生まれ変わった箪笥

「タンスのリメイク」

茅ヶ崎 Y様

planning: daisuke imai
producer: hiroshi ito
painting: seiji imai

婚礼箪笥のリメイク

引き取ってきた扉。この扉の印象ががらりと変わったのがYさんとの出会いを良いものにしてくれたのです。

突然タンスの修理をしてほしいとお電話がありました・・・。
「きっと簡単なものだろう」と思っていたのですが実際に拝見させてもらうと、35年も使い続けてらっしゃると言うYさんのタンスはかなり傷んでいました。
引き出しは、すり減って扉も少し傾いてきていました。ご主人は、「もう永い間がんばってきたのだから十分じゃないか。」と思っていたのですが、奥さんは「結婚祝いに母がくれたものだからできればこの先も使い続けていきたい。」と言われて、ではタンスのお化粧直しをして見ましょうということになりました。
お化粧前の写真をとり忘れてしまったのが、本当に残念です。ちなみに元の扉を工場に持ち帰って取った写真が上です。
ステインで着色してありその上にラッカーを吹き付けた仕上がりになっています。35年たった今でもとてもモダンな形をしていました。木目の部分の塗装もあまり目立たないように抑えめにしてあって先日リフォームしたばかりという和室には落ち着いた感じが似合っていました。奥さんもこの木目があまり目立たない感じが気に入っていたらしく、「できれば同じような感じにしてほしい。」と言われました。
私は、「難しそうですね、オイルフィニッシュですとどうしても木目が浮き立つような仕上がりになってしまいますができるだけやって見ます。」といったのですが・・・。

婚礼箪笥のリメイク

どのように治していくのかを打合せながら描いたイラストです。 まずどのように治したらよいかを私自身も半ば手探りの状態で打ち合わせたものですから、一つ一つを書き留めてプランを練っていかないと分からなくなりそうでした。 リメイクというのは、できることに限りがあるので、新しく家具を作っていくよりも大変なのです。だから、分からなくなる前に全て書き留めます。

打ち合わせの結果、どのように直していくことになったかといいますと、扉や引き出しだけではなくタンスの見え掛かり部分もいろいろと傷んでいたのですが、本体を全て治すことはせずに、扉や引き出しの前板をインセット(本体と全面を揃えて扉や引き出しをつける見せ方)からアウトセット(本体の手前に扉や引き出しをつける現在主流の家具の仕上げ方)に変えて、中央にガラガラと動く3面鏡になっている引き戸があるのですが、それをやめて2枚の引き違い戸に変えて、引き出しが重いのでスライドレールをつけたものに変えて、扉は新たに作り直して、引き出しも前板と共に作り直し、元のイメージを残したいので塗装色を合わせて、またもともと使われていた使われていた取っ手を活かす、ということになりました。なかなか難しそうです・・・。

婚礼箪笥のリメイク

元々ついていた三面鏡。 これはとても良くできた形だと思っておりましたが、Yさんにとっては、「もう必要ないの。」ということで。

婚礼箪笥のリメイク

こちらのように引違いの戸にしたのです。 元々引き戸用の溝が1本しかなかったので、溝をつけるための部材も製作して、なかなか良いアイデアでした。

婚礼箪笥のリメイク

引き出しも今までは、桂でできたしっかりしたものでしたが、長年使ってすり減って、底板も抜けかけていたので、スライドレールをつけた引き出しに作り替え。

一番左のタンスの引き出しは扉の内側に納めてさらにスライドレールをつけた分少し幅が狭くなってしまいましたが、引きも軽く、見た目も軽く、使い勝手もとても良くなりました。
中央下部の引き出しはスライドレールをつけて前板を新しくしました。実はもともと摺り桟の引き出しで作られていたフラッシュ構造のタンスですから当然スライドレールをつけるための下地は入っていませんでした。そこで下地になるようにスライドレールを取り付ける位置に新たに木を接着してそれにレールを固定しました。
引き出し自体も側板が外れかかっていて底板もしまっていた洋服の重みでたわんでしまっていましたので底板を厚くした頑丈な引き出しに作り変えました。
引き違い戸の部分ですが、元々この部分は3面鏡になっている引き戸が一枚ついていてその引き戸を片側に寄せるとその反対は中身が見えてしまうような作りになっています。
現在は本が沢山しまわれていて、この様子が外から見えてしまうのが嫌なので隠すような工夫をしてほしいと言われました。一番簡単なのは両開きの扉にしてしまうことなのですが、そうするとものが飾れる手前のスペースがその扉を開くたびに活かせなくなってしまうので引き違い戸にしたのです。

婚礼箪笥のリメイク

こちらも引き出しを引き出しを吊るレールをを取り付けるための下地を造作

とてもモダンな印象に生まれ変わりました。元からそういう印象があったタンスですが、実際に扉や引き出しをセットしてみるとセンの木目がきれいに浮き出て(やはりオイルフィニッシュは木目を際立たせます・・。)その模様をハンドルが引き締めるような感じになりました。
Yさんとも完成後いろいろと話したのですが、「なぜ、こんなにモダンな印象になったのだろう?」と皆で不思議がっていました。私たちもそのような仕上がりを意図していたわけでもなく、またこれほどまでにきれいになるとは思ってませんでした。Yさんも「こんなに変わるとは思ってなかったよ!!」ととても喜んでいただけて、私も思わず「私もここまで変わるとは思っても見ませんでした。」と思わず言ってしまいました。

婚礼箪笥のリメイク

「何か残せる部分があれば思い出にできるからいいわね。」とYさんがおっしゃっていて、、では引手を残そう、ということに。

最後に取っ手のことですが、このタンスに使われている取っ手はケヤキでできた丸い飾りがついていてその上に鋳物のハンドルがついたものでした。このケヤキの飾りを取り外すのが大変で取り外しているうちに2,3個はかけて壊れてしまいました。幸い、引き出しを扉の中に納めた部分の余分が出てきましたので数には余裕がありましたが。
取り外したケヤキの飾りに合わせて扉を丸くくりぬいてそこに接着し、ハンドルを取り付けました。

婚礼箪笥のリメイク

費用については、お問い合わせくださいませ。

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