小さな積み重ねがその人の形になっていく

ナラ板目ランダム張りの食器棚

世田谷 O様

design:Oさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke hirose
painting:daisuke hirose

ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚
食器棚全体の様子。今回のOさんの食器棚の幅は1700ミリ。そして奥行は深めの600ミリ。吊戸棚もいつもよりも容量大きく奥行420ミリで作っています。
ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚のイメージ図
Oさんから頂いた原案となるスケッチ。

「イマイ様
初めまして、Oと申します。
今回、食器棚の設置を考えておりご連絡させていただきました。
汚い絵で恐縮ですが、なんとなく添付の図のようなものをイメージしております。横幅170センチ、奥行きは50センチから55センチくらいで考えています。

・飾り棚はできる限りシンプルにしたいです。
・下の棚は、ゴミ箱収納以外は引き出しにしていますが、引き出し収納を一部削って、炊飯器or電子レンジorトースター用のスペース(スライドテーブル?)を1箇所作るか悩んでます。
・上の棚は、扉3枚か2枚。3枚であれば、そのうちの1枚は、ガラス(アクリル?)もいいかもと思ってます。
・木の種類は決めてません。色味の雰囲気や、お値段を考慮して考えたいです。
・天板や、棚の内部は、お手入れのしやすい素材が良いです。

一旦、つらつらと書かせていただいたのですが、この後、どのように進めさせていただければよいか、ご教示いただければ幸いです。
おおよその見積もりや、スケジュール感を知りれたらなと思っております。」

食器吊戸棚の内部はナラ突板とアクセントカラーの背板で仕上げています
いつもは標準の仕上げとして、扉を閉めると表面から見えなくなる内部は白いポリエステル化粧板やシナ合板を使うことが多いのですが、今回は外側と同じくナラの突板で仕上げています。さらには、引き戸の戸棚は開けっぱなしのまま使うことも多いと思われまして、(開き扉だと閉めないと頭にぶつかっちゃうことがあるので)開けっぱなしにしていても印象が良いように背板のカラーだけをナラ材とは変えてみました。今回は食器棚の天板に使用しているグレイジュの化粧板を使うことで雰囲気よい内部の仕上げとなりました。
食器吊戸棚のソフトクローズ引き戸の様子
引戸の上のほうに見えるシルバーの部材は、上吊引き戸のレールになります。上吊引き戸のメリットとしては吊戸棚野地板に溝を掘り込まないので、その溝にゴミがたまることがないフラットな仕上げにすることができるのですが、もう一つの大きな特徴としてソフトクローズ機能を持たせることができる点にあります。今回Oさんの戸にはそのソフトクローズ機能を持たせてあります。

壁から飛び出た棚板というのはなかなか難しかったりします。
よく大手キッチンメーカーさんの施工例でも見かけますし、私たち自身もそのような形で納めたこともあります。
ただ、私たち自身で作る時は新築工事やリフォーム工事の最中に大工さんに取り付けてもらう形を採っています。
完成された空間に後付けすることはできることはできるのですが、強度的に不安があるのです。
そういう専用金物(T字型をしていて、金物を壁につけることで壁から棒が突き出たような形になる物)も出ているのですが、てこの原理で棚の先端に強い力が加わるとあっという間に金物が壁からもげてしまうと思うのです。
ですので、いつもは棚板を壁内に埋め込む形で大工さんに付けてもらうか、専用金物自体を私たちのほうで自作して強度を確保するか、棚板ではなく、ボックス状の形にするかというお話をさせてもらっています。
ボックス状というのは、吊戸棚の下にカップなどを並べて置かれているあのオープン棚のことです。

吊戸棚の引き戸の手掛けのイメージ
引戸の引手部分の詳細。通称アールの突き通しと呼んでいます。突板の途にスリットを入れるのですが、スリットを入れると下地材が露出してしまうので、あらかじめ無垢を仕込んでおいて、その部分にスリットを入れて仕上げています。
真鍮のワイングラスハンガー
ワイングラスハンガー。私たちはいつもはハーフェレのワイングラスハンガーを使っています。ちょっと高いのですが、厚みがしっかりしていてひずみがないことと、溶接がきれいなのです。以前別のものを使ったことがありましたが、厚みが薄かったため溶接部分でひずみが出てしまっていたことがありまして、それからはハーフェレのものを使うようにしているのです。

Oさんにもそのお話をさせて頂きまして、まずは少し木としての存在感が出てしまうのですが、以下の日記に載っているような棚を作る場合でお話を進めることになりました。

2019年6月21日「荒川のMさんのところへ

でも、結果的にはOさんは私のお伝えした注意点と使い勝手をはかりにかけて一枚板はつけないことにしたのでした。
ですので、できあがりの形は写真を見るとシンプルにまとまっておりますが、ここに至るまでは、このようにいろいろと行きつ戻りつしながら決まっていったのでした。

ナラ板目ランダム張り突板を使った食器棚
今回の天板の高さは920ミリにしています。いつもはキッチンに合わせて850ミリや900ミリにすることが多いのですが、こちらの天板の上ではそれほど調理作業をしないということで、それであれば引き出しの深さをもう少しとる形が良いかな、ということになりまして、家電の使いやすい高さとのバランスを考えてこの高さとなりました。

例えば、樹種。
いつもは希望の木の色などが決まっていない場合は、タモで見積することが多いのです。
以前はナラも使いやすかったのですが、価格がかなり上がってきてしまっていることもありまして、価格な標準的なタモで全体の金額の印象をつかんでもらいながらお話を進めることが多く、そこからOさんの場合は、タモに比べてもう少し濃淡の柔らかいナラを選んで、さらに杢目があまりきれいに並びすぎないようにということでランダム張りの突板を使うことになりました。
さらには、ハンドルや吊戸棚の内部の仕上げ方や天板の見せ方など、一つ一つがOさんの形となっているのです。
詳しくはそれぞれの写真のキャプションをお読みいただけますとうれしいです。

食器棚の天板はグレイジュのメラミン化粧板
天板はメラミン化粧板。細かいエンボス仕上げになっているアイカのカラーフィットメラミンを使い、グレイジュカラーのものを採用したので、このナラの印象ととても良く合っています。
食器棚の天板はグレイジュのメラミン化粧板
そして、その天板と天板の小口材の見せ方について。天板を上から見た時にグレイジュのメラミン化粧板しか見えないように仕上げることもできますが、今回は木部の印象を大切にしたいということで、メラミン化粧板を囲むように木の縁を見せる仕上げにしています。

こうしてできあがった形は、心配だった搬入も問題なく済ませられて、無事にOさんのキッチンに据え付けられたのでした。

「お礼が遅くから申し訳ありません。
とても素敵な食器棚を作っていただきどうもありがとうございました!
想像以上に良い感じに収まってとてもうれしいです!
吊り戸棚の背板も色を変えて大正解でした。
真鍮の取手なども可愛く、昨日から食器棚を眺めては幸せな気分になっております。
これからゆっくり楽しみながら食器などを収納していきたいと思います。
昨日作業に来てくださいました皆様にもどうぞよろしくお伝えください。」

後日、ご挨拶に伺わせて頂いて、とても丁寧に使ってくださっている様子を見させて頂きうれしくなりました。
今回のナラはちょっと大柄だったためか、多少ざらつきが出やすいかなと思っていたのですが、ツルっとした手触りのままお使い頂けていたので、いつも通りのお手入れの方法をご説明させて頂きました。

家具が一つ入ることでキッチンの印象は大きく変わります。
また、何かワクワクしたアイデアが生まれたらいつでもご相談頂けたらうれしいです。

炊飯器収納上の棚板
下の食器棚の右上は炊飯器のスライドテーブルとなっているのですが、その上に可動棚をつけて、ラップやマットなどがすぐ取り出せるようにしています。
炊飯器を収納するスライドテーブル
そして、炊飯器のスライドテーブル。今回は食器棚の奥行が600ミリで作っていますので、炊飯器の奥にも写真のように物がしまえるのが特長です。また、写真だとまったく見えないのですが、私たちが家電を収納する部分を作る時にその奥にコンセントをつけるのですが、そのコンセントは上のほうにつけることが多いのです。なぜかというとコンセントを下のほうにつけておくと、スライドテーブルを閉めた時にコンセントケーブルを挟んでしまうことがあって、その都度手を差し込んでケーブルを持ち上げないといけないことがあって、上にしておくとそういうことにあまりならないことが分かりまして、上気味につけるようにしているのです。
炊飯器収納下の引き出し
その下は深めの引き出し。
食器棚の引き出しの様子
食器棚の中央の列は食器用の引き出し。今回引き出しのハンドルにはかなぐやさんの「真鍮とって六角棒コの字」を採用しています。いつもオーダーでこのサイズで作ってもらうのです。
食器棚の引き出しの様子
食器用の引き出し2段目。
食器棚の引き出しの様子
食器用の引き出し3段目。
食器棚の引き出しの様子
食器用の引き出し4段目。
食器棚の引き出しの様子
左の上段の引き出しはちょっと薄い引き出し。
食器棚の天板はグレイジュのメラミン化粧板
左下にはゴミ箱。ゴミ箱はケユカのアロッツ。フタを開けた時にその場で引き出すことなく大きなゴミ(例えば、お肉やお魚のプラスチックトレーなど)が捨てられるように高さに余裕を持ったスペースになっています。

ナラ板目ランダム張りの食器棚

価格:760,000円(制作費・塗装費)

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は50,000円から)

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