
アイの入院
2025.02.10
そうそう、やっと日常に落ち着いたので。先日アイが入院したのでした。
写真の手前のずんぐりしたシルエットはチャロ。まだシロが元気にここに通っていた頃に仲が悪いのによくここにきてはご飯を食べていたっけ。時々撫でさせてくれたけれど、ポンポンと弾力のあるお腹が特長でした。
その奥に映っているのはアイかなあ。でもおでこに一文字の模様がないから、隣の畑あたりに住んでいるアイそっくりの子だろうか。そうするとその奥にぼんやり映っているのがアイかな。
アイはいつからここに来たのか忘れてしまいましたが、この写真は2014年。ほかに写真を見返すとショールームで撮ったものがあってそれは2015年。この頃にはもう生後半年から1年くらい経ったような大きさに見えるから、今は11歳くらいなのだろうか・・。人間でいうと私よりも少し年上なくらいかな。
アイは最近夜通し出かけてしまうことが多く、ネコはネコ、ヒトはヒトでよいと思っているので、放り出したまま工房を閉めて帰ってしまうのですが、翌朝になるといつも元気に帰ってきて、ご飯を食べてひと眠りをしたらまた日なたに向かって歩いて行ってしまう。気ままに様子が私は気苦労無しでよいと思うし、アイもストレス無しのように思える。
しかし、朝、出社するとアイの声がどことなく小さい。鍵を開けるといちおう元気に一緒に階段を上がって行ったのだけれど、よく見ると口の周りがもさもさしている。
なんだ毛束でもくっついちゃっているのか、なんて思ってぬぐってやるとそれはよだれで口の周りがガサガサに濡れていたものだった。
どうしたの、と聞くと、どうやら口が閉じられないらしい・・。なんだろうと思って口の周りを開けてみたり顎を触るけれどよく分からずアイも特に反応しない。しかしよく見ると犬歯の1本が少し内側に曲がっていてそれが口を閉じようとすると下あごに当たってしまう。これか・・、なんて思って犬歯に触れたら「ぎゃっ」と大きな声を出した。「ああ、ごめん!」と謝るとすぐにいつものしずかな様子になったのだけれど、口が閉じられないからご飯がうまく食べられないらしくいつものような食欲を見せずにすぐに眠り込んでしまった。どうしよう・・。
「いやあ、もし事故にあったり病気になったらそれは自分で選んだ道の途中で起きてしまったことだから仕方ない。それよりもここに家の中にかくまってしまうことのほうがネコにとってはストレスのように思えてしまって。だから病院なんてほぼ連れて行ったことないのです、はははっ。」と、ネコもヒトもお互いの深く関らないほうがよいのです、なんて猫と建築社さんにも話したことがありましたが、本当はネコを病院に連れていくことが怖いのでした。
もともと、この工房には絶えずネコが出入りしていて、ここに工房を移る前の場所では最盛期は13匹のノラさんが入れ替わり出入りしていた時期もありました。ご飯をあげているだけの間柄でしたが、やはり情も移ってきます。時折来ていたボスネコなんかは、どこでケンカしたのか傷が膿んでそのまま額が割れてしまっているのに元気にご飯を食べくる子だけは貫禄があって誰も寄せ付けなかったのでそのままでしたが、子猫たちが時折具合が悪くなると、やはり苦しそうにしているのはかわいそうでしたので、父と一緒に当時はいろいろな病院に出かけることがありました。
いろいろなというのは、どこの病院で見てもらってもよい結果にならなかったことが多かったからでした。入院中に感染症にかかって無くなってしまった子や診察に連れていったら触診中に痛がってそのまま息を引き取ってしまった子までいました。もちろん先生たちは最善を尽くしてくれたのだと思うのですが、自分がここに連れて来なければもう少し長く生きられたのではないだろうか・・、なんて思ってしまうようになって、病院に連れてくることが怖くなってしまったのでした。
だから、ちょっと具合が悪くなるくらいなら猫だからきっと自然と元気になるさ、と思ってきて、実際にアイは具合が悪くなっても数日でケロッと元気になることが多かったので安心していたのですが、やはりこうして不自由にしている様子を見るとかわいそうだなあ。
そこで、このあたりのネコ事情にも詳しい父に相談して岡田にあるブリスペットクリニックさんに連れていくことに。
「外傷が無くても歯だけがこれほど曲がることもなかなかないので、ひとまず全体を調べてみましょう。」ということで検査をしてもらうとやはり健康な様子。少し食べすぎなくらい。歯が内側に向いてしまった原因は分からないのですが歯茎はやはり少し腫れているようで、悪さをするといけないし、これだと生活しづらいだろうということで抜歯することに。大丈夫だろうか・・
その日の夜はやはり見知らぬネコが夢に何度が出てきました。みんなどこか痛そうに顔をしかめておりました。
翌日は15時頃にはきちんと麻酔も切れるからその頃に来てくださいと言われていたのですが、なかなかね、仕事が手がつかないのです。どうやら私はアイのことが好きだったようだ。
で、迎えに行って結局きれいに歯は抜けて無事に終わったのでしたが、私とアキコの声が聞こえたからなのか、奥のほうから、「おろおろおろー」という声が聞こえてきて。
「とても大人しくて良い子でしたよ。でも全く何も食べなくてちょっと心配していましたが、大丈夫ですね。」と先生も優しく教えてくださって。
そうかそうか、よかったよ、よかったよ。
どうやらアイも私のことが好きなようだ。
無事に工房に戻っておじさん二人は「おろおろおろー」と喜び合ったのでした。