身にあうもの
「カウンター下収納のオーダー」
横浜 A様
design:Aさん
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki
Aさんから頂いたメールには、色の塗り分けられたしっかりとした図面が添付されていたのでした。
ここまで描かれているものでしたら、こちらで図面を作成しなくても、まず目安となる費用をお伝えすることができますね。そこで、さっそく見積金額を出してみることに。うーん、若干Aさんのご予算から上回ってしまいましたが、まずは、御見積金額と一緒にAさんの図面から読み取れる内容のご説明を添えてお返事させて頂きました。
「イマイ様、Aです。
お世話になっております。
丁寧な概算見積もりをお送りくださり、ありがとうございました。
予算より若干上回ってはいますが、何とか大丈夫な範囲です。」
と、うれしいお返事を頂きまして、さっそく私のほうでも実現可能な形にしていくために図面を描き起こすことにしたのです。
そして、描き上げた図面を基に打ち合わせを始めてまもなく、あの大きな地震が起きたのでした。
さいわい、私達のまわりでは大きな被害が出ることなく、ただありがたく仕事を続けることができたのでした。
しかし、まもなくAさんからご連絡を頂きました。
「イマイ様、Aです。
お世話になっております。
先月からご検討いただいた収納家具の件ですが、大変申し訳ありませんが半年~1年くらい先に延期させていただいてもよろしいでしょうか?
最近勤め先で大きな異動があり、少し先が読めなくなってきてしまいました。
現状では、家にまとまったお金をかけることに慎重にならざるを得ません。非常に残念ですが、少し様子を見ようと思います。
今回の件でいろいろとご検討いただき、かつ多くのお手数をお掛けし、大変申し訳なく思っています。
貴店のウェブページを拝見し、大変感銘を受け、お会いするのを楽しみにしていました。
残念ではありますが、また機会がありましたらよろしくお願い申し上げます。
地震や停電等で大変な時期ではありますが、どうかご自愛ください。
それではよろしくお願い申し上げます。」
Aさんのお話はもっともだと思います。今この大変な時期に、必要なものが何かを考えた時に家具はなくても暮らすことができるものなのです。自身の暮らしの芯がしっかりしてきて、その暮らしを支えてゆこうとする時にはじめて家具は道具として意味を持ち始めます。暮らしの芯と言う礎が形作られるまでは、我々は必要ないのかもしれません。
この時期は、まわりの惨事を見聞きしていたもあり、大変いろいろと考えさせれる時期でありました。
半年後、とてもうれしいことにAさんから再びご連絡を頂いたのでした。
Aさんのまわりも落ち着きを取り戻されたようで、また再び家具の相談を続けたいと言うことでした。あの時お会いすることが叶わなかったので、今回は以前のプランを基に打ち合わせするためにまずはお会いすることになり、Aさんが私たちのショールームまでいらしてくださいました。まずは、今回プランをいろいろと考えてくださっているご主人がお一人でいらしてくださって、細かい部分までお話をして、私たちの作る家具を見て頂きました。
それから、奥様と一緒に再び。ここで、家に居る時間が長い奥様とご自身のイメージを実現させたいご主人とで意見が分かれるのです。ご主人はどちらかと言うと、家に帰ってきた時に部屋の印象が温かく感じられるように木の表情が生きた家具にしたい、しかし奥様は、なるべくスッキリ部屋の中を見せたい、だから家具はなるべく明るく白っぽい印象で、家具自体もスッキリとした印象にしたい、と言うことでした。
私も個人的には木の表情が生きている空間が好きなのでご主人派なので、どうにか無垢や突き板を使って表情豊かな家具になるようにと奥様に提案させて頂きましたが、「やっぱり白いほうがいいなあ。」と言われてしまい、白い明るい家具と言うことを基本に考えていくことに。
「やはり、家に長く居るのは妻ですから、彼女の意見を尊重することが大事だと思います。」とAさん。
ジェントルマンです。
その後もやり取りは続きます。
今までの経験から、男性との打ち合わせは、かなり細かい部分まで突っ込んでお話しすることが多いのですが、Aさんもやはりディティールまでミリ単位で決めていきます。奥様との打ち合わせだと、あまり細かい部分は、「イマイさんにお任せします。」といわれることが多いので、ちょっと大変。
そうして、ようやく形が決まって製作開始です。
今回は天板にアイカ工業のポストフォームカウンターを使います。これは、対面キッチンのカウンターに合わせて同じ素材を選びました。パソコンデスクの部分は、緩やかにカーブを描くので、通常の化粧板で製作するよりは、このポストフォームカウンターを使ったほうがきれいに納まります。そして、扉や引き出しの前板などの家具の外側は、リビングのドアと同じオレフィン化粧板を使って印象をまとめることにしました。
そうして、完成したのが、1月。まもなく最初のお問い合わせを頂いてから1年が経とうとしていました。
今回の家具は、L型になるのとL型の角になる部分は45度にカットした板同士を接合するため、一度の取付だときれいに終わらない可能性がありましたので、まずは本体を取り付けにお伺いして、取付け終わった本体の家に型板をあてて、天板の原寸を採ると言う手間の掛かる作業を行いました。でも、その甲斐あって、取付け終わった天板は、きれいに隙間無く付いたのでした。
ホッとひと安心。
「(有)フリーハンドイマイ 今井大輔様
Aです。大変お世話になっております。
本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございました。ブログを拝見したところ、このところ非常にご多忙のようで。。。お手数をお掛けしてしまい、申し訳なく思っています。
12日に納品いただいてから、PCのコード類の配線をし、机上に物を飾ったりして、徐々に生活感が出てきました。
実際に2週間ほど暮らしてみて、その使い心地の良さに驚いています。
部屋に無駄な空間がなくなり、前より広くなった印象で、しかも機能性も期待通り、いやそれ以上のものがあります。
出来栄えも美しく、寸法も設計図の通りで、感銘を受けました。
組み合わせの家具などを事前に検討したこともあったのですが、もしそのまま進めていても、恐らくここまではできなかっただろうと思います。
細部まで検討の末、最終的にこのように満足する形まで持ってこれたのは、時間をかけて、今井さんに丁寧に相談に乗っていただけたからに他なりません。
「今井さんにお願いして良かったね」と家内と話しています。
近頃いろいろ見聞きして、家具に限らず、既製品を選ぶよりも、身に合うものをオーダーする流れがあるように思います。そのような流れにあって、発注側の意向に真摯に耳を傾けてくれ、それを確かに実現してくれる今井さんのような存在は、今後も益々多くのニーズを集めるのでは、と素人ながら予感しています。
お忙しい日が続くと思いますが、どうか無理をなさらず、元気でご活躍ください。
このたびは本当にありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
Aさんにそう言って頂けるととてもうれしいです。この頂いた言葉を励みに、これからも良い家具作りを頑張らせて頂きます。よろしくお願い致します。
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。
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