いになっちゃったからか普段はほとんどお客様の前に顔を出さなくなっちゃったのに、この前なんて、あまりにお腹が減ったからか気が付いたら、ショールームの入り口でじっと正座していて、ちょうど打ち合わせも大詰めになって日が暮れだした頃だったので、うす暗くなった入口に堂々と座る真っ白なアイの姿を見たFさんの奥さんが「なんて神々しい姿。」とおっしゃってくださいましたが、あれはお腹が減っているだけなのです。
でも、毎日きちんとご飯を食べることができるというのは、そういう体でいられること、そういう日々を過ごせること、それだけで幸せです。
今朝も2回ご飯食べたら、もう斜面に出掛けちゃったよ。
さて、そのFさんのとても素材感の強いキッチンの形がいよいよまとまってきましたので、今日はその形をまとめましょう。