風景に、生活にと馴染んでいます。

「引き戸のあるチェリー板目のリビング収納のオーダー」

八広 M様

design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:gakusuzuki

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

アメリカンチェリーの板目材を長手方向(今回は横長な扉が多いので横方向)に木目を通すことで、その流れるような表情を良く表すことができました。


リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

キッチンの対面カウンターのある壁から、バルコニー側までのリビングの壁につなげて製作した今回のリビングボードですが、色の濃さが与える影響は少なく、反対にチェリーの良い赤みが部屋全体を引き締めてくれました。

「フリーハンドイマイ様
初めまして。東京都墨田区のMと申します。
4年前に現在のマンションに引っ越して以来、ずっとリビング収納に頭を悩ませておりました。
何か好みに合う家具は無いだろうか?と、既成家具から製作家具、リフォームにいたるまでいろいろなサイトを巡りました。
なかなか「これ!」という家具に会えずにいた矢先、フリーハンドイマイ様のウェブサイトを見つけ、作成された家具に一目惚れしてしまいました。
以来「お気に入り」に登録し、ページを眺めるたびに気持ちが固まり、ようやくご依頼するに至りました。
以下、(素人が勝手に考えた)設計案です。(解りにくくて独りよがりな案ですが・・・)
○樹の種類:チェリー
○イメージ:
◎カウンター側(JPG参考)
1.吊り戸棚
・【幅】約175cm【高さ】72cm【奥行】35cm
・手前にダイニングセットを置くので、引き戸にしたい。(手を掛ける部分は、目立たないまたはシンプルな構造に)
・内部は可動棚を希望
2.カウンター下収納
・【幅】全長約220cm【高さ】70cm【奥行】35cm
※A 次ページのリビング収納右端、PCデスク部分とかぶる
※B 引き戸、可動棚
※C 引き出し、深さ・何段にするかは考え中
※D コンセントがあり、ゴミ箱を置きたいのでワゴンのような構造の物
各棚の幅はまだ考え中です。
◎リビング側(JPG参考)
3.吊り戸棚
【幅】約420cm【高さ】約52cm【奥行】45~50cm
引き戸・可動棚
4.テレビ台
【幅】約120cm【高さ】約50cm【奥行】45~50cm
テレビ関連機器が入れられる・引き出し
5.飾り棚
【幅】約80~90cm【高さ】約70cm【奥行】45~50cm
扉はガラス・ガラス棚・背面は鏡
6.収納棚
【幅】約110~120cm【高さ】約70cm【奥行】45~50cm
引き戸・可動棚
7.PCデスク
【幅】約100cm【高さ】約70cm【奥行】45~50cm
キーボード置き・下部プリンター置き・右奥収納
予算は、見積を出していただいて、金額によっては間を開けて一箇所ずつ造っていくかもしれません。では、よろしくお願いいたします。」

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

テレビボード。この部分だけは全体のデザインから良い意味で外れた形をしています。見附が見えるインセットではなく、引き出しが本体にかぶるアウトセットになっているのです。でも、上段の機器をしまう部分はオープンの棚。この部分を引き出しを閉めた時にオープン部分の見付と引き出し前板の前面を揃えるか、オープン部分の見付を引っ込ませるかで印象が変わるのです。

添付された写真に具体的に描きこまれた使い勝手を拝見させて頂きながら、私はいろいろと考えたのでした。
どういうふうにまとめようかな・・。
引き戸ってとても使い勝手が良いのですが、見附のライン(家具本体の正面部分である、天板、地板、側板の厚みのライン)が表に出てくるから、うまく考えないと、とても野暮ったい印象になってしまいます。たとえば、私たちの作る家具はこの完成された姿のままここに運ぶのではなく、運べるサイズごとに製作して、ここで組み立てていくのですが、ただただ箱を作ってつないで組み立てるだけだと、箱と箱が隣り合うところは、板が2枚重なって見えてしまうのです。扉が手前についている家具ならそれはあまり気にならないけれど。引き戸の場合は、重なっているほうが印象が良い場合と、板が1枚だけのほうが印象が良い場合があります。
「ここは、重ねてそのうちの1枚の板を厚みを○○mmにすると、良い印象になる。」
「ここは、1枚で見せる場所だね。」
それを全体のバランスを見て、お部屋の印象を見て考えていく、整えていくことが私たちの仕事なのです。ただ作ることができるだけではなく、それが良いバランスになっているか、それを見ることが難しいことなのです。

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

ガラス扉の框の見せ方は私が最近気に入っている仕上げかたです。どのように気に入っているかは、最近の製作例を比べてみると分かるかもしれません・・。 ガラスは、Mさんのご要望に合わせて面取りガラスを入れています。また、内部の棚板も、飾り棚として使えるようにガラスの棚板を入れて、背面にはミラーを張っています。

でも、今回Mさんに頂いていた添付写真やメールは、今まで4年間ここで使ってき手使い慣れた様子が分かるように描かれていました。
なるべく今の使い勝手を変えないまま、さらにうまくものがしまえる家具にしたい。
そんな気持ちが伝わってきたのでした。
そして、それが分かるということは、家具のプランを考えることが難しくない、ということです。その人の気持ちになって考えてゆけば、使いやすく、美しい良い形が見つかるって分かっているからです。
そうして、何度かやり取りさせて頂き、私たちのプランを気に入ってくださって、お部屋を拝見させて頂くことになりました。

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

このガラスの飾り棚も実は上の吊戸棚の荷重を下へと伝える大切な構造になっている部分です。比較的大きな面積の飾り棚になりそうだったので、吊戸棚と奥行きを変えています。 吊戸棚と揃えたほうが、凸凹感がなくなってきれいにまとまるのでは、と思われるところですが、あえてここを引っ込めることで、吊戸棚がしっかりと見えるので、反対に横のラインがきれいに通ってすっきり見えると思っています。ちなみに、以前食器棚を作らせて頂いた大宮のFさんも同じような納まりにしています。

このマンションへは新築時に入居されたのではなく、途中から入居されて、その時に少しリフォームされたのだそうです。
廊下に、ちょど腰高の高さに合わせて玄関からリビングまで、ちょっと変わったものがつけられていました。不燃のパネルです。
「うちには猫がいるので、リフォームの時に、壁に傷がつきにくいように施工して頂いたのです。」
なるほど。

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

ここは、パソコンデスクとなる部分。ちょうど角になって収納するには使いにくいスペースになってしまうのですが、今回はここに普段それほど使わないプリンタをキャスター付きのボックスの上に載せて収納しておくようにしました。

Mさんのリビングは、そのネコさんがいたずらする以外は、とても丁寧に暮らしている様子が見て取れました。お持ちになっている家具を拝見させて頂いても、これから作る家具のイメージともうまく合いそうだし、複雑な形状だけれど問題ないかな、と思われました。
壁にもネコさんのひっかき傷が無数にありました。実はこの壁リフォームの時に張り替えたのではなく、塗装したのだそうです。クロスの上からペンキを塗ると、ツルッとした感じではなく、いつまでも少し手につくような印象があります。この感触が彼の爪研ぎには良く合ったのでしょう。
「なぜかここに乗ってこの壁で爪研ぎするのです。それが目立ってしまって。リフォームの時は、壁紙を張り替えてくださると思っていたのですけれどね・・。」

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

キーボードは、普段はしまって置けるように、スライドテーブルにしています。

そこで、壁の傷を触ってみると、固く冷たい感触が。コンクリートですね。
一般的なマンションの構造であるMさんのリビングの壁は、少し前まで主流だったコンクリート壁に直接クロスを貼って仕上げるタイプの壁だったのでした。そうなりますと、共有部分ですので、この壁を私たちが工事で加工するわけにはいかないのです。どうしようかな・・。
その時、Mさんがこうおっしゃいました。
「イマイさん、この壁のひっかき傷も隠すことってできるのかしら。」
なるほど。
壁を工事できないなら、荷重を床に伝える構造にする必要が出てくるので、何かしら脚のようなものが必要になってきます。そこで、シンプルは補強の脚のほかにパネルを壁面に立てることで、傷を隠して、荷重も逃がそうということになったのでした。
でも、中途半端に壁をパネルで隠すと反対に野暮ったくなってしまうから、対面カウンターに関わる部分まで施工するとなると・・、うーん、形がより複雑になってしまったぞ・・。

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

キッチン側の壁の対面カウンターの下の収納部の一番右端を開けるとこのようになっています。ごみ箱をしまっておくのです。

パネルを入れることで数段難しくなった家具ですが、工場で製作を終える前に必ず仮組みをします。こうすると、現地での不足や問題をあらかじめ防げます。私たちの作る家具は、同じものがないので、頭の中でこうしておけばよいかなって思っていても、組み立てると見えてこなかった部分もあるのです。
今回のように中段に白いパネルを挟んで、さらに天井との隙間を数ミリで施工するとなると、いろいろと考えておかなければいけないのです。
(写真では、家具から天井まで50mmくらいあるように見えますが、その間に小梁が隠れているのです。小梁もコンクリートの構造なので、厄介なのです。何が厄介かというと、こういう小梁は左官屋さんが、鏝(こて)で仕上げるのですが、鏝の加減によって平面がゆがむ。特にバタバタした現場だと、壁面がゆがむゆがむ。そういう現場を今まで多く見てきましたが、このMさんの梁はそれほど歪んでいなさそう。でも、長さ4m近い長さだと数ミリきっと歪んでいると思われます。でも、あまり逃げちゃうと収納が小さくなっちゃうし、どうしようかな・・。悩みどころです。結局、小梁から5mmほど下げて吊戸棚を作ったわけですが、実際は家具を少し削らないと納まらなかったのでした。いろいろと考えていてもこういうことが出てくるのです。)
なので、必ず仮組みするのです。
その甲斐あって、朝から作業を開始して、残暑の陽射しが落ちる前にはどうにか完了。ふぅ、良かった。

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

パソコンデスク周りのちょっと複雑な納まり。こういうところをイメージでお伝えするのはなかなか難しいところです。

しばらくして、Mさんからお便りを頂いたのです。
「早いもので、取り付けてくださってから半月以上も経ちました。
当初は(見るたびに惚れ惚れしていましたけど)まだ見慣れていなくて、使い慣れてもなかったのですが、いまやもう「メガネは顔の一部です」のCMのように、風景に、生活にと馴染んでいます。
でもやっぱり、あらためて見ては惚れ惚れしています(*^_^*)」

リビングダイニングをL型につなげるチェリーの収納

後ろの壁が少し白いのは白い化粧板のバックパネルがあるからです。そして手前は補強の脚を立てています。脚は無垢材で作って白く塗りつぶしているので、あまり目立たず、かえってそれが良いポイントになっています。 また、テレビボードの一番左端は縦長の小さな扉が付いています。これは、上部にカーテンボックスがあるので、その幅に合わせて作った小さな収納なのですが、これも良く機能しています。開けると、壁にコンセントがあって、ここには、かさばるアダプターやあまった配線がぐるぐるとしまわれているのです。

チェリーのリビングとダイニングをつなぐ収納とデスク

価格:1,100,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は60,000円から)

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