さりげない仕草で
「ナラランダム張り突板とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン」
葉山 H様
design:Hさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:kenta watanabe
湘南に住む方々からのキッチンの依頼が増えてきたように思えるのです。
世間で言われているように、コロナ禍になり始めてからでしょうか、そういうお話を良くいただくようになったのは。
Hさんからもそういうタイミングの中でご相談を頂いたお客様のおひとりでした。
2018年に逗子のAさんのキッチンを作らせて頂いた時にお世話になった施工会社の営業担当者さんからお電話を頂いたのでした。
「以前、Aさんのところを施工した工務店の営業担当のHと申します。実は、今度私たちで逗子に新築戸建てを建てるHさんのキッチンを相談させて頂きたいと思いまして。」というお話で、さっそくHさんとお会いすることになったのでした。
さっそく茅ヶ崎の事務所にお伺いすると、お久しぶりにお会いするHさんと、まだお若いご夫婦と小さなお子さんが私を迎えてくださいました。
今回のHさんの場合は、大まかなレイアウトは決まっていましたが、キッチンの詳細については今日ここに来るまではまだ何もお聞きしていなくて、工房のショールームの打ち合わせと違って、お見せできるものも限られたサンプルを持参したくらいですので、さてどのようにお話を進めようかなと思いながら、「はじめまして、フリーハンドイマイの今井大輔です。」とご挨拶をさせて頂きました。
「はじめまして、イマイさん。実は、イマイさんのキッチンはウェブサイトでいろいろと拝見させて頂いておりまして・・。」と軽やかに奥様がお話を始めてくださいました。
「ここはもう妻の領分ですから、お任せしますので。」とご主人は、お子さんの子守りに。
なるほど、ありがとうございます。
そうして、奥様からいろいろなご要望を頂くことができまして、ひとつの原案ができあがりました。
ただ、キッチンというとそう気軽に決められるものではないと思います。
金額も高価ですし、具体的に思い描いている形が実際はどのようなものなのか、実物を見て判断して頂くことが一番大切だと思いますので、この原案をもとにコストを考えてみて、もしオーダーキッチンでも話が進められる場合は、まずは私たちの形を見てもらうということになりました。
見て頂くことで、Hさんにはそういう気持ちはなかったのですが、私たちがオーダーキッチンを作り始めて約18年になりますが、それでもいまだにキッチンに木を使うことに抵抗を感じる皆さんもいらっしゃいますのでそういうメリットとデメリットを実際に感じてもらったり、引き出しの開け閉めの具合や木の触り心地や天板の使い勝手など実感してもらうことでより理解が深まります。
そういう言葉やスケッチでは伝わりにくい部分をその日はHさんに知って頂いて、こうして正式にご依頼を頂けることになったのでした。
今回のHさんの住む町は葉山の小高い丘の上の静かな住宅街。 上棟してしばらく経った頃に現地確認に伺わせて頂きました。 キッチンは2階に設置するということで、搬入経路を見させて頂きましたが、今回に限ってはバルコニーから上げるのはなかなか難しそうですね。 特に今回はHさんの家がバルコニー側は敷地ぎりぎりまで建っていて、そのバルコニーのすぐ下は、Hさんの立地よりも少し下がったところにあるお隣さんたちが共有する私道になっているのでした。 特に監督さんから言われていたのは、この私道の突き当りにお住いの方にいろいろと注意されることがあったそうで、なるべくならこの私道からの荷揚げは行なわないでほしいというお話でして、そうなると階段を利用しての荷揚げとなるのですが、少し回り込んでいく予定の階段だとそれも難しそうです。 そこで、階段を設置する前にキッチンの搬入ができるように監督さんにお願いして工事に入らせて頂けることになったのでした。
こうして、制作のスタートです。
今回制作にあたって、2つの注意点がありました。
まずは食洗機。
ちょうど数年前にコロナ禍で食洗機の流通が滞ってしまった時期がありました。
さいわい、ASKOだけは取り扱える状況で、一時期はASKOの食洗機を導入させて頂いたお客様が多かったのです。
国産品はというと、以前から引き出し式のパナソニックの食洗機は人気がありましたが、海外製のものが品薄になったこともあって国産のフロントオープンを希望される方が増えてきていた時期でもあります。
昔は、ハーマン製のものが出ていたのですが、それが無くなって代わりにリンナイから同タイプのものが静かに作られておりました。
そのフロントオープンですが、少し気になるのが、正面のパネルにシルバーや黒の縁が出てしまうのが気になるところでした。
最近の食洗機は、キッチンの表面材と同じ仕上げに揃えられて、まるで食洗機が入っていないように見せることもできるのですが、この縁が少し目立つのでした。
それがこのところリンナイがモデルチェンジをして縁が出ないタイプの製品を発売し始めたのです。
ところで、細かいお話ですが、このリンナイのフロントオープンは給排水の接続が少し複雑です。パナソニックもそうですが、国産の食洗機は基本的に食洗機を設置するスペースの中で給排水の配管を行なうように施工書に書かれています。
海外製の食洗機は食洗機が設置されるスペースの隣に給排水スペースを設けます。
メンテナンスの簡便性を考えると、食洗機の下の狭いスペースで作業をするよりもシンクの下などの隣のスペースで作業ができるほうがやりやすいと思いますので、なので、場合によっては国産の引き出し式のものなら直下に配管するのではなく隣のスペースに配管することもあったりします。
話がそれましたが、このリンナイのものは、直下で配管しながらもフロントオープンできるような機構になっているため、食洗機の内部を配管が通る構造になっていまして、配管してくれる設備屋さんとしては、説明書通りに事前配管するのをためらう方もいらっしゃるのです。たしかに実際の食洗機の通り道を見ないで配管しておいて、実際に合わないとなったら設備屋さんもつまらないですからね。
ですので、このあたりは監督さんといつも以上に相談しながら進めていきます。
(今のところは、正面パネルも仕上げた状態で食洗機を仮に設置させて頂いて、設備屋さんに配管位置を実測してもらってから一度引っ張り出して配管をしてもらう、という方法が多かったりします。)
もう一つがガスコンロ。
Hさんにショールームにいらして頂いた時に、私たちのキッチンに設置されているIHヒーターの納まりを見て頂いたのです。
本当はグリル付きガスコンロを入れたかったのですが、ショールームには木製品が多いのでなかなか直に火を出すことを躊躇したり、レンジフードをつけることができなかったり、ということでグリル無しのシンプルな三菱の「CS-T34BFR」というIHヒーターを入れています。
代わりに魚焼きグリルがつく部分には分かりやすいように格子状の引き出しをつけています。
この引き出しを開けると、IHヒーターの熱を遮るために引き出しの上に棚板を設けているのですが、その収納の形をご自宅でも実現したい、ということでした。
その形を組み入れて制作を進めていったのでした。
こうして、制作が完了したころに現場の状況を伺って、ちょっと時期は早いですが階段ができる前に工事に入らせて頂けることになりました。
現場は、取り急ぎ2階の大工工事は大方終わっている状態で、階段も半ばできあがっている状態で手摺となる壁がないという一番良い状態で搬入させてもらえることに。心配だった長さ2600ミリあるコンロ側のステンレス天板も無事に運び込むことができてひと安心。
無事に設置が完了しました。
後日、お引っ越しが終わったHさんのところにメンテナンスの方法のお知らせとご挨拶を兼ねてお邪魔させて頂きました。
ひと通りご説明した後にご主人が食卓に案内してくださって、いろいろなお話を聞かせて頂いている時に、奥様が自然とにこやかにそして仕草がさりげなくお茶を用意してくださっている姿を見てとても快適に使ってくださっている様子がよく分かりました。
うれしい時間でした。
天板 | ステンレスバイブレーション |
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前板・扉 | ナラ板目ランダム張り突板 |
本体外側 | ナラ板目ランダム張り突板 |
本体内側 | ポリエステル化粧板 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
ナラランダム張り突板とステンレスバイブレーションのセパレートキッチン
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。