Wさんのサイドボードを制作して:ヒロセ君の制作日記

2023.06.05

今回はブラックチェリー無垢材を使用したサイドボードを担当させて頂きました。

四台製作し二台を背中合わせにして二カ所の場所に設置するそうです。

ここまでふんだんに無垢材を使用して作らせて頂ける機会というのはなかなか無く、私達の工房では珍しい製作物になります。

無垢材を扱う際、私達の工房では「粗取」という作業を行います。通常、製作を始める一週ほど前、長く時間を取る必要があるものですと数ヶ月前にやったりする作業です。

粗取とは、一枚の板から使用するサイズより少しだけ大き目に切り分け、再び乾燥させる事により、切り分けられたサイズでの木の反りやねじれが出ないか、木の動きを見る作業です。

そして、粗取期間を経て落ち着いた木を使用する寸法に製材しています。

勿論、無垢材なので時期や天候によって生じる木の収縮や、反り等を避けきる事は出来ませんが、無垢材でのリスクを少しでも減らせればと考えております。

その無垢材なのですが、工場には丸太を割った荒木の状態の物が工場に運ばれてきます。原木の丸太を帯鋸で割った面はザラザラで反りやねじれもでている板です。

割れている部分を切り落としたり、白太の部分を挽き落としたり、反りやねじれを製材していくと使用できる巾や長さも全て異なってきます。

勿論の事ですが、無垢材は同じ樹種でも木の表情は全て違く、一枚として同じ柄や色味のものはありません。

完成した時に前板や前板上部の手掛け、扉、オープン部分の棚や背板など、家具を見た時に少しでも良く見える様、そして違和感の無い仕上がりになる様、予め使用する板の色味や柄を選別し、どこに使用するかを細く決めていきました。この作業も非常に悩み苦労した点となりましたが、やはり完成した時の雰囲気にも影響する重要なポイントだと考え慎重に割り付けていきました。

本格的に製作を開始してから納品予定までは1ヶ月程。なかなかタイトなスケジュールなので遅れを取らぬように一週間毎の作業予定を考え取り組みましたが、四台製作するという事と、どの部材にも様々な加工がある為、作業時間の読みづらさが非常に難しい点になりました。そして数物の為、何か一つでもミスをしてしまうと多くの時間と材料を無駄にしてしまうかもしれないという緊張感の続くなかでの製作となりました。

完成した形では見えないのですが、背板は9mm厚で本実はぎになっていたり、扉や棚には反りを抑える為に、はしばめ加工が施されています。脚部分に関しましても、勾配が付いていたり、Rの部分があり中々思うように捗らず、非常にやりごたえのあるもので、今回の家具製作は私1人の力では到底出来るものでは無く、応援で来てくれていたコバヤシ君をはじめ、スタッフのみんなにも手を借してもらったお陰で完成させる事ができたと思います。

製作期間中は、緊張感もありましたし、頭も手もフル回転で作業にあたっていましたので、正直楽しみながら製作をできる程の余裕は無かったのですが、完成した際には、最善を尽くせた仕事ができたたのではないかと思えました。

そして、納品させて頂いた後の今となっては、すごく楽しく、大変良い経験、勉強をさせて頂けたと思っております。

W様、ありがとうございました。

まだできたばかりの淡いピンク色の状態もすごく良いのですが、時間と共に色合いも変化し、深みを増し、この家具達がどのようになっていくのか大変興味があるところですね。