柾目の魅力

「ブラックチェリー柾目とステンレスヘアラインのセパレートキッチン」

三島 O様

design:平成建設さん/Oさん
planning:平成建設さん/daisuke imai
producer:kouhei kobayashi
painting:kouhei kobayashi

ブラックチェリーとステンレスのセパレートキッチン
リビングダイニングから見たキッチンの様子。柾目の突板の場合は、幅が広くても12センチくらいの単板になるので、同じ模様が細かく連続した見え方になります。
ブラックチェリーとステンレスのセパレートキッチン
セパレートキッチンということで、シンク側はアイランド型に、コンロ側は壁付けのレイアウトにしています。アイランドと壁付けの通路の幅は800ミリと少し狭くしていますが、メインは奥様お一人で使うことが多い場合は、今回のようなサイズ感だと向かい合うカウンターの距離が遠すぎることがないので、コンパクトな動線で動けます。また、シンクとコンロを人一人が立って作業する分ずらしているので、複数人で作業する時もストレスなく分業することができます。

「箱根の山は天下の嶮 函谷關もものならず」

と、言われた箱根山を越えた三島や沼津近辺で仕事をさせて頂ける機会が増えたのは平成建設さんと知り合うことができたからですね。
大変ありがたいことです。
今回はその箱根山のふもとから三島へ抜ける見晴らしの良い小高い住宅街の一角にキッチンを作らせて頂きました。

ステンレスの段付きオーダーシンク
シンクは900ミリと通常私たちが作るシンクよりも広めに設計しています。シンクの前後だけに段をつけて苑子水切りプレートを載せられるようにしていて、プレートを常に載せていても水仕事が不便なく行なえるようにこのくらいの幅にしています。
水栓器具はグローエのK7
水栓器具はグローエのK7を採用。この水栓はシャワーホースをシンク下に格納する必要がないためホースの劣化が少ないというメリットがあります。その分ばねの形状になっているところのお手入れが手間が少しかかるかもしれませんね。
オーダーシンクと専用の洗剤ポケット
市販のワイヤーポケットを引っ掛けられるようにフックを加工してシンクに取り付けています。洗剤ポケットを設けるよりも低コストで作ることができるのがメリットです。水切りプレートの段よりも少し下方にフックをつけているので、低めの洗剤ボトルでしたら、水切りプレートが掛かっても邪魔になりません。

クライアントのOさんがずっと熱望されていたのはブラックチェリー材を使ったキッチン。その中でもおとなしく規則正しい印象の柾目材を使いたいとのことでした。
今回のような柾目の表情を無垢材で表現することは難しくて、特にブラックチェリー材のような北米材だと柾目取りされている材の入手はほとんどない状況です。
柾目材というのは、大まかに言うと丸太材に対して中心から放射状に取るような木取りのしかたに近いので、よほど径の大きな材じゃない限りどうしても幅の広い材が取りにくいのです。

そこで、ブラックチェリーブラックウォールナットやクルミなどで柾目仕上げの表現にしたい時は突板を使って作る形が最も適した作り方になるのです。
ただ、そのように突板で作る場合は、ただでさえ幅の狭い材しか取れないのに、柾目という規則正しくおとなしい木目になると、ときには少し不自然にも思えるような人工的な表情に見えがちなのです。
しかし、この印象はブラックチェリーに限っては違った表情になり、とてもそしてよりよく見えてくることが多いのです。

パナソノックのミドルタイプの食器洗い乾燥機
食洗機はパナソニックのディープタイプのものを導入しています。
コンロ側壁付けキッチン
ハンドルはシロクマ印のステンレスハンドルで少し角ばったデザインの「HL-12」でステンレスカウンターと同じくヘアライン仕上げのものを採用しています。
シンク側アイランドカウンターの様子
シンク前の印象。
内引き出しの様子
シンクしダリ上の引き出しはこのように内引き出しにしています。

それを教わったのは、このOさんのキッチンを作らせて頂いた時期よりもずっと後の品川のKさんのリビングボードを作らせて頂いた時でした。
(ちなみにこのキッチンは2015年に作らせて頂いているので今から8年前になりますね。)
ブラックチェリーは他の材に比べて日焼けのスピードが速く、数か月でうすい桃色のような明るい印象から深い赤褐色へと変わっていきます。
そのスピードは皆さんの想像以上で、チェリーで作った天板の上の夏場に1,2時間ほど物を置きっぱなしにしてしまうだけでその部分だけ日焼けの跡がくっきりと残ってしまうくらい。(だから制作中もその扱いを気を付けないといけません。過去にそうなって泣く泣く作り直し他パーツがありましたね・・。)
赤みも白太も一様に濃い色へと日焼けしていき、ついには全体的にしっとりと落ち着いた赤褐色へと変わっていきます。
そうなった時にこの柾目の繰り返される直線の印象が、不自然に映ることなく、かえって落ち着いた様子がとても自然に活きて目に映るのです。

その良さを知って、以前にもチェリー柾目で作らせて頂いたいくつかお客様がいらっしゃいました。

三鷹のOさんの食器棚
川越のSさんのオーダーキッチン
そしてその良さをとても上手に表現してくださった「品川のKさんのリビングボード

どのお客様も日焼けしたその印象が表れるのをたのしみに家具やキッチンを使ってくださっています。
まさに育てながら使う、というのはこう言うことを言うのでしょう。
設置工事後にOさんに一度ご挨拶にお伺いしました時もその時が来るのを楽しみにしながら使っていってくださっているとおっしゃってました。

シンク側アイランドカウンターのリビング側収納の様子
ダイニング側の上段はこのくらい奥行の小さいシナ合板の引き出し。
シンク側アイランドカウンターのリビング側収納の様子
下の両開き扉の収納で、内部はシナ合板無塗装のままで仕上げています。

チェリーに限らず、木は日焼けをすることで色が濃くなる樹種が多いです。(ブラックウォールナットやアルダーは反対に明るくなっていきますが。)
そうなってくるとどの樹種で作ってもとても良い表情に見えてくるのです。その中でもブラックチェリーの経年変化は丸で美味しいお酒のように格別です。

私たちのショールームにご相談にいらして下さった皆さんが色濃く焼けたナラの家具を見て「この色がすてきですね、こういう色の家具にしたいです。」とおっしゃってくださるのですが、その色は最初から出せるものではなく、時間とともに出てくる色なので、皆さんにはそのように説明をさせて頂きます。
それでも最初からその色に近い印象を望まれる方々には、木に色を付けることでなるべくその表情に近づけますが、やはり時間を経て出てきた色とでは印象の感じかたは異なることが多いです。
そういう使い方ができる暮らしかたの楽しさ、そして、その楽しさをいつまでも見届けられる距離に私たちがいられることの良さ、そういう良さを見て取ってくれているからでしょうか、少し距離があるにもかかわらずこうして平成建設さんが声をかけてくださることをとてもうれしく思っております。
もうきっと良い色ツヤが出ている頃でしょうね。またお声掛け頂ける機会があるのを楽しみにしております。

コンロ側キッチンの上の吊戸棚
吊戸棚も内部はシナ合板無塗装。
コンロ側キッチンの上の吊戸棚
手掛け部分の印象。
サブシンク下の様子
今回特長的なのがコンロ側の一番右、ちょうど冷蔵庫の隣になる部分にサブシンクを設けていることです。なぜそうしたのかはこの時は設計士さんにお任せでしたので、聞き忘れてしまいました・・。冷蔵庫の隣だから調理の下ごしらえ用なのかな。水栓もお水のみの単水栓ですし。
コンロ側壁付けキッチン
コンロ側壁付けキッチンの全体像。
ブラックチェリーとステンレスのコンロ側壁付けキッチン
引き出しの様子。この時の引き出しのレールはソフトクローズレールではなく、一般的なベアリングレールを使っています。
スライドワイヤーシェルフの様子
ガスコンロ(リンナイのデリシア)の下はスライドワイヤーシェルフ。
天板 ステンレスヘアライン
扉・前板 ブラックチェリー柾目突板
本体外側 ブラックチェリー柾目突板
本体内側 ポリエステル化粧板/シナ合板
塗装 オイル塗装仕上げ
キッチン仕上げ

ブラックチェリー柾目とステンレスヘアラインのセパレートキッチン

費用につきましては、お問い合わせくださいませ。

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