館長さん、楽しそう
「デクトンとホワイトオーク板目無垢材のアイランドキッチン」
三郷 K様
design:シキナミカズヤ建築研究所/Kさん
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe
シキナミさんから久しぶりにご相談を頂いたのです。
今回もキッチンということですが、シキナミさんのお話はいつも少し珍しいご職業の方が多かったりして、楽しみでもあり、緊張もするのです。
ちなみに私もシキナミさんも同じ東海大学の同窓で、たしかシキナミさんは私の1歳違いで、と言っても私は通い始めて3ヶ月ほどでやめてしまったので在籍さえもしていない形なのですが・・。これほど環境が近くても通る道は違うのだなあといろいろと考えさせられるのです。
今回のお客様は、美術館の館長を務めていらっしゃるKさん。
それは素敵なお仕事をされていらっしゃって、食事のこともなにかご自身のなかで整った考えがあるのかしら、と思っていたのですが、「いやあ、僕はそれほど料理をするというわけではないので、キッチンなんて言うと大それてしまうから台所みたいな感じが良いのですよ。」とKさん。
では、何をきっかけにして形を考えてゆこうかと、少し思い悩みます。
キッチンをオーダーして作りたい、と熱望される皆様だと、いろいろな意見がここであふれ出てくるのですが、そうか、オーダーというのも良いよね、というまだ温まり始めた(のかどうか)鉄を鍛えていくのはなかなか難しい。
シキナミさんもどちらかというと、その道のプロフェッショナルにはお任せしよう、という心意気なのかあまり口を挟んでこないわけで、どうやって取り掛かるべきかなあ。
ましてや、ご年配の男性となると、むしろ私よりも人生経験が豊富なわけですから、何か得意げに提案しても「この青二才が」なんて思われてはいけませんので、いつも通りに私たちができることを一つずつお伝えすることにしました。
そういう話の中で、食事も大事だけれど、お酒も大事という話が出てきまして、キッチンの中に気に入ったお酒が置いておけたら良いかもしれない。なんて話が出てきたら、敷浪さんもそういうときは大きな声で「それは良いですね、ここに置けるようにできたら素敵だなあ。」とキッチンの作りが複雑になる方向に形が決まっていったりして。
「あとは、物を取る時に隠しちゃうと分からなくなっちゃうじゃない。」とKさん。「だからなるべくわかりやすい位置に食材だのなんだのっておいておけたらいいなと思うんだよね。例えばこのあたりにね。」とキッチンの端を指さすKさん。
「ここだとキッチンからでもダイニングからでも見通しが良いじゃない。筒抜けになるような棚になるとよいよね。」
すると、おもむろにシキナミさんも大きな声で入ってきて「それは良いですね、ここの棚板が出っ張っていたら物がどこからでも取り出しやすいですものね。」とまたまたキッチンの作りが複雑になる方向に。
「あとはこの天板は良いね、周りが木で囲われている印象に温かみがあって美しいし。」と私たちのショールームに置かれているオリーブグリーンという御影石を使ったキッチンを天板とサイドパネルやバックパネルの納まりを見て、Kさんがそうおっしゃいました。
「ただ、木の板がまわりにぐるっと出っ張っちゃうと向こう(ダイニング)から物を取ろうとしたときに突っかえちゃうかもなあ。」とKさん。
すると、おもむろにシキナミさん。「それなら木の縁が回っているけれど天板とツライチになるというのはどうでしょう、イマイさん?」それはかなり難しそうだ・・。と思うのでしたが、「ううん、できない形ではないですが・・。」とお伝えすると、シキナミさん三たび大きな声で「それならぜひやりましょう。」ということでシンプルなのですが、今までにはない形のキッチンがこうして生まれたのでした。
今回、このキッチンを作るにあたっては、こういう納まりの複雑な部分を無垢材で細工していくことの難易度はありましたが、制作を担当したワタナベ君と一つずつ工夫を重ねて形にできたのでしたが、大きく悩ましいことに搬入がありました。
過去には2度割ったり、割られたりしてしまったことがあるので、最近はようやく手馴れてきましたが、クォーツストーンやセラミックなどの硬い素材を運ぶのはなかなか気を使うのです。
今回は特にセラミックの裏打ち合板無しの納まりでしたので、セラミックだけで運ぶのはかなり怖いのです。
それからセラミックは重いのです。Kさんのキッチンは2階。
上棟後しばらくして現地確認に伺ったのですが、幸い2階に上がる階段は一直線で回り込まないような構造でしたので、そのまま階段から上がるだろうと思い込んでいたのですが、実際設置工事に来てみると、セラミックを割らないようにがっちりと木枠で固めた状態では大きすぎて運び込めないことが分かったのでした・・。木枠を外して荷揚げをすれば確実に割れてしまうことは分かっていましたので、こうなったら、足場を部分的に解体してバルコニーから揚げるしかないのでした。
さらにはKさんのバルコニーにたどり着くには、現時点で解体できない足場が邪魔になって向こうに抜けることができないため、バルコニーのある庭の前の流れる用水路を使うことに。
現場の少し先の駐車場から水夫が船を担ぐようにしながら、私とノガミ君、ワタナベ君、ヒロセ君の4人で頭上に掲げたセラミック天板を用水路の桁を渡りながら恐る恐る運び込み、さらには2階に上がれる足場を少し解体しつつ、皆で顔を真っ赤にしながらようやく荷揚げできたのでした。
いやあ、怖かったです。
できあがったキッチンの姿はシンプルに美しいですが、この形になるまでは汗にまみれたみんなに小さな一つずつの積み重ねなのです。
こうして無事に納まってひと安心なのでした。
天板 | セラミック「デクトン ケオン」 |
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サイドパネル | ホワイトオーク板目無垢材 |
バックパネル | ホワイトオーク板目無垢材 |
前板 | ホワイトオーク板目無垢材 |
本体外側 | ホワイトオーク板目突板 |
本体内側 | ポリエステル化粧板 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
デクトンとホワイトオーク板目無垢材のアイランドキッチン
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