クリスタルメープル

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル

国分寺 T様

design:Tさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:daisuke hirose
painting:daisuke hirose

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
全体の印象。
ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
天板はサンゲツのクォーツストーンで、ガルザス「カラカッタクラシコ」を採用し、脚部はフローリング材に合わせてハードメープルで制作しています。

5年前にブラックウォールナットで食器棚とテレビボードを納品させて頂いたTさんからとても久しぶりにメールを頂いたのでした。
その時の食器棚とテレビボードはこちらです。

2020年2月10日 「ブラックウォールナットの食器棚

2020年2月24日 「ブラックウォールナットのテレビボード

写真はこれだけしかなくて、納品後にTさんのところにお伺いする日程を調整していたのですが、なかなか都合が合わないままもう4年が経ってしまった頃でした。
実は、あの時に家具を据え付けたマンションから戸建て住宅に引っ越すのだそうで、あの家具はとても気に入っていたのですが、次に入られる方がとても気に入ってくださったのだそうで、あの家具たちがTさんのお部屋を購入を決めた要因にもなってくれたのだとか。
ちょっと淋しいですがうれしいことでもあります。
そして、今回のご相談は食器棚やキッチンではなくテーブル。それも大きなダイニングテーブルを思い描いていらっしゃるのだそうです。

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
Tさんに全体のイメージをつかんでもらうために制作した模型。また、今回のような特殊な形状をした脚物家具の場合は、模型があると細かい角度の組み方や構造、強度を検討していくのにたいへん参考になります。

なるほど、それでどのようなテーブルなのでしょうか。
と、お話を伺い始めたのですが、イメージはまだ漠然としているのだそうで、Tさんもどうしたらよいのか私に伝えられるほどまとまっていないのでした。
ただ一つ決まっているのは、ご主人の勤務先であるサンゲツで作っている「ガルザス」という大判セラミックの板を天板に使うたいということでした。
そこで、どのような色柄のものなのかを持参いただいたガルザスのカタログを見ながら、形をイメージしていきます。

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
ヒロセ君が脚部を組み立てている時の様子。合板を使って治具を作り、それにはめ込む形で精度よく組むことができました。
ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
角度がついていると通常のクランプの掛け方だと力が逃げてしまうので、角度をつけたコマで押さえながら閉めていくという方法で、ヒロセ君、頭を悩ませながら組み立てておりました。

しかし、カタログを眺めながらも、4本脚が良いのか、シェーカースタイルのような脚部が良いのか、天板の形状は長方形かラウンドしたものか、すべてがまだ漠然としたままでした。
クライアントからいろいろな条件を出されてそこに適した機能や形や美しさを選びながらまとめていくことは得意なことですが、私自身で勝手に決めてゆくことってとても苦手でして、Tさんがどのような形を望むかもまだ見えていない状態で何を手掛かりにしていこうか・・と思案しておりました。
そこで、まるで連蔵ゲームのように、四角い脚?丸い脚?と言葉遊びのようにイメージを浮かび上がらせては、それは違う、それは近いもかも、なんてやり取りをしながら、ふとカタログの中にあるテーブルにTさんの目が留まりました。

「こういう印象は好きですね。」とご主人も奥様もうなずく。
なるほど、くの字だ。くの字になって末広がりになっているデザインだ。これはたいへんだ。

ということで、この先に現れるだろう加工の苦労が読めないままくの字の脚をベースに形は決まっていったのでした。

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
角を丸くしたいという奥様のご要望で、あまり大きな円形だと印象が柔らかくなりすぎてしまうと思い、50アールの面取りで仕上げています。
ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
クォーツストーンの下の板は強度を出すために合板で作っていますので、小口の化粧が必要になります。小口材が全周を1枚で貼ることは難しいため、各コーナー部分は熱で曲げた材を作り、直線部分とつないでいます。また、細かいところですが、コーナー材が自身の力で跳ね返ってこないように小口材の直線部分との継ぎ目の小口は互いを45度にカットして継いで跳ねを抑える形にしています。

くの字の脚のテーブルというと以前アイアンで制作したラウンドテーブルがあります。
金属でできた脚ですが、印象は繊細で軽やかなテーブルになりました。
あのテーブルに惹かれて木製で実現させたテーブルがありました。
信じて頼ってくださる」の台場のAさんのテーブルです。
あの時はあの形を実現させるまで大変な苦労がありました。
構造的に負荷がかからないだろうと思っていた部分が一番ストレスが掛かって材が破断してしまったことや木目の扱い方に因っては、ヒトの力では割れもしなかった板がいとも簡単に壊れてしまうことなど、今は親御さんのその場にいたいということで実家の近くで働いているカナイ君と悩みながら実現できた形です。

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
このテーブル自体100kg近い重量になるのですが、なるべく軽い印象に見せたいと思いまして、幕板と天板はなるべく接点を少なくして抜けた印象にしています。接点が少ない分、天板との固定はピンポイントになるため、精度よく位置が出ていないとうまく固定できないため、緊張感のある造りとなっています。

今回のTさんのテーブルは4本脚ということでバランスが取りやすい形にできそうでしたが、やはり構造は複雑になりそうです。
まずはイメージだけでは読めない部分が多いので図面を描いてみましたが、それでもわかりづらい部分がたくさんあります。
そこでまずは模型を作ってみました。
うん、バランスが見えてきました。
4本脚でもテーブルの横からも座りやすいバランスにできそうです。

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
この太い貫板は結構好きなボリュームで、構造上このくらいの太さが必要だったのですが、くの字の脚がけっこう繊細な印象なので、この抜きのバランスでどっしりとした印象になっていてとても良い形にまとまっています。

さっそくTさんに模型の写真をお送りしたら、とても気に入ってくださって、この形で確定。
さっそく段取りに入ることにしまして、今回制作を担当したのはヒロセ君。
構造や仕上げに積極的に興味を示してくれるヒロセ君は模型を見ながらも、これは作り甲斐がありそうな形ですね、と楽しそうに言ってましたので、それならとノガミ君と相談して彼自身に担当してもらおうということになりました。
楽しそうに作ってくれていたのですが、ちょうど他のお客様の仕事とかなさったりした時期でしたので、大変苦労しながら進めてくれました。

こちらがヒロセ君の制作日記です。
2024年7月15日 Tさんのダイニングテーブルを制作して

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル
天板下の一番目立たないところに置かれたクリスタルのような造形。この材が天板の荷重をうまく脚に伝えてくれている一番大切な支え。ここにこの形を持ってこようというお話がTさんと私のどちらから出たのか忘れてしまったのですが、テーブルの象徴するような造形がここにあるのはうれしいところ。

無事に制作が完了して、新居で暮らし始めたTさんのお宅へ納品。
ダイニングは1階にあって、目の前の通りから掃き出し窓を通じてすぐに搬入できたので良かったですが、脚部よりもこのセラミックの天板がかなりの重量でしたので、心配だったのです。
そして、その天板を支える脚部はきちんと示された位置に固定されないと天板の重量が足にきれいに伝わらず、またあの時のように足が破断する可能性もありましたので、組み立ては私とヒロセ君とタケイシさんの3人で天板を浮かせながらヒロセ君の指示通りに組み立てていって完成。
無事に納品することができて一安心。
Tさんも実物を見るのはこの時が初めてでしたのでその存在感に大変喜んで頂けました。
Tさん、ありがとうございました。

ハードメープルとセラミックストーンのダイニングテーブル

価格:590,000円(制作費・塗装費、セラミックストーン別)

*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から)

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