Fさんのキッチンを制作して:スタッフ ノガミ君の制作日記

2025.01.04

お正月の三が日が過ぎ、今日から仕事始めの人もいらっしゃるのではないでしょうか。スタッフノガミ君が制作日記を書いてくれましたので、ここでご紹介させていただきたいと思います。

私たちは、お客様がそのキッチンがある住まいの中でどう過ごしていきたいか、お客様の望む暮らしのお話を聞かせていただき、お家の間取りやお好みに合わせて提案させていただきデザインを考え、一つ一つの形を考え、家具職人が一人一台担当制で制作をしている家具工房です。

ご自身で壁の塗装をされたFさん。まだ塗装前に伺った時のお写真を使わせていただきました。

【Fさんのキッチンを制作して】

今回のキッチンはずいぶん前から話題にあがっていました。
「大変そうなキッチンの仕事がある」と会社の食事会で社長がたびたび話していたのです。

(Fさんからお問い合わせをいただいたのは2022年のことでした。納品は昨年2024年の10月でした。)

しばらくしてその話題も忘れてしまいそうな頃に図面が渡されました。
それはコの字型のキッチンで、それぞれの正面図を見てみると収納の仕方やデザインなどがさまざまで、三面とも特徴があり、その一面だけ見てもいろいろな要素があって、これらがひとつのキッチンになるとはとても思えない図面でした。

扉や引戸もあり、その引戸もサイズが様々で使う金物が違ったり、深さの違う引出しもあり、吊戸もあります。

いくつもの個性豊かな家具が集合してそのキッチンを形成しているかのようです。

たしかにこれは大変だと思いました。

また、今回のキッチンは床が土間なので給水などの配管は床下に隠ぺいする形ではなく露出していて家具の中を通ります。床の壁際に配管してあるので、それを避ける形で家具を作らなければなりません。

四角い箱を作るのは割と簡単ですが、欠き取りや仕切りや段差などがあるとその分の加工が増えて作り方も複雑化していきます。

どの様なアプローチで組み立てていくか、それぞれをジョイントしていくかとても悩みました。
今までの作ってきた家具の経験を踏まえながら作り方を考えていきます。

まず、社長との図面の打ち合わせから木取り表までで3日もかけてしまいました。

そして、作り始めてからも気の抜けない作業が続きます。
手順を間違えると成立しなくなってしまう箇所もありましたがヒロセさんの手を借りつつ、個性豊かな家具たちを注意深く作りあげていきました。

作っているなかで思い出深かったのは、シンク下の上吊引き戸の振れ止めです。既製部品では対応出来ない仕様でしたので、対応可能にする部品の形と寸法を考え、いつもステンレスの天板を作って頂いている高橋製作所さんに特注で作ってもらいました。
これは初めての経験でしたので仕込み終わる最後まで緊張していた箇所でした。

そして、キッチンの取付。通常なら2日間取るところを今回はコの字ということで、現場での調整も多く出ると見込んで3日間のスケジュールにしてもらいました。
そしてコの字ですので、寸法の逃げを見て置きづらい部分がありますので、キッチンの寸法と部屋の寸法が合っていないと納まりません。このあたりは、現場監督さんと大工さんと連携をとり一部壁を付加してもらったりして、お陰様で無事に取付けることができました。

取付終わってから気づいたのですが、あんなに個性豊かな家具の集まりだったはずのキッチンですが不思議と統一感があり空間に馴染んでいるように見えました。

自分はデザイン的なことは良く分からないのですが、おそらく大理石の天板がキッチンの表情をまとめてくれたのだと思います。
またキッチンには珍しいお部屋の大きな窓からの景色も相まってすごく居心地のいいキッチンに仕上がった様な気がしました。

今回はお客様の喜んで頂いた姿や私たちに頼んでくれた経緯のお話を直接聞くことができて、このすてきな空間作りに関われたことをよりうれしく思いました。

Fさん、ありがとうございました。