
うれしいけれどこそばゆい
タモとウレタンホワイトのツートンカラーの食器棚
練馬 Y様
design:Yさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:masakane murakami


Yさん、どうやら私たちのことを7、8年前に雑誌で見かけてことをきっかけにウェブサイトやブログをずっと見ていてくれたのだそうです。
うれしいけれどもこそばゆい。
「だいぶ前になりますが、ショールームにお伺い致しましたYと申します。
二世帯住宅の二階にある壁付きキッチンのカウンターをお願いしたいと考えております。
子どもの中学入学に合わせて1人部屋を作ったりバタバタしていたのと、この依頼のメールもどうやって書こうか悩んでいたら、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
写真右がリビング入り口です。キッチン幅は210cm、キッチン左側から75cmのところに食洗機があります。現在キッチンからカウンターまで71cmくらいのスペースです。
写真や図でうまく伝わるかわからないのですが、カウンターの幅は1800かそれ以上か決めかねており、食器が割と多いので、レンジを入れたら収納スペースが少ないか、とか、現在の写真のようにレンジを別途置くなり、カップボードを別に設置すべきか、予算は、、など悩みが尽きず、相談させていただきたい次第です。
色は白がメインが良いので、「お似合い」松戸市T様の雰囲気が良いなと思っています。
昨年から犬を飼い始めたのですが、イタズラするので、丈夫な素材だと助かります。
また、カウンターから続くリビングボードもできればお願いしたいです。リビングボードは、レコード、お菓子、犬のグッズを収納したいです。
予算内で可能かどうかも含め、あらためてご相談させていただきたいです。」
だいぶ前にというのは、いつ頃だろうか・・。
ぜんぜん思い出せなくてすみません・・。
しかし、その頃からずっと私たちのことをどこかで覚えていてくださったというのは本当にうれしいことです。
ふとしたきっかけで留まっていた思いは動き出します。
しかし思いは募っても伝える手立てが難しい。まるで愛や恋じゃありませんか。
そういうきっかけとなるラブレターはうれしいものです。
しかし、なかなか難しそうなお題です。
現在の様子の写真と平面図、そしてYさんが描いてくださったイメージスケッチを頂いたのですが、現在は小振りな作業台のようなキャビネットをキッチンとダイニングの間に置いてあるだけなのでそれぞれの場所への行き来に不便はないように思われるのですが、しっかりしたサイズのキッチンカウンターを置くと収納量は増えるのでしょうけれど、いかんせん狭くなるし行き来もしづらくなると思えるのです。
だからと言って、ただアイランドカウンターを作っておくだけなら今のままとそれほど変わらない、オーダーで作るメリットが薄くなってしまうように思えたのです。
そこで、考えたのがリビングボードとつなげたいという部分。
この部分をうまく生かしてまとまりのある形にできたらよいなあと思ったのです。
そこで、まずは原案を考えて、以下のような感じでYさんにメールさせて頂きました。
「・・・キッチンカウンターは奥行きが450ミリで見ているのですが、リビングボードは100ミリほど伸ばして550ミリほどにするほうが良いかと思っております。
なぜかというと、頂いた平面図を測ると、キッチンの前面からリビングボードを設置する予定の壁が折れているところまでが710ミリくらいだと思われます。
この壁に合わせて、キッチンカウンターを設置すると、キッチンの通路が710ミリとなって結構狭く感じるのではないかと思われます。
現在は小さなアイランドカウンターなので、狭く感じないかもしれませんが、幅1850ミリのカウンターが置かれると狭く感じるのではないかと思っております。
特に食洗機や引き出しを開ける時に体を横に逃がさないと開けづらくなるかもしれません。
そこで、リビングボードを100ミリ奥行きを増やして、通路を810ミリくらいにするとよいかもしれないと思いました。」
と、このような感じで送らせて頂いたのでした。

このアイデアをYさんとても気に入ってくださいました。
「さっそくスケッチをいただきましてありがとうございます。
憧れのフリーハンドイマイさんのスケッチを見ただけで、ワクワクしてしまいます。
いろいろ悩んでいたら、返信が遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
奥行についてですが、スケッチを見てイメージつきました。
リビングボード奥行きは550ミリでお願いしようと思います。奥行き550ミリだと割と深いので、どのように使おうか考えておりました。
最近は夫の方がキッチンに立つことが多く、2人で立つとかなり狭かったので、キッチン側のスペースが広がると助かります。」
と、いうことでこのプランをベースに形がまとまっていったのでした。
あともう一つ私として実現したかったのは、白い部分の仕上げについてです。
無地単色の白というとオーソドックスなポリエステル化粧板やメラミン化粧板が浮かぶのですが、ここを塗装で白く塗り包むととても良い表情になるのです。
しかしそれってとても小さな部分で、具体的にどこが良い表情になるかというと、板の角の部分なのですが、今回のYさんの家具のような場合だと、周りを木で囲うため、角の塗り包んだ表情って引き出しや扉を閉めた状態だと見た目で分かりづらい部分でもある。
それなのに化粧板よりもけっこうコストが高くなってしまう。
でもやはり近くで開け閉めしている時に見る表情に切り貼りした印象はまったくでなくて優しい表情になるし、触り心地も尖っていなくて良いのです。
だから、Yさんに強くお勧めできるわけではないのですが、できれば塗装で仕上げたいなあ、なんて思っていたのです。
そういう思いを汲み取ってくださったのか、Yさん塗装仕上げを選んでくださった時はとてもうれしかったのでした。
ちなみに化粧板仕上げでもきれいに仕上がります。システムキッチンの扉などがそうで、薄くて硬質な化粧板を自在に曲げて、本物の木のような表情で仕上げたり、均一に塗りつぶしたような表情で仕上げることもできます。
ただ、手触りの丸みや滑らかさのようなものはやはり塗装仕上げのほうが気持ちが良い。そう、触っていて気持ちが良いなと思えることが一番大きな違いかもしれません。
こうしてすべての形がきれいにまとまって、制作も順調に進めることができたのでした。
制作前にご自宅までお伺いした際には、2階への搬入が階段からだと難しそうだと思えていたので、場合によってはバルコニーから荷揚げかも・・と思っていたのですが、ある程度小分けにして作っておいたおかげでどうにか階段から上げることができてひと安心。
あとは工房で仮組した時のように再び組み直して、そこにコンセントを通して、無事に設置完了。
納品後しばらく使って頂いて、使い慣れた頃にご挨拶とお手入れの方法をお伝えするためにお邪魔させて頂きました。

だいぶ前に私たちを見つけることができていつか機会が訪れたらオーダーで作ってもらいたいという思いをずっと秘めていたYさん。
2年ほど前に実施したリフォームで、洋室とリビングダイニングをつなげて一つの大きな部屋にした時からこのキッチンと言いう空間をどのようにしたら上手に活用できるのかを悩んでいて、まずは市販のキャビネットをアイランドカウンターとして使い続けていたのだそうです。
最初はハウスメーカーさんにも相談されたのだそうですが、しかしノウハウが乏しかったり、そもそも家具だけの相談は受けてもらえなかったり、またイメージ通りの形は提案してもらえなかったりと、実現は難しかったのだで、もやもやとしたものを抱えたなかで、今回思いきって声を掛けてくださったのだそうです。」
あらためて聞かせてくださったその気持ち、とてもうれしく思っております。 ありがとうございました。
「それからイマイ様、先ほど一つお伝えし忘れた点がありまして。
『台所とのスペースが十分あるので、食洗機と引き出しが干渉せず、食器をしまうのもとても楽です。』ということです。
何かありましたら、またよろしくお願いします。
大切に使わせていただきます!」
タモとウレタンホワイトのツートンカラーの食器棚
価格:560,000円(制作費・塗装費)
タモとウレタンホワイトのツートンカラーのリビングボード
価格:430,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は40,000円から、取付施工費は70,000円から)