
大雑把な思いつきではないですよ
「タモとカラーフィットグレーポリの本棚」
埼玉 I様
design:Iさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:honoka takeishi

「寝室の隣にある「ウィルスペース」という2.8帖の小部屋に、机・本棚を設置したいと考えています。
・建具(白い化粧板)に合わせた素材
・収納力が豊富に欲しいので、壁一面に本棚設置
を考えています。イメージに近いのは、「お土産」湘南台のTさんの事例でした。
後日お伺いするご連絡をさせて頂きましたが、可能であれば本内容で概算見積のご準備等いただけると幸いです。」
本棚は久しぶりな気がします。

私の父が創業したこの工房ですが、父が独立当初は周りの同業の皆さんからの声掛けをして頂いて、いわゆる下請けのような形で家具というよりも什器の制作が多かったのでした。もう30年以上も前の話ですね。
私が勤め始めた頃もやはり店舗什器の仕事がメインでなかなか「家具を作っている」という思いとは離れた仕事が多かったのですが、インターネットとか、ホームページとか、HTMLとか聞きなれない言葉が次第に広まり始めた頃に自分なりに作ってみたウェブサイトがだんだんと皆さんに見てもらえるようになって、今こうして個人住宅向けの家具を主に作らせてもらえるようになってきて、当初は壁面収納やテレビボードなど収納家具を多く作らせて頂いていたのですが、ある時期からキッチンを作らせて頂く機会が増えて、今はこうしてオーダーキッチンを作らせて頂く仕事が主になっているのでした。
ですので、壁一面の本棚、なんて聞くと何だか懐かしく思うのでした。
写真を拝見すると、こじんまりした空間ですが窓もあって明るい部屋です。壁の色も少し淡い色に彩られていて、心地よい書斎を作るのですね、Iさんのイメージとしては。
頂いた資料を基にまずは大まかな形を伝えて、その形がどのくらいの金額でできるのかをお知らせしました。
具体的には、窓のある幅の広い壁面には一面を使った大きな本棚を作って、もう一つの窓のある幅の狭いほうに長めの机を据え付ける、というシンプルな形です。
素材も木目調のオレフィン化粧板を使った形でどのくらいになるのかをお伝えしたのでした。
そして、その返事を見て頂いて、一度こちらまでいらしてくださることになりました。

最初のご相談は奥様だったのですが、この部屋を活用したいといろいろと考えていらしたのはご主人。
こちらに来られる前に奥様からこのようなメールが。
「サイズなど、詳細な要望を事前にお伝えしようと考えていたのですが、どうやら発案者の夫いわくメールでの言語化が難しいとのことですので、お打合せの場で図示等してお話させていただけると幸いです。」
どのような形を思い描いているのでしょうか・・、本棚と机となると、この形がシンプルでよさそうに思えるところでしたが。
と、当日を迎えて、まだお若いIさんご夫婦がいらしてくださいました。
ショールームにはだいぶ前に作った本棚があります。
シンプルな形なのですが、ぎっしり本が入っているわけでもなくて、小物を置く飾り棚のように使っているのですが、また、ひとマスが正方形に近いようなサイズ感で作ってあるためか、そのゆったりした印象を気に入ってくださる方も多くて、その人その人の形をアレンジしていくベースとなる本棚だったりします。


そのサイズ感を見て頂いて、ゆったりした印象で作るか、反対に本のサイズに合わせてぎっしりとしまえる形で見せていくかをいろいろと検討しながら、そしてご主人のいろいろな思いを聞かせて頂けたのでした。
そして、まとまっていった形がこの部屋をぐるりと囲うように設置された本棚だったのでした。
壁の二面に家具を作り込んでいくだけでもなかなか難しいのですが、最終的には四面とも家具を作り込んでいく形となり、うーん、なかなか逃げのない形になっていったのでした。
今までも、三面の壁を使って家具を作ったことが何度もあります。
たとえば、思い出深い形は本棚とテレビボードが組み合わさったような形の調布のKさんの家具。
でき上ってしまうとシンプルな納まりに見えるのですが、住宅の壁は直角になっているように見えてもわずかに角度がついていることがあるのです。
この時もベンチのバックボード部分がすんなり納まらなかったので削りあわせたのでしたね。
このような形が長さが2メートル以上になると、元が1ミリの誤差でも先端では数ミリ、10ミリくらい違ってくることもあったりします。そのまままたもう一面の壁に向かって家具を作るとなると、もっと角度が歪んでくる。
そういう状況でもある程度角度が調整できるように逃げを作っておくのが一般的な作りで、そのために数ミリ隙間を設けるのです。
その隙間で角度を吸収して壁にピタッとセすることができるように矯正していくのです。
そして、その隙間は後で家具の仕上げ材と同じ材(通称フィラーと呼んでいます)を使って埋めていくという進め方が造り付け家具の考え方です。

でも、本棚って扉がついていないことが多いのです。
扉がついていない形に隙間を調整する材をつけていくと、けっこう野暮ったく見えてしまうことが多いのです。
板が二重三重に重なって見えて、納め方によっては市販の家具を並べただけのように見えてしまう可能性も出てきます。
扉や引き出しが付く部分だと、隙間を埋める材は奥のほうについて見えるので、あまり目立たないのですが、オープンの本棚などは結構目立っちゃう。
ですので、その部分をなるべく少なくしたいのですが、あまりに少なくすると、壁の歪みで家具が入らないこともあったりして・・。
過去には何度もそういう経験があるものですから逃げを見ておかないと怖いのです。
そして、壁の角度までは採寸の時点ではなかなか読めない部分でして、こうして家具を据え付けてみて初めて見えてくることが多いのです。
ですので、今回はフィラーをなるべく目立たない位置で付けられるように工夫をしたのでした。

また、この部屋は2階のさらに寝室の奥にあるということで搬入経路も限られていましたので、小分けに作らないといけません。
小分けにした家具を現地でつないでいくのですが、接着して組み立てていくのではなく、何かの際にはまた分割して取り外せるようにしたいと心掛けていますので、そうなると板同士をネジで固定して家具同士をつなぎ合わせていくのですが、その板同士が見えてしまうと野暮ったく見えてしまうので、なるべく最小限のラインで見せられるように考えていくのです。
また、ミニマルな納まりを目指しながらも独創的な形もIさんとの会話で生まれたのでした。
当初考えていた大きなデスクは、ご主人一人が使えればよいという方向になり、ただ、本棚の形を考えているとかなりコンパクトな机になってしまっていったのでした。
実際に現在使用していた机は小振りなものでしたのでサイズ感はそれでよかったのですが、その小さなサイズでも壁の幅からはみ出てしまうわけで、はみ出る形で作りつけるのは納まりが良くないなあ、どうしようかなあ、と思い悩んでいたところ、ご主人が面白いアイデアを提案してくださったのでした。
サイズの違う入れ子式の机にしておくことで、この場所以外で使いたい時でも柔軟に対応できて、収納するとコンパクトにしておけるという少し変わったかたちがこうして生まれたのでした。
こうして、この3畳弱のお部屋に彩り豊かな書斎が現れたのでした。
そして、その書斎を使い始めたIさんからうれしいお便りをいただきました。
「さて、本棚・吊戸棚・机の設計・制作・設置まで、大変ありがとうございました。
長年物置にしていたスペースが、素晴らしい空間になりました。
私の大雑把な思いつきを、細部までご丁寧に具現化していただき、ありがとうございました。
壁との隙間無く、しっかりと厚みを感じる美しい木目の天板が水平に伸び、引き戸の木目が揃っており、小口や取っ手等の細かい部分に至るまで美しい棚に、妻と二人で感動しておりました。
今後どのように使おうか、過ごそうか、うっとりしながら毎日眺めています。
メンテナンス方法や使用上の注意点をメールで教えていただき、ありがとうございます。
台座のゴム部分に早速フェルトを貼りました。
また、設置工事初日の金曜日の日は私が留守にして、ご挨拶できず、すいませんでした。
お忙しい中、何度も埼玉県まで御足労をおかけして恐縮ですが、物置から書斎に変わった空間をイマイ様に実際に見ていただけるのを楽しみにしております。」
Iさんありがとうございました。
タモとカラーフィットグレーポリの本棚
価格:1,450,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は100,000円から)
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