懐かしい丘
「クルミ板目の食器棚キッチンカウンターの制作」
横浜 K様
design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke hirose
painting:daisuke hirose
「はじめまして、Kと申します。
カップボード吊り棚の制作を依頼したいと思っております。
これまで、リビング、ダイニング、書斎とチーク材の中古家具を長年愛用してきたのですが、新居に引っ越す際に心機一転新しい部屋作りができればなと検討しております。
どうせ新しく考えるなら、タモやオーク、クルミなどチークとはまた違った味わいのある木材で検討したいなと考えていたところ、instagramで御社のキッチン天吊り収納の作例を拝見させていただき興味を持ちました。
イメージを描いてみましたが、図面には板の厚さ等は考慮できませんでした。ご提案いただけますと助かります。
設置場所は戸建ての1階になり、すでに住んでおります。
家の前の道路が幅が4メートル無いくらいなので大きなトラックは入れないかもしれません。2トン車等であれば大丈夫です。
どうぞよろしくお願いいたします。」
インスタグラムで食器棚を見てくださったというKさんからご相談を頂きました。
私はインスタグラムの使い方がいまいちわからないままですので、アキコがせっせと工房の中や家具のことをいろいろと掲載してくれるおかげで皆さんにこうして知ってもらえているのですから、たまには彼女を労わないといけませんね。
もともと私がウェブサイトを始めたきっかけもオーダー家具のことをもっといろいろな人に知ってもらいたいという思いから始めました。
2000年当時はオーダー家具やオーダーキッチンなんて言葉はまだほとんど聞かれなかった頃だったと思います。
どのくらいの人たちに言葉が届いているのか手探りから始まったのでしたが、おかげさまで次第に少しずつうれしい声を頂けるようになりまして、そしてそれがとてもうれしくて、その気持ちが今まで続けられてきた力なのだと思います。
こうして、いろいろなことが余計なほど分かりやすくなった今でも、基本はやはりいろいろな人に知ってもらいたい、という最初の気持ちを持って続けてきたことでKさんからの声を頂いたのですから、やっぱりうれしいなあ。
それで、さっそく頂いた図をもとにどのくらいの金額で制作できるかを概算で伝えさせて頂きました。
Kさんが希望されていたクルミは、皆さんからリクエストを頂くことが多い樹種です。
ブラックウォールナットとは違った明るい肌をした気なのですが、オイルをしみこませると深い黄褐色になり、ところどころにっ出てくる節の黒みが良い表情となっていて、この素朴な印象がとても良いという方が多いのです。
ただ、このところは使いやすいサイズや良い色み(白っぽいものが多くなっているように思えます)の良材が少なくなってきているようですので、長い材や幅の広い材はなかなか見つかりにくかったりするのです。
お伝えした金額でお話を進めさせて頂けるということでさっそくKさんのご自宅まで伺うことに。
住所を確認すると、最寄りの駅が東急東横線の白楽駅。
このあたりはなぜか以前に家具を作らせて頂いた方が多い地域であり、搬入の時にはなかなかトラックが通ることが困難な場所もあったりして、思い出深い町だったりするのです。
「素直な家」の Iさんだったり、「かおり、ぬくもり、ただよう」「少しずつふえていく」のKさんだったり、一駅歩くと、「バックヤード」のハドソンズさんがあったり、制作例には載せることができていないのですが、ここはお寺の門でしょう、というところを抜けてたどり着いた丘の上に立つ住宅地に住むTさんにデスクを作ったり、10年以上前には、狭くて通り抜けられないのでは・・、と思える通りを抜けるとたどり着く懐かしい佇まいの戸建て住宅に住むOさんには、洗面室の収納やテレビボードを作らせてもらったりと、懐かしい丘陵地です。
今回もその懐かしいみなさんの家のすぐ横を通り抜けて、ちょっと汗ばむくらいに階段を上り下りするとKさんのお宅に辿りつきました。
とても見晴らしの良い心地良い風が吹いている場所ですが、アップダウンの多さにこれはお年寄りにはちょっと大変かもしれない、なんて思っているそばでテクテクとおじいさんが駆け下りていくすてきな場所なのでした。
Kさんに言われていたとおりにトラックでここに来るのはなかなか大変そうで、今回家具の形はシンプルでしたので、家具のことよりも搬入をどうするかが気になっていました。
「2トントラックでしたらどうにか入ってこられると思いますが、この先はご覧に通り軽自動車も通れるかどうかの道幅なのです。」とKさん。なるほど。
「ただ、そこが階段の踊り場のような感じになっていますので、駐車すると怒られちゃうのですが、切り替え氏は皆さんここで行なう方が多いのですよ。」ふむ。
見ると、たしかにトラックでもUターンできそうなスペースです。
この急坂をバックで侵入してくるのは大丈夫だろうか‥、って心配していたので、ちょっと安心。
さっそくお邪魔させて頂いてキッチンを拝見させて頂きます。
想定通りに食器棚のほうはシンプルに作ることができそうです。
その食器棚の設置場所の採寸が終わった時に、ふとキッチンとダイニングを隔てる壁についている笠木のようなカウンターが目に入りました。
食器棚を考える時に、皆さんによくお伝えするのが、「食器棚の印象とリビングダイニングの印象が揃うと室内がまとまった印象になると思われます。」ということです。食器棚なので、キッチンの仕上げ材と揃えよう、というのではなく、リビングダイニングと揃えるほうが視線に入る印象が整いやすいと思うのです。
そう思った時にこの小さなカウンターの真っ白な印象は壁の色に合わせておとなしい印象ではあるのですが、どこかこの場所にはちぐはぐな印象を受けたのでした。
率直にKさんにその話をすると、「そうですか!イマイさんもそう思われますか!私もなんとなくこの場所が気になっていたのです。」とのこと。
では、キッチンがダイニングにつながるような工夫をしてみましょう、とさっそくどのようにするのかをお話させて頂きました。
その案に興味を持ってくださり、食器棚とカウンターの両方を制作させて頂けることになったのでした。
その案とは、今あるカウンターの上から新しいカウンターを被せてしまう方法です。以前にも何回かこのような形で作らせて頂いたことがありますので、壁を一度解体してカウンターを交換するという大がかりな作業よりもスマートに進めることができるのではないかと思っているのです。ちなみに今までのカブセで作らせていただいた皆様を参考までにご紹介しますね。
「はじまりは半円形」のHさん、「色が呼ぶ暮らしのいろ」のHさん、「かわる暮らし」Wさんでした。
そして、制作に。
今回はヒロセ君が担当します。「木を加工しながら内装を仕上げていくことは前職では手慣れていましたが、家具のように細かく細工して仕上げていくのはまたずいぶんと勝手が違うのですね。」と言いながらもやはり安心感はあります。丁寧に食器棚の制作は進んでいくのでした。
そしてカウンター。表面は無垢で作りたかったのですが、そのまま分厚い無垢材を使うとその分反りなども大きく出そうでしたので、あまり厚みを持たせないで、カウンターの裏面には木の動きを抑えるためにスリットを入れて、と細かな工夫をして完成。
後は納品を待つばかり。
というところで、少し先の納品の時期まで寝かされていた食器棚の扉を何気なく仕事帰りに見てみると表側が外気の影響で4枚ともすっかり動いてしまっていました。
うーむ、やはり動いてしまうよね。そこで反り止めを一度外して、扉をひっくり返してしばらく様子を見ると・・、今度は思い通りに逆に反っています。よしよし。それを時間を掛けて数回繰り返していると何となくよい感じになってきたかな、というところで再び反り止めを付け直して、よい感じです。
無垢材はどうしても動きますのでこういう具合が難しいところです。この先も2,3年はその場所に合わせて動いていくので、ほどよく納まってくれるとうれしいなあ。
そして、いよいよ取付。
取付は食器棚よりもカウンターのほうがなかなか難しいそうな印象だったのですが、「いやあ、やはりカウンターの際の加工がなかなか時間が掛かりました。」とヒロセ君の報告どおりにカウンターの方が時間が掛かったようです。
こうして写真で見るとカウンターなんて簡単にはめ込んであるように見えるのですけれどね、その簡単に見えるようにするための工夫がなかなか大変だったのです。
「イマイ様 Kです。
昨日はありがとうございました!
すごく素敵に制作いただいて、本当にありがとうございました。
イマイ様の会社に依頼して良かったです!
家族皆でずっと眺めてニヤニヤしております。」
喜んで頂けて良かったです。
次は、前回お話に上がった玄関収納がきれいになったら、玄関からキッチン、ダイニングの動線がまとまって楽しそうです。 またお声掛け頂ける時が来るのを楽しみにしております。
クルミ板目の食器棚
価格:730,000円(制作費・塗装費)
クルミのキッチンカウンター
価格:130,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は70,000円から)
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