
シフォンの丘
「ナラ板目突板とステンレスバイブレーション仕上げのワークトップの壁付けキッチンと人工大理石トップの食器カウンター」
秦野 T様
design:Tさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:hideaki kawakami


鵠沼にうさぎパンさんという素敵な作家さんがいらっしゃいます。
作家さんというかなんというか、とても魅力的なキャラクターを持つ人なのです。
今から16年前にキッチンを作らせて頂いたことがご縁で、お付き合いさせて頂いていて、私たちが以前に毎年末に開いていた小さなクラフト市「クレミル」というイベントではインド料理のスパイスを生かしたとてもおいしい天然酵母のパンを持ち寄ってくださったりと魅力ある人なのです。
ちなみにそのキッチンはこちらの「biscotti」のTさんです。
そのTさんのところにお邪魔させて頂いた時に、「イマイさん、先日私あらためてシフォンケーキの作り方を習いに行っているんですけどね、そこで知り合った秦野のTさんが今度家を新築するっていうので、イマイさんの話を話をしてみたらとても興味を持ってもらえたみたいでね、お話が進むようでしたら相談に載ってもらえるとうれしいです。」とにこやかにお話してくださいました。
このTさんのキッチンを作った時はそれはもうたいへんでして(笑)、Tさんの約束ごとが事細かに書かれたノートを見せて頂きながらあのキッチンを実現できたわけですが、それをTさんとても気に入ってくださって、16年も経つとさすがにいろいろなところがくたびれてくるので、少しずつ手直ししながらもとても快適に使ってくださっていて、それを秦野のTさんにお話ししてくださったのだそうです。
「もう習わなくてもよいくらいすごく上手にシフォンケーキを焼く人でね、お店も出したいって言っていたから。」
それはすてきなお話です。といつか声が掛かるのを楽しみにしていたのでした。

そのお話を聞いてからどのくらい経ったか忘れてしまったのですが、私たちのキッチンカタログのプレゼントに応募してくださった方のコメントに「うさぎパンさんからイマイさんを知りました。」と書かれているメールがありまして、もしかしたら・・、と思っていたらその秦野のTさんだったのでした。
さてさて、すてきなご縁の始まりです。
そして、カタログをお送りしてから2ヶ月ほど経った頃にお電話を頂き、あらためてこちらにキッチンのご相談にいらしてくださることになりました。
いらして頂いた時に見せてもらった平面図には1階の半分くらいがお店になっているプランで見ている私も夢が広がりました。
「お引っ越しと合わせてオープンされるのですか。」
「うーん、まだそこまではきちんと決めきれていないのですが、準備が整い次第始めようかなと思うのです。でもまずは家作りのほうをまとめないと。」
ということで、キッチンのプランをお伺いすることに。
私たちのキッチンの考え方としてはあまり決まりごとはないので、私たちのキッチンではどんなことができるかを一通り説明して、その中でその使う人が何を大事にしたいと考えているかをお聞きしながら形をまとめていっています。
Tさんの間取りはもう決まっていたので、そのレイアウトではどういう収納が使いやすいか、どういう動線になると良いのかをいろいろとお話をしながら一つの形がまとまっていきました。


そして、その内容でおおよそまとまったところで、ひとつ悩み事が出てきてしまいました。
Tさんのご新居を建築するのは、今住んでいるマンション内のご友人の設計士さんが請け負ってくださるのだそうですが、普段は戸建住宅よりは集合住宅のような大きな建物を作ることが多いそうで、なかなか地場の工務店さんとのお付き合いが少ないのだそうです。
そのような中で今回施工をお願いする予定だった工務店さんがスケジュールが合わなくなってしまったということで、Tさんから「もし、イマイさんのほうでよい工務店さんをご存じでしたらご紹介頂くことはできますでしょうか。」という相談を頂いていたのでした。
なるほどー、と思いめぐらせて浮かんだのが、「継ぐものたちへ」のKさんの時に知り合うことができた私たちの地元寒川の久保田工務店さんでした。
その場で、いつもお付き合いさせて頂いている努さんに連絡を取ってみると「もちろん、大丈夫ですよ。」と快いお返事。
その後日設計士さんが連絡を取ってくださって、久保田さんが施工を引き受けてくださることに。
良いご縁が続くのです。
そして、いよいよ工事が始まりました。
秦野中井インターからほど近い立地ということで、どこだろうね。
このTさんのお話が始まる1年ほど前にやはりインターからほど近いところに住む「マイリズム」のMさんのキッチンを作らせて頂いたっけ。
あのMさんの雰囲気や今回のTさんの雰囲気を見ていると、このあたりも少しずつ町の空気が変わっていっているように思えます。
昔この近くの住宅展示場の家具作りの仕事をしていた20年近く前はもっと何もなかったように思えたものでした。
最近は、この秦野や平塚、大磯、二宮など県西地域にお住まいの方々からお声掛け頂く機会も増えてきました。
このあたりのおおらかに思える気候や風土がゆったりと暮らしていける土地としてその魅力が少しずついろいろな皆さんに伝わっているのですね。
今回は二世帯住宅にお店もあるということで、夏に始まった工事は冬が始まる頃にようやく現地の確認ができることに。
秦野中井インターチェンジからしばらく南下したあたりの石垣の上にうっすらブルーの養生シートが見えました。ここかしら。
入り口と思わしき急坂を上がると、木の香り漂う現場が現れました。隣に農具小屋、裏は広々とした耕作地、お隣はこんもりとした緑豊かなお寺さん。ゆったりとした現場です。
お電話でやり取りしたKさんという設計士さんと初めて顔を合わせた後、久保田さんと現場の片隅で打ち合わせ。いつもは努さんが現場で対応してくださることが多いのですが、「今回は私の叔父が担当するのです。」ということでご年配の久保田さんとご挨拶。
お送りしたメールを印刷した用紙に私とKさんとで取り決めた納まりを書き込んでいく昔ながらのスタイル。
そういえば、時々家具やキッチンのご依頼をくださる葉山工務店の岩中さんも「僕はね、こうやって書き込まないと忘れちゃうんだよね。だからいつも書類がいっぱいになっちゃって。」と言っていたっけ。
なんとなくその様子を見て安心した私。
「よし、分かった。じゃあその通りに進めておくよ。」と言ってくださって打ち合わせは終了。
キッチンの設置は来春ということで、その時期目指して制作に取り掛かることになりました。
今回依頼頂いた形は、壁付けのI型キッチンと食器棚兼作業台となるカウンターの2台です。ご主人と二人でキッチンに立てるようなレイアウトで、長さ2100ミリあるカウンターは作業するだけではなく、そこで食事もできるようにスツールも置けるような形になっています。
キッチンの天板は掃除がしやすいようにステンレス、カウンターは調理作業がしやすいように人工大理石を採用しています。
キッチンの長さは3000ミリと余裕のある長さなので、シンクの右もスペースを確保して物が置けたり軽作業ができるようなスペースを設けたプランになっています。
収納の形は主に引き出しですが、いつもみなさんにお話ししているのですが、すべて引き出しだけにすると将来的に想定していたサイズのもの以外のものがしまえなくなる可能性もあるので、一部は可動棚の収納があっても良いかもしれません、ということでカウンターの一部に扉収納を設けています。
シンク下をオープンにして、コンロ下をワイヤーシェルフにするレイアウトは私たちのキッチンの定番になってきました。おかげさまで作り慣れてきましたので、スムーズに制作は完了しました。
さて、今回はコスト削減を兼ねてオイル塗装はTさんご自身で行なって頂くことになっていますので、設置前の作業はこれで完了です。

「いつも主人と、今井さんのインスタを拝見しております。
『Tさんのキッチン』と紹介される日を楽しみにしております♪」
とTさんからもうれしいメールが届きました。きれいに納めることができるように頑張ります。

そして3月に入りいよいよ取付です。
実は心配していたことがあって、Tさんの立地はちょっとした高台の上に建っていて、最初はどこに建っているのか分からなかったくらいなのですが、そこにたどり着くのに結構な急坂があるのです。人工大理石やステンレスの天板と一緒にキッチンを積んだトラックが登れなかったらどうしよう・・、なんて思っていたのです。
心配性なのでございます。
もちろん、家を建築するのにもっと重量物を積んだトラックが何度も出入りしているはずなので大丈夫に決まっているのですが、以前現場に向かう途中でこのトラックのクラッチが壊れてしまったことがあって、全く動かなくなってしまったトラックをJAFのレッカー車が引っ張っていって、私もその隣に乗って不安な時間を過ごしたことがありまして、万が一にもそんなことが起きたらどうしようなんて思ってしまったのでした。
心配性なのでございます。
しかしそんなアクシデントは起きることなく、無事に現場に到着して、久保田さんが段取りしてくださっていたこともあり予定通りの2日間で作業を終えることができてひとまず完了。

「イマイ様
お世話になっております。
キッチン、確認に行ってきました!!
すでにタイルもはられておりましたが、キッチンにはまだ養生のカバーがされておりましたので、全部は見ることができなたったのですが、少し写真を撮ってきました!
Instagramのストーリーにもあげさせていただきました♪
またオイル塗装のことで、相談させていただくと思いますが、よろしくお願い致します。」
と、うれしいメールが届きまして、この差とお引っ越しまであまり時間の余裕がなかったので、急きょワタナベ君にオイル塗装の方法を伝えてもらいに行って、Tさんたちで問題なくできることを確認して、これですべて完了です。
きれいに仕上がる様子が見られるのが楽しみです。
そして、お引っ越しされてしばらく経った頃に私とアキコの二人であらためてご挨拶に伺わせて頂きました。
キッチンのほうはきれいに仕上がっているかな、と拝見させて頂くと、「まだすべて塗れていないまま使い始めてしまっていて・・。」と、Tさん少しはにかみながら気まずそうにおっしゃっておりましたが、触り心地はとても滑らかになっていてムラもなくきれいに仕上がっておりましたよ。
そして、キッチンからリビングダイニングを望むとお寺さんの借景と大きな空が見える気持ちの良い空間。
奥様と一緒にお料理もされるというご主人がバルコニーを案内してくださって、「ここからの緑たち眺めながら飲むお酒がおいしいのですよ。」
と間もなく夏が来る予感のする空を見ながらそう教えてくださいました。
たしかに気持ちよさそう、と思っているそばから鳥たちもそばでさえずっていました。
気持ちの良い時間でした。
そして、お店のほうはと言うと、この頃にはもうだいぶお店のほうも準備が整っておりました。
「あとはいつ始めようかと自分の気持ち次第です!」とおっしゃっていたTさん。
オープンしたらまた遊びに来ますね、そうお伝えしていつ頃なのかなあなんてのんびり思っておりましたら、その数日後にはインスタグラムで美味しそうなケーキがたくさん掲載されておりました。
あの急坂を超えないとたどり着けない隠れ家的な場所ではありますが、きっとすぐにみんな集まってくるんじゃないかな。
【焼き菓子unjour(アンジュール)】
https://www.instagram.com/yakigashi_unjour/
天板 | ステンレスバイブレーション |
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前板・扉 | ナラ板目張り突板 |
本体外側 | ナラ板目張り突板 |
本体内側 | ポリエステル化粧板 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
ナラ板目突板とステンレスバイブレーション仕上げのワークトップの壁付けキッチン
価格:1,000,000円(制作費のみ、塗装費はお客様塗装、設備機器費用は別)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は50,000円から、取付施工費は130,000円から)
人工大理石トップの食器カウンター
価格:740,000円(制作費のみ、塗装費はお客様塗装、設備機器費用は別)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は20,000円から、取付施工費は40,000円から)